ホームステージングの導入が「早期売却」に繋がる理由
昨今、新築住宅の価格が高騰していることもあり、中古住宅市場の注目度が年々高くなっています。実際に、国土交通省が公表しているデータを見ても、日本の全住宅流通量(新築と中古の合計)に占める中古住宅(既存住宅)の割合がここ数年の間でかなり伸びているとされています。国土交通省の統計では、中古住宅の流通シェア率は、長らく14%前後にとどまっていたのですが、近年「中古シフト」が一気に進んだことにより、登記基準や算出方法によっては中古住宅の流通シェアが約30%〜40%台へ上昇しているという統計データが出てきているのです。
そして、住宅市場において中古住宅需要が高くなっている昨今、より効率的に買い手を見つける方法として「ホームステージング」と呼ばれる手法が注目されるようになっています。ホームステージングは、建物そのものに対策を施すリフォームやリノベーションとは異なり、室内を家具や照明、インテリアや香りによって演出することで、内覧者に「ここに住んでみたい」と思わせる空間を作り出す方法とされています。購入希望者が内覧に足を運んだ時、「この部屋は素敵だな!」と思った瞬間、その物件の印象は大きく変わります。つまり、ホームステージングは、売りに出す物件を「より良い商品」として見せるための演出手法であり、実際にこの対策が実施された物件はより早く買い手が見つけられるようになるとされています。例えば、ホームステージングを実施した中古物件は、未実施の物件と比較して、平均売却期間が30~50%も短縮されたという驚きのデータもあるのです。
日本は「新築信仰」という言葉が作られているように、マイホームの入手を考えている人の多くが新築住宅を求めているというイメージが強いです。しかし、昨今の経済状況の変化などもあり、中古住宅の売却が実現しやすくなっているのです。そしてその際には、ホームステージングの実施が非常に有効に働くとされています。そこでこの記事では、ホームステージングの導入がなぜ「早期売却」に繋がるのか、その理由について解説します。

ホームステージングとは?目的や歴史を紹介
それではまず、中古住宅市場において、不動産の早期売却や高値売却を後押ししてくれる販促手法として注目されているホームステージングの基礎知識を簡単にご紹介していきます。ここでは、ホームステージングを実施する目的や、そもそもどのようにして開発されて日本で広がってきたのかという歴史について解説します。
ホームステージングは「物件の第一印象を変える」ことが目的
ホームステージングの実施目的は、売りに出す物件の第一印象を「よりよく見せる」ということにあります。
中古住宅の売却では、購入希望者が内覧などに足を運んだ際、最初に抱く印象が非常に重要とされており、それが成約スピードや価格を決定づけるとされています。人間は、僅か数秒の間に「好きor嫌い」を判断すると言われていて、これは不動産の売買においても例外ではないのです。
購入希望者が内覧に足を運び、玄関を開けて足を踏み入れた瞬間に感じる臭いや明るさ、床や壁の色調や家具の配置状況などによって感じられる「雰囲気」こそが、買い手側の心理を動かすとされているのです。
ホームステージングは、まさにこの購入希望者の第一印象を設計するための技術として開発されたと言っても過言ではありません。ホームステージングは、無計画に家具を配置しているだけでなく、以下のようなことも考慮しながら、部屋の演出を計画しているのです。
- 空間の明るさが最大化できるような照明の演出
- 家具やインテリアの統一感により、具体的な生活イメージを提示する
- 色彩計画により、無意識化で快適さを感じさせる
ホームステージングは、上記のように、買い手側の心理的な要素も組み合わせながら、内覧した時に「ここに住んでみたい!」と思わせるような空間を作り上げることを目的としています。
リフォームやリノベーションとの違い
ホームステージングは、中古住宅の販促手法として考えた時、「リフォーム」や「リノベーション」と混同してしまう方が多いと言われています。どちらの対策も、売りに出す中古住宅について、内覧した時の印象を大幅に良くするという結果が同じなので、似たような販促手法と考えてしまう人がいるのだと思います。
しかし、リフォームやリノベーションとホームステージングは、全く異なる対策となります。
