2025.07.18

プロによるホームステージングの費用と今すぐできる簡易なセルフホームステージングについて

近年、家の売却や賃貸を促進するための対策としてホームステージングへの注目度がどんどん高くなっています。ホームステージングは、中古住宅市場が活発なアメリカにて、1970年代に誕生したと言われているのですが、現在では家を売りに出すときには多くのケースでホームステージングが実施されるようになっているようです。そもそも、欧米では「家は百年以上持たせよう」という考え方が主流であるため、家を購入する時の選択肢として「中古住宅を購入する」という行為は当たり前となっています。ただ、中古住宅市場には数多くのライバル物件があるため、そのまま売りに出したのではなかなか買い手を見つけることが難しい、高値での売却が望めないなどという問題があり、家の中を素敵な空間に飾るホームステージングが取り組まれるようになったのだと思います。例えば、スウェーデンでは、売りに出される物件の80%以上にホームステージングが施されていると言われています。

そして、空き家の増加が問題視されている日本でも、国や自治体が中古住宅市場の活性化を後押しするようになっていて、早期に、またできるだけ高く家を売るという目的でホームステージングが注目されるようになっています。実際に、日本ホームステージング協会が行ったホームステージング業者への調査によると、2022年と比較して2023年に実施したホームステージングの件数が「増えた」と回答した企業が57.9%(大幅に増えた:16.4%、少し増えた:41.5%)となっているなど、その注目度の高さが良く分かるデータが出てきているのです。

ただ、ホームステージングの実施に関しては、プロの専門業者に依頼した場合、どれぐらいの費用がかかるのかが気になってしまうと思います。そこでこの記事では、プロによるホームステージングで空間がどう変わるのか、また作業を依頼する場合、いくらぐらいの費用を見込んでおけば良いのかをご紹介します。なお、記事内では、今すぐにでもできる簡易のセルフホームステージングの方法もご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

参考:ホームステージング白書2023

プロが実施するホームステージングと費用相場について

それではまず、ホームステージングがどのような施策なのかを分かりやすく解説するため、空室状態の部屋にホームステージングを施した場合、どのような変化があるのか、また専門業者にホームステージングの実施を依頼した場合、どの程度の費用がかかるものなのかについて解説していきます。

ホームステージングとは、空室状態の物件について、部屋の中に家具やインテリア、植物や照明などを配置することで、おしゃれな空間を作り出し、内見した人に良い印象を与えることで購入また賃貸の決断を後押しするという対策になります。家を購入するにしても、借りるにしても、最終決断までには物件の内見を行い、そこでの暮らしを具体的にイメージすることで「自分たちに合った物件なのか?」を確認するという工程を挟みます。ただ、空室状態のまま内見してもらった時には、内見者がそこでの暮らしをうまくイメージできない、また部屋のサイズ感が分かりにくいという問題が生じるため「悪くはないのだけど決め手がない…」など、早期の成約になかなか至らないというケースが多いのです。

ホームステージングは、物件のターゲット層をきちんと決め、その人たちが内見した時に最も良い印象を与えられるように部屋の中をコーディネートします。そのため、内見時には、そこでの明るい生活がイメージでき、成約を後押しすることができるわけです。さらに、物件の弱点を目立たなくさせるという効果も期待できることから、無理な値下げ交渉を防ぎ、高値での売却が実現する可能性も高くなります。

それでは、専門業者が実際にホームステージングを施した時、その物件はどのように変わるのでしょうか?以下に、実際のホームステージング実施例をご紹介します。

ホームステージングで物件の印象は劇的に変わる!

ホームステージングによる効果は、実際に対策を施した画像を見れば、その効果が一目瞭然です。以下は、何もない空間と、ホームステージング後を比較した画像です。

■ホームステージング前の空室状態の物件


上記は、空室状態の物件画像です。この物件は、かろうじて照明による演出ができていますが、空室状態の物件を見ても「悪くない部屋だ」という印象しか受けないのではないでしょうか?中には、「よくある物件だな」などと、良い印象を全く受けない方もいるかもしれません。

それでは、この物件に対してホームステージングを施すとどうなるのかも見てみましょう。

■ホームステージング後の物件


いかがでしょうか?ホームステージングを施した後の画像は、何もない空室状態の画像と比較すると、そこでの暮らしを具体的にイメージしやすくなっていて見ごたえがあると感じるのではないでしょうか?自分の趣味に合ったコーディネートが施されている場合、ワクワクした気持ちが湧いてきて、この物件を実際に確認してみたいと感じるのではないでしょうか?

