2025.08.12

家の売却方法と早く売るために実施するホームステージングの注意点

今回は、家の売却を検討している方に向け、主な売却方法の種類と家を早く、そして高く売るための販促手法として注目されているホームステージングの注意点をご紹介します。

家の売却を考えた時には、誰でも「できるだけ早く買い手を見つけたい!」と考えるはずです。家は、そこに存在しているだけで日々劣化が進行しているため、売却に時間がかかればかかるほど、家の価値が低下してしまいます。また、家は所有しているだけで固定資産税などの税金や管理費など、さまざまなコストがかかってしまうため、手放すと決めた時には「早く売る」ということがコスト面からも有利に働くのです。

しかし、空き家の増加が社会問題化している昨今の日本では、全国的に「家が余る」という状況になっていて、それなりに良い条件の中古住宅を売りに出したとしても、なかなか買い手を見つけることができない…となってしまうケースが増えていると言われています。そこで、中古住宅市場で注目され始めた手法が「ホームステージング」と呼ばれる対策です。ホームステージングは、もともと中古住宅市場が活発なアメリカで誕生した販促手法なのですが、簡単に言うと売りに出す中古住宅の部屋の中を新築のモデルルームのようにコーディネートすることで、内覧時の印象を良くするといった手法となります。ホームステージングを施すことで、内覧した人の購買意欲を高めることができるため、早期の売却や高値売却を後押ししてくれるとされているのです。

日本国内でも、物価高の影響などを受け、徐々に中古住宅市場が活性化しています。そこでこの記事では、「家を早く売りたい!」と考えている方に、どのような売却方法があるのか、また早く売るために実施するホームステージングの種類などについて解説します。

家の売却方法について

それではまず、家を売却するための主な方法について解説します。ちなみに、ここで紹介する方法については、住宅ローンの滞納などがない、一般的な売却方法となります。住宅ローンを滞納した結果「家を売らざるを得ない」という場合には、裁判所が介入して「競売」に掛けられるといった方法もありますが、このような売却方法はここでは除きます。

家を売却する方法については、大きく分けると以下の2つの種類が存在します。

  • 不動産会社による買取・・・不動産会社に直接家を買ってもらう方法です。
  • 不動産会社に買い手を見つけてもらう仲介・・・不動産会社の仲介のもと、買い手を見つけてもらうという方法です。

この二つは、「買主が異なる」という点に違いがあります。買取りの場合は不動産会社が買主になるのですが、仲介の場合は実際に住む人を仲介してもらうという方法です。それでは、それぞれの売却方法について、もう少し詳しく解説します。

高値での売却が期待できる『仲介』

家の売却方法として、多くの方がイメージする方法が『仲介』だと思います。仲介は、不動産会社に家の売却について相談し、買主を探してもらうという方法です。売主と買主を繋げてもらうという売却方法であるため『仲介』と呼ばれています。

不動産の取り引きでは、最も一般的と言える売却方法で、仲介で家の売却を進める場合、以下のようなメリットとデメリットがあるとされています。

■仲介のメリット
仲介で家の売却を進める場合のメリットは以下の通りです。

  • 買取と比較すると高値での売却が期待できる
  • 購入希望者から直接意見を聞ける(内覧者の意見を参考により高値での売却を目指せる)

仲介のメリットは、下で紹介する買取と比較すると「より高値での売却を目指せる」という点がメリットです。仲介による家の売却は、基本的に売却相場付近での取引が可能です。さらに、内覧者から家に対する意見や希望を直接聞くことができるため、購入検討者のさまざまな意見を取り入れ、より高値で売るための工夫を施すことも可能になります。
さらに、立地条件や物件の状態、売り出し時期が良ければ、相場よりも高い価格で売却することも期待できます。仲介による家の売却は、ほとんどの場合で買取よりも高く売却することができるとされています。

■仲介のデメリット
一方、仲介による家の売却には、以下のようなデメリットが存在するとされています。

  • 売却まで時間がかかりやすい
  • 契約不適合責任(旧「瑕疵担保責任」)が免責されない
  • 内覧対応に手間や時間がかかる
  • 仲介手数料がかかる

仲介による家の売却は、時間や手間、買取の場合には不要な仲介手数料などのお金がかかる点がデメリットです。

仲介による家の売却は、買主を見つけるまで終わることがありません。一般的には、3~6カ月程度で売却できると言われていますが、物件の状態や売り出し方によっては、買主が見つかるまでに1年以上かかる場合もあるとされています。
もちろん、仲介による売却は、手間がかかる分「高値で売れる」というメリットがあるため、仲介手数料分を鑑みても最終的な手取り額は仲介の方が多くなるでしょう。ただ、仲介手数料は、売却額を受領する前に支払わなければならないため、その点は注意が必要です。

