2026.04.06

ホームステージングで家が売れる?落胆しないためにおさえておくべきポイント

昨今の中古住宅市場では、販売促進のための手法としてホームステーンジングの実施が注目されています。

築年数がある程度経過した中古物件の売却を考えた時、できるだけ早く、また高く売りたいと思えば、数あるライバル物件と比較して「魅力のある物件」にしなければいけません。しかし、実際に家を売りに出す際には、どのような工夫を施せば家の魅力が高まるのかが分からず、必要な対策に迷ってしまうという方が多いです。そして、最終的には、値下げによる売却を目指すなど、売主側にとってはあまり望ましい取引にならなかったという結果を招く方も少なくないのです。

そこで注目され始めたのがホームステージングです。ホームステージングは、売却を考えている中古物件に対し、室内の清掃や修繕を実施したうえ、家具やインテリアなどを配置することで、新築住宅のモデルルームのような演出を加える対策となります。室内が魅力的な空間となるため、不動産広告に魅力的な物件写真を掲載できるようになるうえ、内覧した時の印象を飛躍的に向上させることができ、早期かつ高値での成約が期待できる手法とされています。

コロナ禍以降は、賃貸物件の空室対策手法としても存在感を見せ始めたホームステージングですが、この対策を実施すれば本当に家が売れやすくなるのでしょうか?また、対策を実施するにしても費用対効果が良いのかなど、いろいろな疑問が思い浮かんでしまうという方も多いはずです。そこでこの記事では、中古住宅の売却において、集客がしやすく、さらに家がより早くまた高く売れるようになるとされるホームステージングの基礎知識と、実施前におさえておきたい注意点をご紹介します。

ホームステージングの中身とは?

それではまず、ホームステージングと呼ばれる販促手法について、どのようなことを実施する対策なのかについて解説します。家の売却や賃貸に出す際には、顧客に選ばれる物件にしなければいけません。

新築住宅の価格高騰が問題視されるようになった昨今では、日本国内でも中古住宅市場が活発化しています。国や自治体なども、全国的に増加傾向にある空き家問題を解消するため、中古住宅の取り引きを後押しするようになっていて、家の購入について「新築にこだわらない」という方にとっては、家を買いやすい状況が整い始めています。

これは、家の売却を考えている方にとてもありがたい状況で、中には家を売りに出して1カ月以内に条件に合う人がすぐに見つかるといったことも増えています。しかし、築年数がある程度経過している、立地があまり良くないなど、買い手側に敬遠される条件がある物件の場合は、売りに出しても1年以上売れ残ってしまうということは、現在でも普通にあり得るのです。中古住宅は、売れない期間が長くなってしまうと、どうしても売れ残り感が出てきてしまい、余計に買い手が見つかりにくくなるとされています。これは、不動産ポータルサイトに長く掲載されていることで、顧客側が「長く売れない物件は何か問題があるのではないか?」など、余計な不信感を持ってしまうことも要因でしょう。また、築年数が経過してしまうことで、どんどん家の評価が下がってしまうということも要因になります。

したがって、家を売却すると決めた時には、できるだけ早く買い手を見つけるためにもさまざまな工夫を凝らさなければならないのです。そして、そのための対策として注目されているのがホームステージングなのです。ホームステージングは、もともとアメリカで誕生し、中古住宅市場が活発な欧米諸国では当たり前の手法と取り入れられています。しかし、日本で活発に採用され始めたのは2020年以降になってからとされているので、ホームステージングと聞いてもその意味をパッとイメージできるという方はそこまで多くないかもしれません。不動産業界で働いている方でも、自社が取り入れていない限り、具体的な対策内容までは理解できていないという方もまだ多いのです。

そこでここでは、ホームステージングがどのような物なのかについて簡単にご紹介します。

ホームステージングは中古物件を新築のモデルルームのように演出する

ホームステージングについて、最もわかりやすくその対策内容について説明すると、中古物件を新築住宅のモデルルームのような空間に演出する手法と言えます。築年数がある程度経過した中古物件の場合、どれだけ綺麗に掃除して整理整頓を実施したとしても、どうしても前の住人の生活感が色濃く残ってしまうものです。家の購入を考えている方は、自分たちの新たな生活を頭に思い描いているため、この「前の住人の生活感」はどうしても印象を悪くしてしまう要因となるのです。そこで、ホームステージングは、物件内が魅力的な空間になるようにコーディネートするのに合わせて、弱点となるような部分を目立たなくさせるといった対策を打つのです。

