賃貸物件の空室対策にホームステージングを活用するポイント
ホームステージングは、中古住宅市場が活発なアメリカで誕生した手法で、マイホームを売りに出す際、家具やインテリアなどで室内を演出することにより、早期かつ高値での売却を促進することが目的とされています。つまり、この販促手法については、一般的に「不動産売買」の場面で採用される手法というイメージがあり、日本国内においても中古住宅の流通量が増えているのに伴って、ホームステージングを活用してマイホームの早期売却を目指すという方が増えています。
ただ、このホームステージングと呼ばれる手法は、魅力的な物件画像を広告に掲載することができる、内覧時の第一印象を大幅に向上させることができるという特徴から、賃貸物件市場でも非常に有力な空室対策になるのではないかとみなされるようになっています。特に、コロナ禍の2020年頃には、賃貸物件の内見に不動産会社の担当者が同行できなくなったという事もあり、顧客単体で物件の内見を実施した際、より良い印象を残すことを目的として、ホームステージングを採用するケースが増加しました。そしてその後、賃貸物件市場でも、ホームステージングを活用した空室対策が、当たり前のように実施されるようになっています。
ホームステージングは、賃貸物件市場においても、内見後成約率を高めてくれるなど、早期に空室を埋めるための手段として大注目を集めています。実際に、賃貸物件の仲介を担う不動産会社でも、ホームステージングを導入することで競合他社との差別化を図る企業が急増していると言われているのです。そこでこの記事では、賃貸物件の空室対策としてホームステージングを活用する際のポイントをご紹介します。

ホームステージングを賃貸の空室対策に用いる目的
それではまず、中古住宅の販促手法として誕生したホームステージングを、賃貸物件の空室対策として活用する目的について解説していきます。ここでは、ホームステージングの具体的な対策内容と、この手法を導入している不動産会社などが期待している効果などについてまとめてみます。また、一口にホームステージングと言っても、実施の方法がいくつかあるので、賃貸物件における対策の主な導入方法についても簡単にご紹介します。
ホームステージングとは?具体的な実施内容と目的
ホームステージングは、売却または賃貸を予定している物件に対して実施する対策で、対象となる物件をより魅力的に見せるための手法のことを指しています。具体的には、物件内に家具やインテリア、照明などを配置することで、新築のモデルルームのように演出し、魅力を最大化する手法となります。賃貸物件の場合、顧客が内見に足を運んだ際、入居後の生活を具体的にイメージさせることで「こんな部屋に住んでみたい!」と思わせ、早期の成約に導くといった対策になります。
ホームステージングの実施内容については、視覚的な情報で確認する方が分かりやすいので、以下にホームステージング前後の物件画像を紹介します。
■ホームステージング実施前

■ホームステージング実施後

上の二枚の画像を確認していただくとよくわかると思いますが、家具などが何も置かれていない物件はどうしても殺風景に見えてしまい、部屋のサイズ感などもつかみにくいはずです。一方、ホームステージングが実施された物件は、そこに入居した後の自分の姿をイメージしやすく、生活動線や家事動線などまで想像することができるようになり、好みの演出が施されていれば「ここに住んでみたい!」と感じるはずです。
ホームステージングは、家具やインテリア、照明や植物などを用いて、空間全体の演出を行い、内見者の購買意欲を最大化するという対策になります。その結果として、「すぐに決めないと他の人にとられるのではないか?」と言った想像を掻き立てることができるようになり、内見後の成約率を高めることができると期待されているのです。特に、賃貸物件市場は、空室状態のまま入居者募集を開始するのが一般的な業界であったため、ホームステージングの実施による内見時の印象アップの効果や広告反響率の向上など、空室対策として非常に有効な対策だと仲介を担う不動産会社の間で注目され、コロナ禍以降は一気に普及が拡大しています。
賃貸物件に対するホームステージングは、主に以下のような目的で実施されているケースが多いです。
- 不動産ポータルサイトに掲載する物件情報の閲覧数を増やす
- 広告からの問合せや内覧者の数を増やす
- 内見時の第一印象を向上させる
ホームステージングは、広告の反響率向上と内見時の印象アップという二つの効果の相乗効果により、賃貸物件の集客効果が高まることで空室対策の短縮が期待できる対策とみなされています。
ホームステージングの導入方法について
ホームステージングの実施方法については、主に「専門業者に依頼する」「自分でホームステージングを実施する」「バーチャルホームステージングを利用する」の3つの方法があります。採用する方法によって得られるメリットが異なるので、状況に合わせて適切な方法を採用すると良いでしょう。