そして、仲介による家の売却に関する最大のデメリットは「契約不適合責任が免責されない」という点です。契約不適合責任とは、家の売買契約が完了して引き渡した後でも、家の状態に責任を持たなければならないといった制度です。買主が購入した家に住み始めてから、契約内容に含まれていない劣化や欠陥が発覚したという場合、損害賠償や契約解除などに応じなければいけないということが、売主側の責任となっている制度です。

早期の売却が期待できる『買取』

次は『買取』『不動産買取り』などと呼ばれる売却方法です。これは、先ほど紹介したように、不動産会社に直接家を買い取ってもらうという手法となります。仲介ではなく、買取で家を手放す場合、以下のようなメリットとデメリットがあります。

■買取のメリット
家の売却方法として『買取』を選ぶ場合のメリットは以下の通りです。

  • 仲介と比べて売却期間が短い(早い場合は、数日から1週間以内で売れる)
  • 内覧対応などが不要なので、売却活動の手間が少ない
  • 売却に関する条件(価格や時期)がすぐに決まるため、住み替え計画が立てやすい
  • 契約不適合責任(旧「瑕疵担保責任」)は原則不要
  • 事前にリフォームや修繕を行う必要がない
  • 築古物件でも売却できる
  • 仲介手数料が不要

買取による家の売却は、売却期間が圧倒的に短くなるという点がメリットです。場合によっては、売買契約から決済、引き渡しまでの一連の流れが、数日から1週間程度で完了します。

さらに、買主が不動産会社となるため、先ほど紹介した契約不適合責任が免責されるという点も大きいです。築年数が経過している物件でも、売却活動の前に修繕やリフォームを施す必要がなく、そのままの状態で買い取ってもらうことができるため、手間なく家の売却が完了する上、その後のトラブルの心配もないのです。また、買取は、不動産会社との直接取引となるため、仲介手数料なども発生しません。

物件の状態によっては、家を売るためにさまざまなコストをかけなければならないケースがあるのですが、不動産会社に直接買い取ってもらう場合、そのコストや手間、時間をかけなくて済むため、仲介よりもメリットがあると考える人も多いです。

■買取のデメリット
一方、買取という売却方法の場合、仲介による取引と比較すると、安い価格で売却しなければならないという点がデメリットとなります。

不動産会社は、買い取った物件を再販して利益を得ます。つまり、買取という取引は、不動産会社にとっては「仕入れの場」という扱いになるため、自社の利益のことを考えて、周辺相場よりも安い価格が提示されるのです。一般的には、仲介で売却した時の相場価格と比較して、7割程度の価格が提示されると言われています。なお、不動産会社側からすると、買い取った家を再販するため、リフォームや修繕にコストをかけなければならないため、当然の価格提示となります。

ちなみに、物件によっては、買取ができないケースもあるので注意しましょう。不動産の買取業者は、建物が破損している、室内の使用状況があまり良くないという物件でも、買取可能としているケースがほとんどです。しかし、見るからに老朽化していて活用が難しいと考えられるような物件や再建築不可物件の場合、買取を断られることもあるようです。

仲介と買取のいいとこどりをした『買取保証』

3つ目は『買取保証』と呼ばれる売却方法です。これは、不動産買取を行っている不動産会社が設けているサービスの一つで、仲介と買取を組み合わせた家の売却方法となっています。そのため、家の売却方法の中でも、仲介と買取のいいとこどりをしているなどと解説されていることが多いです。

買取保証は、家の売却を決めて不動産会社に相談すると、最初は仲介による売却活動を進めてくれるのですが、一定期間で売れなかった場合には、不動産会社に買取してもらえるという仕組みになっています。仲介の間に買い手が見つかれば、高値で売却することができますし、何らかの理由で売却に期限がある場合、最終的には不動産会社に買い取ってもらえるというサービスになっているのです。それでは、買取保証のメリットとデメリットについてもご紹介します。

■買取保証のメリット
まずは、買取保証のメリット面からです。

  • 仲介で買い手が見つからなくても、一定期間が経過すれば必ず売れる
  • 仲介の間に買い手が見つかると、高値で売却できる

買取保証は、「最終的には、不動産会社が責任をもって買い取ってくれる」という保証がある状態です。つまり、高値での売却を目指し、仲介による売却活動を安心して実施することができるのです。特に、転勤などを理由に期日までに絶対に家を売りたいなどという方の場合には、最終的に不動産会社に買取してもらえるので、安心感があると思います。