具体的には、以下の画像のように、室内を家具やインテリア、照明などを使って新築住宅さながらの魅力的な空間にコーディネートします。

家を売却する方法としては、住みながら購入者を探すという方法と、先に新居(もしくは仮住まい)に引っ越ししてから売却するという2つの方法があります。このうち、後者の売却手法を選んだ場合には、家の中の家具なども全て運び出し、何もない状態で売却活動を進めるのが一般的です。そこに住む人がいなくなるため、内覧時には、元の入居者に気を使う必要がなく、隅々まで物件内を確認できるようになるので、購入希望者にとっては内覧がしやすい環境を作り出すことができます。

しかし、この場合も、室内に家具やインテリアなどが何もない状況なので、どうしても殺風景な印象を与えてしまいます。上の画像の左側の状況がそうなのですが、この状況で内覧しても、部屋のサイズ感が分かりにくいですし、家具などが何もない状態なので、そこに住み始めてからの生活をイメージすることはなかなか難しいです。
ホームステージングは、こういった物件に対し、新築のモデルルームのような空間になるよう、家具やインテリア、植物や照明を配置していくのです。その結果、物件内のイメージが一気に向上しますし、内覧した人は家具などが配置されていることで、入居後の生活動線がイメージしやすくなります。その結果として、物件の良し悪しはもちろん、自分たちの生活スタイルに合致する物件なのかが判断しやすくなり、早期の成約に近づくことができるわけです。

また、居住中の物件売却でも、長年使用した家具などが購入希望者の印象を下げてしまうことがあります。普段使用している家具や家電は、掃除しても落としきれない汚れやキズが残っているため、内覧者は前の住人の生活をどうしてもイメージしてしまいます。そのため、自分たちがそこに住んだ時のイメージがしにくくなるなど、家具などがあっても印象を悪くしてしまうのです。
ホームステージングでは、使い古した家具を一度撤去し、購入ターゲットとなる層の方がもっと良い印象を受ける魅力的な家具に置き換えるといった対策を施し、モデルルームのような空間を作り出します。ステージングに使用する家具は、レンタル家具が採用されるため、中古物件の売却期間中だけ借りておけば良いので、無駄なコストもかかりません。

中古住宅市場でホームステージングが注目されているのは、プロの手によって家の雰囲気に最も合う家具が選定され、最適な場所に配置していくことで、内覧時の物件の印象を飛躍的に向上させることができる点にあります。なお、ホームステージング会社に作業を依頼すれば、家具などの配置だけでなく、以下のような作業をまとめて実施してもらうことができます。

  • 家具やインテリアのレンタル
  • 家具やインテリアの搬入、配置
  • ハウスクリーニング、物件内の消臭作業
  • 不要な荷物の整理整頓、回収、処分
  • 家具などの一時預かり
  • 軽微な修繕、リフォーム
  • 広告用画像の撮影など

このように、ホームステージングは、物件売却のために必要な魅力的な空間を作り出すための対策をまとめて実行してもらうことができます。そのため、そのままの状態で売りに出すよりも、広告での反響率向上や内覧時の印象アップが狙えるため、早期かつ高値での成約が期待できるようになるのです。

ホームステージングを実施することで得られる効果とは?

ホームステージングがどのような対策なのかが理解できたところで、気になるのは、この対策を実施することで本当に家が売れるのかということだと思います。

そこでここでは、ホームステージングを実施することで得られるとされている効果についても簡単にご紹介しておきます。

①広告の主客効果のアップ

ホームステージングは、内覧した時の印象を向上させることができるという点が大きなメリットとみなされています。ただ、ホームステージングは、単に内覧対策となるだけでなく、それ以前の広告の段階で効果を発揮するとされているのです。具体的には、買い手を見つけるために出す広告について、ホームステージングを実施することで、反響率が高くなるという効果が期待できます。この点について、日本ホームステージング協会が実施した実態調査のデータが分かりやすいので紹介します。