- 専門業者に依頼する
専門業者に対策を依頼すると、「ホームステージャー資格」と呼ばれる有資格者に対策を施してもらうことができます。室内に設置する家具なども、物件のターゲット層に合わせて良質な物をレンタルすることができ、搬入や配置、撤去なども全て任せることができるので、手間なく対策を施すことができます。ただ、専門業者に作業を依頼する場合、コストがかかるという点が難点です。 - 自分でホームステージングを実施する
仲介を依頼された不動産会社もしくは物件オーナー自身がホームステージングを施すという方法です。対策にかかる費用を抑えられるという点が大きな魅力になるのですが、ステージングに関するノウハウが不足している場合、効果的な対策になりにくいという点がデメリットです。また、配置する家具などを購入するのに、それなりの初期費用がかかる点も注意しましょう。 - バーチャルホームステージングを利用する
バーチャルホームステージングは、物件写真にCGで制作した家具などを合成し、ホームステージング後の状態を作るサービスです。実際に家具などを配置する必要がないため、家具の入手費や搬入などにかかる人件費などを削減することができ、安く対策を施すことができます。ただ、実際の物件に家具を配置する方法ではないため、内見時の印象アップという部分に関しては何の効果も発揮しないので注意しましょう。
賃貸物件市場では、仲介を担う不動産会社や物件オーナー様自身が対策を施すというケースが多いです。演出用の家具やインテリアは、適切な保管を心がけると、何度も使いまわすことができるので、対策にかかる費用を抑えることができるのです。ただ、多くの物件がホームステージングを取り入れるようになった昨今では、対策の質が求められるようになっていて、賃貸物件市場でも専門業者に依頼するというケースが増えているとされます。
バーチャルホームステージングについては、パソコン上で画像を加工するという技術なので、対策にかかる費用を抑える、広告に利用できる物件写真が速やかに用意できるといった点がメリットです。しかし、広告を見て興味を持った人が内見に足を運んだ際には、空室状態で何の演出も施されていない物件を見せることになり、広告段階での好印象からの落差が大きくなってしまい、成約率を下げてしまう結果になる恐れがあります。バーチャルホームステージングは、安価かつ素早く対策が施せるものの、使い方によっては逆効果になる可能性があるので、その点は注意しましょう。
賃貸物件の空室対策にホームステージングを導入する時のポイント
それでは、賃貸物件の空室対策として、ホームステージングの実施を検討している方に向け、この対策が持つ効果を最大限発揮させるための実施ポイントをご紹介していきます。
ホームステージングは、「家具やインテリアを使って演出する方法」と単純な解説をされるケースが多いのですが、単に家具を配置すれば内見時の印象が良くなるというほど簡単な対策ではないのです。広告の反響率向上や内見後成約率の向上を期待するためには、的確な対策を打ち出さなければいけません。
賃貸物件におけるホームステージングは、専門業者に依頼するのではなく、不動産会社や物件オーナーなど、ご自身で対策を施すケースが多いと思いますが、実施の際には以下ポイントに注意しましょう。
①入居ターゲットを明確に設定する
ホームステージングを成功に導くためには、対策を施す物件のターゲット設定をしっかりと行うということがポイントになります。先程紹介した通り、ホームステージングは、何も考えずに家具やインテリアを配置すれば良いというものではなく、物件の入居対象者が見た時に「ここに住みたい」と思わせる対策を実施する必要があるのです。例えば、ファミリー層向けの物件なのに、単身者向けの家具やインテリアを使って演出を施した場合、内見に来た入居対象者は「何か違う…」といった印象を受けてしまうはずです。
したがって、ホームステージングを実施する際には、まずは対策を施す物件の入居者像(ペルソナ)を明確に設定することからスタートしてください。この入居者像は、「こんな人に入居してほしい」など、物件オーナーが理想とする入居者を想定し、その人のプロフィールのことを指しています。例えば、以下のような要素を考慮しながらペルソナを設定しましょう。
- 年齢層や性別
- 職業や働き方
- ライフスタイル
- 家族構成
- 趣味など
入居者像が明確になれば、その人たちがどのような生活を求めているのか正確に予想することができるようになるはずです。そのため、入居ターゲットが内見に来た際、最も好印象を受ける部屋を作り出すことができるようになるのです。
②物件の長所を伸ばす対策を施す
ホームステージングを実施する際には、「弱点を隠したい」と考える方が多いはずです。しかし、ホームステージングを成功に導くためのコツは、短所に着目するのではなく、物件の長所に着目し、そこを伸ばすための演出を施すことが大切になります。どのような物件にも、長所と短所がありますが、可能な限り長所の部分に顧客の目を惹きつける対策を施す方が、成約に近づくことができると考えてください。