プロのホームステージング会社による対策は、物件のターゲット層をきちんと割り出し、ホームステージャーと呼ばれる資格保有者が物件内のコーディネート計画を立てます。また、ホームステージングに使用される家具やインテリアなどに関しても、専門家がきちんとメンテナンスを施した良い状態の物品が使用されることになるため、空間の魅力を最大限にまで引き出すことができるようになるのです。

不動産の売却や賃貸を促進する手法として、ホームステージングへの注目度が高くなっている昨今では、家を売りに出す時に「自分でできないかな?」と考える人も増えています。また、仲介を担う不動産会社様でも、自社の従業員を使ってホームステージングを施すというケースが増えているとされるのですが、ホームステージングのプロが実施する対策は、やはり完成度の面で一歩も二歩も先を行くため、ホームステージングによる効果は大きな違いが生じると考えてください。

それでは、上記のような本格的なホームステージングを施す場合、どれぐらいの費用がかかるのかについても簡単にご紹介します。専門業者によるホームステージングでも、いくつかのプランが用意されているはずなので、ここでは一般的によくあるプランと実施する場合の費用をご紹介します。

ホームステージングのプランと費用相場について

日本でもホームステージングへの注目度が高くなっていることから、ホームステージングサービスを専門に取り扱う企業が増えています。ホームステージングは、インテリアコーディネートのように、依頼者個人のために空間の演出を行うのではなく、物件のターゲット層全体が魅力的に感じるようなコーディネートを実施します。ホームステージングは、あくまでも物件の早期売却や高値売却を実現するための対策となるため、特定の個人だけが気に入る演出を行う訳にはいかないわけですね。

それでは、専門業者にホームステージングの実施を依頼する場合、どれぐらいの費用がかかるのでしょうか?プロによるホームステージングの費用相場は、おおまかに15~30万円程度と言われています。現在はまだ、ホームステージングを実施できる専門家が少ないこともあり、欧米などと比較すると割高な価格設定になっていると言われるのですが、年々、ホームステージングのニーズが高まっていることもあり、この価格は下落していくと考えられています。

なお、ホームステージングにかかる費用については、「どこからどこまでの作業を依頼するのか?」によってかなりの価格差があるため、ここでは一般的によくあるプランとそれを依頼する際の費用感についてご紹介します。

  • 売却のアドバイスやコーディネートの提案のみのプラン
    家具の用意や設置作業は自分で行おうと考えている方向けのプランです。部屋を装飾するための家具などは用意出来るものの、魅力的に見える空間にするには、どのようなホームステージングを施せば良いのか分からないという人は多いで。ホームステージング会社の中には、ホームステージングの実施提案書などを作成し、家具の配置などのアドバイスをしてくれるというプランを設けている企業があります。アドバイスを参考に、自分たちで作業を行うという方法のため、ホームステージングにかかる費用を抑えることができます。このプランの費用については、アドバイスの内容や部屋数によって変わるものの、5万円前後が相場です。
  • 家具レンタルまで含めたホームステージングプラン
    ホームステージング作業一式を全てプロのホームステージャーに任せるというプランです。リビングやダイニング、水回りなどのホームステージングについて、提案書の作成や家具の搬入・配置、また部屋を飾るための家具、インテリアのレンタルなどが全て含まれています。なお、ホームステージング会社に作業を依頼する場合、家具のレンタル期間は、ほとんどの場合で3ヶ月以内となります。ホームステージングにかかる費用については、対策を施す部屋の数や内容によって変動しますが、15~30万円前後が相場となります。ホームステージングの効果が最も高いとされるリビングとダイニングに絞って作業を依頼する場合が15万円程度で、水回りや玄関など、広い範囲で対策を施してもらう場合、費用が加算されていくという感じです。