リフォームは、建物の老朽化した部分について、修繕や設備交換などの工事を実施することで、物理的な価値を回復させることが目的となります。リノベーションは、さらに付加価値を上乗せすることで価値向上を目指す対策となるのですが、どちらにしても物理的価値の回復が目的です。一方、ホームステージングはというと、家具の配置や清掃、片付けなどを実施する対策で、見せ方を工夫することによって顧客の「印象価値」を最大化させるということが目的となるのです。
なお、リフォーム・リノベーションとホームステージングは、費用対効果の面でも大きな違いがあります。例えば、内装の見栄えを良くするため、室内の壁紙を全面張り替えるというリフォームを実施する場合、部屋数などによって変わりますが、最低でも数十万円単位のコストがかかってしまいます。しかし、ホームステージングの場合、家具やインテリア、観葉植物の配置や、照明による明るさの演出を施すだけで、同等以上の効果を発揮することもあるとされているのです。ホームステージングも、対策を施す内容や部屋数によって費用が変わるものの、戸建ての場合でも、10~25万円前後が相場とされています。そのため、より低コストで高い効果を見込むことができるという点で、費用対効果の高い販促手法とみなされるようになっているのです。
ホームステージングは欧米から始まり、日本で独自進化を遂げている
ホームステージングは「中古住宅の販促手法」となるのですが、日本で誕生して古くから活用されてきたという対策ではありません。先程紹介した通り、日本は新築住宅が好まれる傾向にあったため、もともと中古住宅の販促をメインとした対策はあまり注目されてこなかったという現実があるのです。
ただ、アメリカやヨーロッパなどの欧米諸国では、「家は100年以上使い続ける」という文化があり、中古住宅市場が昔から活発に動いています。そのため、中古住宅市場には数多くのライバル物件が売りに出ていて、早期の売却を目指すにはライバル物件との差別化が重要視されていたのです。そして、1970年代のアメリカ・シアトルにてホームステージングと呼ばれる販促手法が誕生したとされています。当時の不動産エージェントが、ライバル物件との差別化を実施する目的で新築のモデルルームの様な演出を施し売りに出した物件が、短期間かつ高値で成約できるということを発見し、瞬く間にアメリカ全土にこの対策が広がっていったとされています。
アメリカでは、ホームステージングの専門資格(ASPなど)も作られていて、不動産を売りに出す時には標準的なプロセスとしてホームステージングが定着しています。また、スウェーデンなどでも、中古物件として売りに出される不動産については、その8割以上にホームステージングが実施されていると言われるなど、中古住宅の売却には欠かすことができない販促手法であるという立ち位置となっているのです。
日本においては、2000年代に入った頃からこの対策が注目され始め、2010年代から仲介を担う不動産会社の間で徐々に普及し始めたとされています。そして、対面での営業が難しくなったコロナ禍に、リモートやセルフ内見、物件広告において、顧客の興味をより獲得できる手法としてホームステージングへの注目度が一気に高くなったとされているのです。実際に、2020年代に入ってからは、不動産仲介会社やハウスメーカー、不動産投資家などが積極的にホームステージングを導入するようになり、中古住宅市場の活発化も相まって、日本でも「中古住宅の売却にはホームステージングが最適!」とみなされるようになったのです。
なお、日本国内で実施されているホームステージングは、欧米各国で実施されているホームステージングとは少し異なる独自の進化を遂げていると言われています。これは、ホームステージングが誕生したアメリカなどが直面していない、高齢化や人口減少、空き家の増加と言った諸問題が日本に存在していたため、それらの問題も解決できるような対策として独自変化していったことが要因と言われています。日本国内で実施されるホームステージングは、片づけや整理収納、またそれに伴う廃棄物処理なども対策に組み込まれています。
現代のホームステージングは、日本の住宅事情や日本人のライフスタイルに合わせて独自の進化を遂げており、喫緊の課題である空き家問題の解決にも一役買える対策として注目を集めるようになっています。
ホームステージングの導入が「早期売却」に繋がる理由
ここまでの解説で、ホームステージング実施の目的が、中古住宅の「早期売却」と「高値売却」にあるということが分かっていただけたと思います。