例えば、バルコニーなどからの眺望が魅力的な物件の場合、家具の配置などにより窓部分やバルコニーに視線が行くような演出を施すと良いです。そうすることで、自然と窓の外が視線を誘導することができ「美しい眺めが楽しめる部屋だ」とポジティブな印象を残すことができます。また、築古物件などの場合、この点を長所として扱うという方法も有効です。室内の演出をモダンでレトロな感じにすれば、「古い」という印象ではなく「趣がある」といった感じに、風合いを生かした演出になります。
室内の傷などを家具を配置することで隠すといった方法は、入居後の不信感につながる可能性があり、早期の退去を招く結果になる可能性があります。したがって、「短所はあるけれど、それ以上に魅力的な物件」と思わせるような演出を心がけることが対策を成功させるポイントと考えてください。
③第一印象の向上に力を入れる
賃貸物件のホームステージングは、玄関部分など、内見時の第一印象を決める場所にこだわると良いです。物件の第一印象は、玄関に入った時の印象で決まると言っても過言ではなく、内見者が玄関に入った瞬間に「雰囲気が良くない気がする…」などと、第一印象としてネガティブな感情を抱いてしまうと、それを覆すのは非常に難しくなるのです。例えば、玄関に入った瞬間、悪臭を感じ取ってしまうと、室内のホームステージングがどれだけ素晴らしくても、最初の悪い印象を覆すことができない可能性が高いです。
したがって、賃貸物件の空室対策を目的としてホームステージングを実施する際には、室内の演出のことだけを考えるのではなく、内見者が最初に目にする玄関周辺に着目することが成功させるポイントと考えてください。例えば、以下のような対策で、物件の第一印象を高めることができるでしょう。
- お洒落な玄関マットやスリッパを用意する
- ドアを開けた瞬間、良い香りがするようにニオイの演出を施す(万人受けする臭い)
- ウエルカムボードや物件の魅力をまとめたプリントを用意する
- 自由に持ち帰ることができる粗品を用意しておく
上記のような対策を実施すれば、内見者が物件に足を踏み入れた瞬間の第一印象を良くすることができるはずです。特に、ニオイの演出については、非常に効果的です。玄関部分は、どうしても湿気やかび臭さを感じてしまいやすい場所なので、誰もが「良い香りだ」と感じるような万人受けするアロマを配置しておくと良いです。なお、あまり強いニオイの芳香剤を配置すると、逆効果になるケースがあるので、その点は注意ましょう。
また、玄関部分の対策としては、物件の外側にも着目すると良いです。例えば、ドアの汚れなどが目立つ場合、清掃や新しいドアに交換する、インターホンを新しいものに交換するなどといった対策は、物件に入る前に好印象を残すことができ、ポジティブな印象のままで室内を内見してもらうことができるようになるので、早期の成約に導きやすくなります。この他、玄関部分に存在感のあるインテリアを配置し、床の傷や壁のシミなどから視線を逸らすといったテクニックも有効です。
④空間ごとに適切な対策を施す
ホームステージングは、部屋ごとに適切なステージングを実施することが非常に重要です。賃貸物件には、リビングやキッチン、お風呂やトイレなど、物件内に使用目的が異なる場所が混在しているわけなので、全ての部屋に対策を施す場合には、それぞれの部屋ごとに適切な対策を実施しなければならないのです。
例えば、以下のような感じに、各部屋に合わせて、ステージングの内容を検討する必要があります。
- リビングのホームステージング
リビングは、そこに住む人が最も長い時間を過ごすことになる部屋です。そのため、居住者からするとリラックスできる居心地の良い環境を求めるものです。ホームステージングを施す際には、空間にグリーンを適度に配置することで、リラックス空間を作るという方法が採用されます。観葉植物などが、適度に配置されていると、おしゃれで居心地の良い環境を感じさせることができるでしょう。ただ、本物の植物を利用すると、管理の手間がかかる点に注意が必要です。枯らさないためには水やりなどが欠かせませんし、本物の植物の場合、害虫が発生してしまう要因にもなってしまいます。したがって、ホームステージングでは、フェイクグリーンを配置してグリーンを加えるケースが多いです。なお、広いリビングルームの場合、家具やインテリアの数が少ないと、余計に寂しい印象を与えてしまうことがあります。理想を言えば、物件ランクに合わせた大型家具などを設置したいのですが、予算的な問題がある場合は、ローテーブルなどを配置し、インテリアでスペースを埋めるようにしましょう。テーブルの上は、ティーセットなどを配置するだけで、一気に雰囲気が出るのでおすすめです。 - キッチンのホームステージング