家具やインテリアを配置することで物件の魅力を引き出すホームステージングの費用は、上記のようになっています。ただ、昨今のホームステージング業界では、家具やインテリアを配置する前の作業として、ハウスクリーニングを請け負う、不要な家具などを一時的に預かる、仮想空間上でホームステージングを施すバーチャルホームステージングなど、幅広いサービスが登場しています。この辺りは、オプションサービスとなるため、取り扱っていない業者もありますし、依頼した時の費用も業者によって大きく異なります。

なお、2023年度に実施されたホームステージングについて、専門業者が実施したホームステージングの提供金額の割合については、以下のようなデータが出ています。以下は、ホームステージングサービスを提供する会社に「複数回答」にてアンケートを行った時の回答の割合となります。

  • 5万未満:17.9%
  • 5万~10万未満:37.4%
  • 10万~15万未満:31.7%
  • 15万~20万未満:23.6%
  • 20万~30万未満:27.6%
  • 30万~50万未満:17.9%
  • 50万~100万未満:11.4%
  • 100万以上:6.5%
  • その他:4.1%

これからも分かるように、ホームステージングは5~30万円の範囲で実施されているケースが多いようです。

参考:ホームステージング白書2023

費用をかけずにできる簡易のセルフホームステージングとは?

ここまでの解説で、ホームステージングがどのような取り組みで、専門業者に依頼する場合にどの程度の費用がかかるのかが分かっていただけたと思います。

日本におけるホームステージングは、まだそこまで長い歴史がないこともあり、ホームステージングを専門とする業者はそこまで多くありません。そのため、専門業者に対策を依頼するとなると、それなりのコストを覚悟しなければならないのです。

ちなみに、ホームステージング白書2023年によると、「ホームステージングの作業をした人は誰か?」という質問については、ホームステージング会社に依頼したという回答が25%だったのに対して、不動産会社が自社で行ったという回答が58%だったというデータがあります。つまり、現状、ホームステージングの実施に関しては「可能なら自分で実施したい」と考えている方が多いということでしょう。そこでここでは、今すぐにでも始められる簡易的なセルフホームステージングをいくつかご紹介します。

室内の掃除を徹底的に行う

ホームステージングは、空室状態の物件について、部屋の中に家具やインテリア、植物や照明を設置することで、素敵な空間に演出する方法というイメージが強いです。実際に、先ほど紹介したホームステージング前後の画像を見ればわかるように、プロがインテリアコーディネートした部屋は、そこでの暮らしなどがイメージしやすくなりますし、好みに合った物件なら「ここに住んでみたい」と感じることでしょう。

しかし実は、ホームステージングは、「家具などを配置する」という単純な対策を指しているのではなく、物件の早期売却や高値売却を目的として、物件そのものに実施される対策全般が広義の意味でホームステージングとなるのです。

物件の内見を実施する際には、お客様を物件内にお迎えするということになります。それなのに、物件内部が埃ぽかったり、キッチンに油汚れや水垢が残ったままになっているという状況では、内見者に良い印象を与えることなどできません。逆に、物件内部の掃除が行き届いていて、ピカピカで綺麗な状況なら、「大切に住んでいた」という印象を与え、物件そのものに良い印象を持ってもらうことができるようになります。

先程紹介したように、専門業者が実施するホームステージングでも、オプションとしてハウスクリーニングが用意されています。つまり、物件内の掃除は、ホームステージングを実施するうえで、非常に重要な要素となるのです。

照明の設置or切れている電球を交換

安価な割に物件内部の印象を大きく変えてくれる対策として、照明器具の設置もしくは交換という方法があります。なお、おしゃれで素敵な照明器具をわざわざ用意する必要もありません。

ホームステージングの基本!グリーンや照明による演出が重要とされる理由」という記事の中でも紹介していますが、部屋の明るさは不動産取引の成約に大きな影響を与えるとされているのです。暗い部屋と比較すると、明るい部屋の方が成約率が約20~30%程度高くなるとされているなど、不動産取引に好影響を与えるというデータもあるのです。