引用:ホームステージング白書2023年

家の売却を考えた時には、購入希望者を探すため、さまざまな場所に広告を掲載します。そして、不動産広告には、物件の売り出し価格や間取り情報などに合わせて、物件内の画像を撮影して掲載するのが一般的です。顧客側は、その物件情報を確認して、自分たちの予算内で最も魅力的に感じる物件に内覧をしに行くのです。

ホームステージングを実施すれば、広告に掲載する物件画像が、新築のモデルルームのような空間に演出されたものを掲載できるようになります。そのため、空室状態の画像を掲載した物件などと差別化できるようになり、集客率をアップさせることができるのです。
実際に、ホームステージング前後の反響を比較した場合、ホームステージングを実施したことで、広告の閲覧数や問合せ数が大幅に増えたというデータが出ています。家の売却は、内覧してもらえなければ何も始まらない部分があるため、この効果が非常に大きいと言えるでしょう。

②内覧時の印象も良くなり早期売却が期待できる

先程紹介したように、ホームステージングを実施した物件は、家具などが何も設置されていない物件と比較すると、入居後の生活をイメージしやすくなるという効果が得られます。内覧者にとっては、生活動線や家事動線がイメージしやすくなりますし、自分たちが入居した時に、どのような家具配置にすれば良いのかの参考にもできるため、内覧時の印象が大幅にアップするのです。

実際に、ホームステージング実施後の効果として、内覧時に好影響が出ているというデータも存在します。

引用:ホームステージング白書2023年

上のグラフの通り、ホームステージング実施後の効果として、内覧者が増加したうえ、内覧してもらえる時間が大幅に伸びているということが分かります。内覧時間が長いということは、物件に対する興味が高くなっていることを意味しますし、家具などの配置によって魅力的な空間を作り出したことの効果と言えるでしょう。そしてさらに、ホームステージング後の物件については、内覧時に細部まで確認してもらえることから、成約までの期間も短くなったというデータがあるのです。

中古住宅の購入を考えて、物件の内覧に足を運ぶ際には、1日に複数の物件を見て回るのが一般的です。その際、ステージングを施した物件とそうでない空室状態の物件を同じ日に内覧した場合、後に印象に残るのはホームステージングで魅力的な空間を作り出している物件のはずです。そのため、ライバル物件と比較検討された際も、ホームステージングを実施した物件の方が好印象を残せている可能性が高くなるので、後から「あの物件にしよう!」と顧客に選ばれる可能性が高くなると言えるのです。

③高値売却に繋がる

3つ目の効果は、ホームステージングの実施により、高値売却が期待できるようになるという点です。家の売却は、売主と買主、両者が納得するところで価格が決まります。一般的な市場相場のようなものもあるのですが、決められた「定価」といったものはなく、あくまでも両者の交渉次第といった形で価格が決まるのです。

そのため、買主側が物件を内覧した時、「この物件に住んでみたい!」など、より良い印象を与えることができれば、その分、高値での成約が期待できるようになるわけです。例えば、汚れやキズが目立つ状態のまま売却活動を進めると、入居前にハウスクリーニングなどを実施しなければならないという印象が残り、「その分を値下げしてほしい」と要望される可能性が高くなります。一方、内覧時の印象が非常に良いという状況になると、「早く契約しないと別の人に買われてしまうのではないか?」などと、購入希望者側の背中を押すことができ、売主が希望する価格でそのまま売却できる可能性が高くなるのです。

実際に、日本ホームステージング協会が毎年実施している実態調査では、ホームステージング実施の効果として「家賃・販売価格を下げずに募集できた」というポイントを指摘している方が多いです。ホームステージングは、物件そのものの印象を良くすることができるため、早期の成約だけでなく、希望する価格(高値)での契約まで期待できるのです。

ホームステージングを実施すれば家が売れる?