■買取保証のデメリット
一方、買取保証には、以下のようなデメリットがあります。

  • 仲介の間、まともに売却活動をしてもらえない可能性がある(買取を前提としているため)
  • 仲介の間に売却できなければ、相場よりも安い価格で手放す結果になる

買取保証は、売却活動を依頼する不動産会社選びが非常に重要です。この不動産会社選びを間違ってしまうと、かえって損をしてしまう可能性まであると言われています。

買取保証サービスを展開している不動産会社の中には、最初から「安く買い取る」ということを目的に、お客様に買取保証を勧めている場合があるのです。このような業者は、仲介での売却活動期間は、わざと売れないように「囲い込み」のような状況を作り出し、買取まで持っていこうとするわけです。不動産会社側から見ると、条件の良い家を安値で仕入れることができると考え、仲介ではなく買取保証を勧めている感じです。
このような不動産会社に相談した場合、本来はもっと高値で売れた物件が安値で買い取られる、仲介の期間中に実施した対策がすべて無駄になるなど、売主にとっては最悪な結果を招きます。

仲介で家を早く売るにはホームステージングが有効

家の売却方法を確認してみると、高値での売却を希望する場合は、仲介による売却活動が正解のように思えますね。しかし、仲介による家の売却は「買手が見つかるまでに時間がかかる」という点が大きな懸念点となります。

そこで、昨今の中古住宅市場では、早く家の売却を完了させるための方法としてホームステージングが注目されているのです。ホームステージングは、先ほど紹介したように、家を売りに出す際、室内を家具やインテリア、照明や植物を配置することで素敵な空間に演出し、内覧に来た人に良い印象を与えるという対策になります。家の売却では、住みながら家を売却するケース以外は、空室状態で内覧してもらうことが一般的ですが、空室状態の物件を確認しても、部屋のサイズ感がつかみにくい、入居後の生活をイメージしにくいなどの問題があり、なかなか成約まで至らないケースが多いのです。

それでは、仲介による家の売却でも、早く買手を見つけるにはどうすれば良いのでしょうか?ここでは、一般的に言われている、早く家を売るための対策と、ホームステージングの効果などについて簡単にご紹介します。

仲介で早く家を売るためのポイント

まずは、一般的に言われている仲介で早く家を売るためのコツをご紹介します。仲介は、高値での売却が期待できるものの、買手が見つかるまでに時間がかかりやすいというデメリットがあります。家は、所有しているだけでコストがかかるため、誰でも可能な限り早く売却したいと考えるはずです。

そこで、家を早く売りたいという方は、以下のようなポイントを意識してみると良いです。

  • 複数社に査定を出して比較検討する
    家の売却において、仲介を依頼する不動産会社の比較は非常に重要です。売却活動への熱心さや、そもそも販売スキルは会社によって格差があるからです。したがって、家の売却を考えた時には、複数の不動産会社に相談し、担当者の対応や査定額を比較検討しましょう。この時、低すぎる査定額や高すぎる査定額を提示する不動産会社は注意が必要です。高い分は良いのでは…と考えますが、わざと売れない価格で売りに出し、最終的に買取に持っていこうと考えられている可能性があります。基本的には、エリアの相場価格に近い業者ほど信頼しやすいです。なお、不動産会社を選ぶ際には、物件の特性に合わせた形の媒介契約を結ぶことも重要です。
  • 売却に必要な書類は事前に揃えておく
    家の売却では、媒介契約や売買契約、引き渡しなど、手続きが多くなる分、必要となる書類も多いです。そのため、各手続きをスムーズに進められるように、必要書類を事前に収集しておくことも家の売却を早く完了させるコツになります。どんな書類が必要になるのかは、不動産会社に確認すれば教えてもらえます。
  • 物件広告を充実させる
    家を売却するためには、物件が売りに出されていることを多くの方に知らせなければいけません。また、物件情報を見た人に良い印象を与えることも大切です。つまり、物件広告を充実させることは、家を早くするための重要なコツの一つになるのです。特に、インターネットを使って物件検索をするようになった現在では、インターネット広告の活用が非常に重要です。魅力的な写真や詳細な物件情報を掲載することで、購入希望者の関心を引き、内覧につながるように工夫しましょう。
  • 内覧は積極的に協力する
    家の内覧は、購入希望者が最終判断をするためのものです。つまり、この段階で良い印象を与えるかどうかは、家の売却を左右する非常に重要なポイントになるのです。そもそも、内覧にまで来ているということは、物件の立地や売り出し価格などについてある程度納得していただけていることを意味しています。そのため、売主側からすると、内覧が購入の最後の後押しをできる場になるのです。したがって、家の売却を考えた時には、徹底的に清掃したり、設備が破損していないか確認するなど、積極的に協力するようにしましょう。

仲介で家を早く売るためには、上記のようなポイントを意識すると良いです。そして、広告の充実や内覧部分の対策として、昨今ホームステージングが注目されています。

ホームステージングは物件広告、内覧に好影響を与える

ホームステージングは、不動産の売買や賃貸を促進するための手法として注目されています。空室状態で売りに出すのではなく、部屋の中に家具やインテリア、照明や植物を配置して、物件を魅力的に演出するというサービスになります。ホームステージングが施された物件は、新築のモデルルームのような素敵な空間になるため、購入希望者が内覧した時に「ここに住みたい!」と思わせることができ、早期かつ高値での成約が期待できるとされているのです。