したがって、物件の内見を始める時には、各部屋に照明器具を必ず設置するようにしましょう。また、電球が切れている場所があれば、きちんと交換し、内見時はすべての照明を点けておくと良いです。照明の取り付けや交換は、数千円で大きな効果が期待できるわけなので、専門業者にホームステージングを依頼しない場合でも、必ず自分で行っておきましょう。物件の内見は、晴れた日の日中を狙ってやってくるわけではなく。曇りの日や夕方、夜などを希望する方もいるため、いつでも内見できる体制を用意しておきましょう。

水回りをホテルライクに

トイレ、洗面室、浴室などの水回りは、内見時に必ず確認するポイントになります。カビや水垢などを綺麗に落とすという掃除が非常に重要なのですが、もうワンランク印象を良くするためにも、ホテルライクな演出を施しておくと良いです。

例えば、最も簡単な方法として、トイレや洗面室にかけておくタオルを、普段使いしている物ではなく、清潔感のあるぶ厚いしっかりしたタオルに交換するだけで、空間の印象を大きく変えることができます。トイレや洗面室に置いてあるタオルは、使い古されてすり切れたものが掛けられているケースが多いのですが、そのままの状態で内見してもらった場合、「汚い…」「古い」といったネガティブな印象を与えてしまう可能性があります。

水回りのコーディネートは、ちょっとした工夫で大きく印象を変えられるので「ホテルライク」をイメージしながら少し良質な小物を配置してみると良いです。

上の画像の通り、ちょっとした小物を置くだけで、洗面台周りがおしゃれに見えるようになります。

香りのホームステージング

ホームステージングは、目に見える対策を実施するだけにとどまりません。昨今では、空間演出に「香りの演出」をプラスするという方法が人気になっているのです。香りの演出については、今すぐにでも簡単にできる対策となるため、ぜひ実施してみましょう。

人は、匂いによって、初めて会った人の印象が大きく左右される傾向があるという話は皆さんも耳にしたことがあると思います。実は、この現象については、住宅にも言えるのではないかと考えられていて、ホームステージング業界では「香りの演出」が当たり前に採用されるようになっているのです。

例えば、内見に行った物件にて、玄関を入った瞬間、かび臭さを感じたらその物件に良い印象を持つわけがありません。また、リビングなどを確認する際、食事後の臭いなどが残っていると、生活感がありすぎて、どこか嫌な気持ちになってしまう人が多いはずです。そのため、住みながらの家の売却では、内見の数時間前に家中の窓を開けて、空気を完全に入れ替えるといった対策が重要視されているのです。
そして、最近の不動産業界では、換気をして臭いを消すことは当然として、そこに爽やかなフレグランスの香りを漂わせておくという対策が行われるようになっています。あまり強い臭いは、人によって逆効果に感じてしまうことがあるため、物件内に入った時にかすかに感じる程度の爽やかな香りを選ぶと良いです。

フレグランス用のアイテムは、インテリアとして使用できるようなデザイン性が良いものも増えているので、雑貨店などで探してみてはいかがでしょう。

まとめ

今回は、不動産業界で年々その注目度が高くなっているホームステージングについて、プロのホームステージング会社に対策を依頼した場合、どのような空間を作ってもらえるのか、またどれぐらいの費用がかかるのかについて解説しました。

記事内でご紹介したように、専門業者にホームステージングを依頼する場合、実施計画の立案とアドバイスだけなら10万円以下と、比較的安価に対策を実施することができます。しかし、家具のレンタルなども含めて、本格的な対策を実施する場合には、15~30万円前後の費用がかかると考えておいた方が良いです。
昨今では、費用を抑える目的で、自社の従業員を使ってホームステージングを実施する不動産会社様も増えているようですが、インテリアやコーディネートに関する知識を持つ従業員がいない場合、効果的な対策にならないケースも多く、「ホームステージングは意味がない…」という印象を持っている人もいるようです。

しかし、的確な対策を施した場合、ホームステージングは物件の売却や賃貸に、非常に良い効果をもたらせているという調査データが出揃ってきています。過去に、自社でホームステージングを施して思うような効果が出なかったという場合は、一度専門業者に対策を依頼してみるのをおすすめします。