ここまでの解説で、ホームステージングが中古住宅の売却で非常に効果的な対策になるということが分かっていただけたと思います。ホームステージングを実施すれば、広告の段階から反響率を高めることができ、内覧者を増やすことが期待できるようになります。当然、多くの方に内覧してもらえるようになれば、それだけ成約できる可能性が高くなりますし、多くの方に興味を持ってもらえているということが売主の安心感につながり、自信をもって売却活動を進められるようになることで、値下げせずに成約に至れるなど、非常に良い効果が期待できるのです。

ただ、これから家の売却を考えていて、ホームステージングの実施を検討しているという方は、以下の点について認識しておいた方が良いです。近年では、ホームステージングが非常に効果的だという話が広まっているのですが、「ホームステージングを実施すれば、家が必ず売れるのか?」というとそうではないのです。

ここでは、ホームステージング実施上の注意点をご紹介するので、実施を検討している方は以下の点も理解しておきましょう。

①必ずしも早期かつ高値売却に繋がるわけではない

ホームステージングは、中古住宅市場で「早期売却」や「高額売却」を実現するために非常に有効な対策と解説されるようになっています。実際に、日本ホームステージング協会が毎年実施している実態調査を確認しても、中古住宅の売却や賃貸住宅の空室対策として、大きな効果を発揮しているという調査データが出ています。

しかし、これを持って「ホームステージングを実施すれば、必ず早期かつ高値で売却できる!」と考えてはいけません。ホームステージングのメリットとされる早期かつ高値での売却に繋がるという点は、あくまでも「それが期待できる」という可能性の話なのです。

例えば、プロにホームステージングを実施してもらい、建物そのものの印象がどれだけ良くなったとしても、立地条件などが買主側の希望から外れている場合、購入には至らない可能性の方が高いです。また、物件の条件そのものに問題がない場合でも、買主側に何らかの都合があり、契約にはつながらないということも普通に考えられるのです。

ホームステージングは、あくまでも「中古住宅の売却活動を助ける一つの手段」であり、これを実行したからと必ずしも早期もしくは高値での売却に繋がるわけではないという点は、あらかじめ理解しておく必要があります。

②費用対効果についてよく確認する

ホームステージングの実施は、いくつかの手法が存在します。そして、採用する手段によって、対策にかかる費用が変わるのですが、どのパターンで対策を実施するにしても、「お金をかけただけの効果を得られるか」という費用対効果のことはきちんと見極める必要があります。

例えば、ホームステージングを専門業者に依頼する場合、レンタル家具を利用して室内をコーディネートしたり、蓄積した汚れなどを除去するためプロの手でハウスクリーニングを実施してもらったりします。この場合、レンタル家具の費用や掃除、ステージングのコンサルティングなどの費用として、数十万円単位の費用が掛かるのが一般的です。

ホームステージングの実施については、3000万円で売却を考えていた物件が、50万円かけてホームステージングすることで3200万円で売却できたとしたら、高い費用対効果が発揮できていると言えるでしょう。しかし、ホームステージングを実施しても3000万円でしか売れなかったという場合、かけたコストは無駄だった可能性も考えられるのです。もちろん、ホームステージングを実施しなければ、値下げ交渉を受けることで2800万円まで売値が下がっていた可能性もあります。

ホームステージングの実施前に、費用対効果を正確に測ることは難しいですが、「分からないものは考えても仕方ない」と判断するのは良くありません。したがって、ホームステージングを実施する場合、対策にかけた費用でどんな効果を見込むのか、具体的な目標を定めておくことが大切になるのです。例えば、「○○万円以上での高値売却を目指す!」「〇ヶ月以内の早期売却を目指す」など、明確な目標を定めて、それを実現する対策としてホームステージングが最適なのかを慎重に検討した上で実施するかどうかを判断するようにしましょう。

まとめ

今回は、昨今の中古住宅市場で、物件の売却を後押ししてくれる対策として人気になっているホームステージングの基本について解説しました。

記事内では、ホームステージングを実施することで得られるメリットについて解説していますが、これだけを見ると、家を売りに出し、早くまたより高く売るためにはホームステージングが効果的だと感じた方が多いと思います。実際に、日本ホームステージング協会が毎年実施している実態調査では、実際にホームステージングを取り入れた方の多くが、大きな効果を実感しているということがよくわかります。

ただ、記事の後半でも紹介した通り、ホームステージングの早期売却や高値売却効果については、あくまでも「可能性を高めてくれる」だけということを忘れないようにしましょう。ホームステージングを実施することで、どのような物件でも簡単に売れるようになるというわけではないので、費用対効果のことなども確認しながら実施するかどうかは慎重に判断するようにしましょう。