実際に、日本ホームステージング協会が毎年行っている調査によると、ホームステージングは家を売りに出した時の広告や内覧において、大きな成果が見られています。

引用:ホームステージング白書2024年

上図の赤枠部分を見てもらうとわかるように、ホームステージング実施後の反応として、「成約率が上がった」という回答がなんと4割を超えているのです。さらに、「内覧者数が増えた」「反響数が増えた」という回答は、どちらも3割を超えていて、広告にホームステージング後の画像を利用することで大きな効果が見込めることがよくわかります。

引用:ホームステージング白書2024年

こちらは、ホームステージングを実施した人が、ホームステージングのメリットと感じているポイントについてです。これからも、ホームステージングは内覧時の印象を良くすることができるため、成約までの期間を短縮することができているということが分かります。

さらに、注目すべきポイントは「家賃・販売価格を上げても成約できた」という点をメリットとしている人が3割近くいるという点です。誰でも、大切なマイホームを売却するなら、出来るだけ高く売りたいと考えると思うのですが、ホームステージングはその希望をかなえられる可能性が高いことを示しています。

家の売却におけるホームステージングの注意点

それでは最後に、仲介で家を早く、高く売りたいと考えている方に向け、ホームステージングを実施する際に注意しておきたいポイントをご紹介します。

前項でご紹介したように、家の売却においてホームステージングは、内覧に誘導するための広告を充実させることができる、さらに内覧時により良い印象を与えることで成約に繋げることができるというメリットが期待できることが分かりました。ただ、一口に「ホームステージング」と言っても、期待する効果によってコーディネートの方法が違ってくるのです。

ホームステージングは、大きく分けると「内覧に誘導することを目的としたホームステージング」と「内覧者が契約を決めるためのホームステージング」の2種類に分けることができます。

一つ目の「内覧に誘導することを目的としたホームステージング」は、インターネット上の広告を充実させるために実施するホームステージングですね。家の購入を考えた時には、まずインターネット上の物件検索サイトを使って、自分たちの理想に近い家を探すという方法が一般的になっています。そのため、家の売却時には、ネット上に掲載する物件情報を充実させなくてはならなくなっているのですが、物件広告の充実を目的としている場合、「閲覧者の目を引く」ということを重視してホームステージングを実施しなければならないのです。物件広告の充実を目的としている場合は、「生活のしやすさ」などよりも「部屋が素敵な空間に見えるようにコーディネートする」ということが最優先となります。

一方、「内覧者が契約を決めるためのホームステージング」については、内覧者に対して、部屋の使い方や住み方を提案するようなコーディネートをしてあげることが大切になります。この場合のホームステージングは、内覧者が実際に自分が住んでいるイメージが湧くように家具などを配置してあげる必要があります。日常生活で普段使いすることが想定されるようなアイテムなども配置してあげることで、家事動線などもイメージさせることができます。また、内覧者が、物件内でどのような部分に不安を感じるのかを予測し、それをホームステージングで払しょくすることができれば、より成約に近づくことができるでしょう。

ホームステージングは、目的に合ったホームステージングを上手に使い分けることで、より一層、ホームステージングの効果を実感することができるはずです。なお、広告用のホームステージングについては、テイストの異なるステージングを複数実施してもらう事がリアルでは難しいため、仮想空間上でホームステージングを施すバーチャルホームステージングなどの活用も検討すると良いです。

まとめ

今回は、家の売却方法の種類と、家を早くそして高く売るための対策として注目されているホームステージングについて、実施時の注意点をご紹介しました。

家を売却する場合でも、不動産会社に買主を探してもらう以外にも、直接買い取ってもらうという手段があり、近年人気になっています。不動産会社に直接家を買い取ってもらう場合、売却価格が安くなるものの、売却活動にかかる時間や手間、コストを削減できるため、総合的に考えると「お得なのでは?」と考える人も多いのだと思います。特に、転勤や離婚など、何らかの理由で「期日までに家を売らなければならない」という方の場合は、購入希望者との交渉に時間がかかる仲介という取引が煩わしく感じてしまう可能性もあるのです。

しかし、どうせ家を売るのであれば「できるだけ高く売りたい!」と考えるのが普通です。このような時には、ぜひホームステージングの導入を検討してみてはいかがでしょう。記事内でご紹介したように、ホームステージングを実施することで、ネット上の検索サイトで目立つことができるため、売却活動にかかる期間を大幅に削減することが期待できます。さらに、内覧時の印象を大幅に良くすることで、無理な値引き交渉などを受けることもなく、希望する価格で売却することができるかもしれません。