キッチンなどの水回りは、何よりも清潔感が重要です。前入居者の使用感が残ってしまうと「他人の家」という印象が消えにくくなるので、インテリアなどを配置する前に、徹底的に掃除してください。その後、おしゃれな調理器具や食器などを配置することで、キッチンの利用イメージが伝わるような演出を施すと良いです。調理器具などに関しては、100円均一などでそろえればコストを抑えられます。 - お風呂周辺のホームステージング
お風呂や洗面台なども、キッチン同様に清潔感が重要になります。カビや水垢が残ったままになると、物件全体の印象が悪くなるため、可能であればプロのハウスクリーニング業者に依頼して、徹底的に綺麗にしてもらいましょう。その後、リラックスできる空間演出を心がけ、タオルやバスグッズなどの小物で空間演出を加えると良いです。また、自然な香りのアロマなどを利用して、ニオイの演出を施すことも、リラックスできるバスルーム作りに有効です。 - 寝室のホームステージング
寝室は、リラックスできる空間と実用性を兼ね備えた演出が重要です。落ち着いた色合いの寝具を選ぶことで、リラックスできる部屋を演出できるでしょう。さらに、ベッドのわきにミニデスクやチェストを配置しておけば、実際の生活をイメージさせやすくなります。ちょっとした家具の配置は、空間の有効活用方法を提案することができ、入居後の生活をイメージさせやすくなるので、内見後成約率の向上が期待できます。
上記のように、ホームステージングは、各部屋の特性に合わせて、最適な対策を実施することが重要です。①で設定した入居対象者の生活を思い浮かべ、その人が理想とする生活が実現できるような空間に演出することが、成功への近道になるのです。
賃貸物件に対するホームステージングは本当に効果があるのか?
それでは最後に、賃貸物件に対するホームステージングについて、本当に空室対策として有効な対策になり得るのかについて、実態調査のデータをご紹介します。
昨今の不動産市場では、売買でも賃貸でも、ホームステージングが非常に効果的な対策になっていると紹介されています。ただ、今までホームステージングを実施したことがないという方であれば「本当に空室対策になるのか?」と疑問に感じてしまうかもしれません。
そこでここでは、一般社団法人日本ホームステージング協会が毎年実施している、ホームステージングの実態調査のデータをご紹介します。
ホームステージング実施による効果
賃貸物件に対するホームステージングは、広告の段階から非常に高い効果を発揮しているということがよくわかります。以下は、未実施の物件と比較した時の、ホームステージング実施後の物件の動きに関するデータとなります。
■広告の閲覧数
- 大幅に増えた:36.4%
- 少し増えた:47.3%
上記のように、不動産ポータルサイトなどに掲載している物件広告の閲覧数は、ホームステージングの実施によって明確に増えているというデータがあります。
■広告からの問い合わせ数
- 大幅に増えた:32.1%
- 少し増えた:44.6%
広告からの問い合わせの数も、約8割の物件で増えたというデータとなっています。
■内覧者の数
- 大幅に増えた:30.4%
- 少し増えた:42.9%
実際に内覧まで足を運ぶ入居希望者の数も、7割以上の物件で増加しているというデータが出ています。
■成約までの期間
- 大幅に短くなった:44.6%
- 少し短くなった:37.5%
内覧後、成約までの期間についても、短縮できたというデータが出ています。
これらのデータからも分かるように、ホームステージングは賃貸物件の空室期間の短縮を目指す対策として、確かな効果を発揮できていると判断できます。
データ参照:ホームステージング白書-2023年
まとめ
今回は、賃貸物件市場でも注目されるようになったホームステージングについて、実施の際のポイントや本当に空室対策に効果的な対策なのかについて解説しました。
記事内でご紹介しているように、ホームステージングは、中古住宅市場が活発なアメリカで誕生した方法で、主に不動産の売買において有効とみなされていました。ただ、インターネット広告が主流となった現在では、魅力的な物件画像を用意することができる、内見時の印象を大幅に向上させることができる対策という点が評価され、賃貸物件市場でも積極的に取り入れられるようになっているのです。
実際に、日本ホームステージング協会が実施しているホームステージングの実態調査委においても、賃貸物件に対するホームステージングの効果が証明される結果が出ています。なお、賃貸物件に実施されるホームステージングについては、仲介を担う不動産会社が実施しているケースがまだまだ多いとされています。ただ、多くの企業がホームステージングを取り入れるようになってきた昨今では、対策の質が強く求められるようになっていて、高額物件については専門業者に対策を依頼するケースが増えているとされます。空室対策としてホームステージングを実施したのに、思うような効果が発揮されていないという場合は、一度専門業者に対策を依頼するのがおすすめです。