ただ、ここで気になるポイントが「ホームステージングの実施がなぜ早期売却に繋がるのか?」という点なのではないでしょうか?ホームステージングは、売却や賃貸を予定している不動産に対し、室内に家具やインテリア、照明や植物を配置することで、内覧時の印象を高め、早期かつ高値売却に導くことができると解説されます。
ただ、この部分だけを聞くと「本当にそのような効果が得られるものなのだろうか?」と少し疑ってしまうという人もいると思います。そこでここで、ホームステージングの導入が、どのような効果をもたらすことで早期売却に繋がっているのかについて、対策による主な効果をご紹介していきます。
入居後の暮らしのイメージを可視化させることができる
ホームステージングの実施による効果としては、物件写真や内覧した時に、購入希望者が入居後の暮らしや家事動線を可視化することができるようになる点です。
不動産の購入を検討している方が、わざわざ内覧にまで足を運ぶのは、スペック表や間取り図を見ただけでは判断できないことを可視化させることが目的です。例えば、物件周辺を実際に歩いてみて、スーパーやコンビニなどの生活利便施設が整っているのか、子供が安全に過ごせるような治安なのか、事前に確認するわけです。そして、物件そのものについても、自分の目で確認することで、その物件を購入したとすれば「ここでどんな生活が送れるのか?」「自分たちの生活スタイルに合っているのか?」を判断するのです。
ただ、物件内に家具などが何も置かれていない空き家の場合、そこでの生活を具体的にイメージすることが難しいです。その逆に、居住中の物件については、生活感が残りすぎることで「他人の家」という印象をぬぐうことができず、自分たちの暮らしをうまく描けないことで、購買意欲が低下してしまうという結果に陥る可能性があるのです。
ホームステージングは、この顧客側の想像力の欠落を補うことができる手法となります。家具やインテリア、照明や植物を配置することで、リアルな生活空間を演出することができ、内見時には無意識のうちに「そこに住んでいる自分」を想像させることができるようになるのです。これは、心理学でいうミラーニューロン効果に近いとされていて、内覧している空間を「自分ごと化」させることで購買意欲を高め、早期の購入につなげやすくなるわけです。
ホームステージングは、物件の間取りや立地条件、築年数や導入設備などによって購入ターゲットを明確化したうえで対策を施します。そのため、ほとんどの内覧者は、物件に対する興味度が高い状態で足を運ぶため、具体的な暮らしを提案することができれば、購買の判断も早くなるのです。実際に、ホームステージング白書2024年を確認してみると、ホームステージングを実施した物件は、未実施の物件と比較して、成約までの期間が短くなったと回答した方が約7割に達しているのです。
物件写真の質向上で広告反響率がUP
近年の不動産売却では、インターネット上の不動産ポータルサイトでの反響が「成約できるかどうかを決める」と言っても過言ではなくなっています。売買でも賃貸でも、物件探しをしている人のほとんどは、スマホやパソコンを使って大手不動産ポータルサイトにアクセスするようになっているのです。その結果、SUUMOやHOME’S、アットホームと言った、多くの方が利用する不動産ポータルサイト内で、ライバル物件と一覧表示された時、「この物件を見てみようかな!」と思ってもらえるような物件写真を用意することが重要となっているのです。
ホームステージングの強みの一つは、内覧に足を運んでもらった人に好印象を与えることができる点なのですが、それ以前の物件広告の段階でも、非常に大きな効果を発揮するのです。ホームステージングが実施された状態を撮影すれば、写真を見ただけで入居後の生活を具体的にイメージさせることができるようになります。また、明るさや彩度が高く、さらに家具の配置によって空間の奥行やメリハリを感じられる写真となるため、閲覧者のクリック率が高くなるとされているのです。ホームステージングによって、物件写真の印象がどこまで変わるのかは、実際の画像を見てもらうと分かりやすいです。

上の画像を見れば一目瞭然です。空室状態の物件画像は、どこか殺風景で、部屋の広さもつかみにくいはずです。一方、ホームステージングが実施された物件画像は、写真からでも入居後の自分たちの姿がイメージしやすいのではないでしょうか?
実際に、ホームステージングを実施した画像を物件広告に採用した場合、不動産ポータルサイトでのクリック率は空室物件と比較して1.5~2倍も高くなるとされています。ホームステージング白書2023年のデータを見ても、ホームステージングを実施した物件は、未実施の物件と比較して、広告の閲覧数が増えたという回答が約8割に達しているという状況になっています。
中古住宅を売却するためには、広告を見た人に興味を持ってもらい、実際の物件にまで足を運んでもらえなければ成約に至ることはほぼできません。つまり、物件広告の反響率を高めることができるというホームステージングは、早期売却を目指すうえで非常に効果的と言えるわけです。
価格交渉を受けにくい状況を作り出す
ホームステージングの実施は、内覧に来た購入希望者から価格交渉を受けにくくなるため、早期かつ高値での売却に繋がりやすくなるとされています。
中古住宅の売買では、「値下げは当たり前にしてもらえる」と考えている買主が多いです。そのため、買い手側が内覧に足を運ぶ際には、「値引き余地がありそうか」を無意識状態で考えながら見学していると言われています。そして、実際に内覧した物件について、「室内が暗く感じる」「生活感があって散らかっているように見える」という物件の場合、「管理が行き届いていない=安く買えるのではないか?」と感じさせてしまうのです。
その逆に、ホームステージングによって、室内が清潔で明るく、誰にとっても魅力的に見えるような状態に整えられている場合、「大切に住んでいる」「他の内覧者も手をあげるのではないか?」と言った認識を持たれ、買い手側の心理的に「急いで購入申し込みを出さないといけない」「値下げを希望すると他の人にとられそう」と言った認識を持たせるのです。この場合、買い手側は値下げ交渉に打って出にくくなり、売主が提示した希望価格そのままで成約できる可能性が高くなるでしょう。実際に、ホームステージングを実施した物件は、未実施の物件と比較すると、平均値引き率が約3%は低下しているとされ、物件の価格維持にも大きな効果を発揮しているのです。
顧客との価格交渉の時間が無くなることを考えると、成約にかかる時間も短くなり、早期売却に繋がりやすくなるわけです。
内覧者数の増加と内覧時間の延長
先程紹介した通り、ホームステージングの実施は、広告により魅力的な物件画像を使用することができるようになるため、広告反響率が向上するという効果をもたらせます。その結果、物件への問合せ数や実際に内覧まで足を運んでくれる購入希望者の数を増やすことができるのです。例えば、ホームステージング白書2023年のデータを確認してみても、ホームステージングを実施した物件は、未実施の時と比較すると、問合せ数が増えたという回答が約78%で、さらに内覧者数も約79%の方は増加したと回答しているのです。
さらに、実際に内覧まで足を運んでもらった時のことを考えても、内覧者の滞在時間が10~15分程度は長くなると言われています。これは、ホームステージングが実施された物件に対して「もっと見たい」「細部まで確認したい」という感情が生まれている証拠と考えられるでしょう。人は、長く滞在するほど愛着を持つようになるため、内覧時間が長くなるということは、そのまま購入申し込みの段階に進んでもらえる可能性が高くなると言え、早期売却に大きな効果を発揮していると言えるのです。
売主側の安心感も向上して余裕が生まれる
ホームステージングは、買主側だけでなく、売主側に対しても大きな心理的効果をもたらせてくれ、その結果、早期かつ高値売却に繋がりやすくなるとされています。
不動産の売却を考えている売主の多くは、「売却活動の長期化」に対する不安を抱えています。買い手がなかなか見つからず、販売期間が長引いてしまうと、その間に管理費や固定資産税などのコストが嵩んでいってしまいます。不動産を売りに出しているのに、何の反応も得られず、出費ばかりが嵩んでいってしまうと、「本当に売れるのだろうか?」と不安に思い、強いストレスにさらされてしまうことになるでしょう。この場合、最終的に、大幅な値引きに走ってしまったり、不動産買取に出すことで売却を目指すなど、高値売却を諦めて不利な条件で物件を手放すという選択をする方も多いのです。
しかし、ホームステージングを導入すれば、売主にとっても「すぐに売れるのではないか?」と早期売却が期待できるような環境が整います。物件内が清潔で明るく、内覧時に好印象を与えられる環境になりますし、物件広告の見栄えも良くなるため「すぐに売れるはずだ!」と自信をもって売却活動を進めることができるようになるのです。また実際に、広告反響率の向上によって、問い合わせ数や内覧者数をしっかりと確保した状態で売却活動を進められるようになるはずです。
このような状況になれば、売主側の心理も安定するはずです。価格交渉なども余裕を持った姿勢で挑むことができるようになるでしょう。そうすると、売主にとって不利になるような交渉にのることを防げるようになり、結果としてより良い条件での売却が実現しやすくなると考えられるのです。
まとめ
今回は、中古住宅市場が活発化していると言われる昨今の日本の不動産市場で、年々その注目度が高くなっているホームステージングの早期売却効果について解説しました。
記事内でご紹介した通り、ホームステージングは、広告の段階からライバル物件との差別化ができるようになり、問合せ数や内覧者数を確保しやすいという効果が期待できます。さらに、実際に内覧まで足を運んでもらった時には、購入希望者の物件に対する印象を最大化することが期待でき、早期売却に繋がりやすくなるとされているのです。
これからマイホームや相続した実家の売却を検討しているという方は、ホームステージングの導入に関して不動産会社と相談してみると良いでしょう。