汚いマンションの売却は難しい?スムーズに売るにはホームステージングが有効
ここ数年、中古マンションの価格上昇が続いているというニュースを見聞きする機会が増えていると思います。実際に、大阪市の中古マンション市場は、この9年間で価格が約6割も上昇しているといったデータもあるなど、マンションの売却を考えている方にとっては期待が膨らむ状況となっています。
ただ、マンションの売却だけに限りませんが、不動産の売却価格は、物件そのものの状態に大きく左右されることから、どのようなマンションでも高値で売却できるかというと、そうではないという点は注意が必要です。特に、長年住み続けたマンションの売却を検討した時には、「うちのマンションはかなり汚れが目立つけど、本当に売れるのだろうか…?」と不安に思われる方も少なくないと思います。
それでは、生活感があったり、見た目が汚かったりするマンションは、売却するのが難しくなるものなのでしょうか?結論から言ってしまいますが、マンションの売却に関しては、どのような状態のマンションであっても、売却できる可能性が大いにあるので、その点は安心してください。マンションの売却時に大切になるのは、物件の「汚れの度合い」をきちんと見極め、それに合った売却戦略を選ぶということです。場合によっては、高額なリフォーム費用をかけなくとも、少しの手間で速やかに買い手を見つけられるケースもあるのです。そこでこの記事では、「汚いマンションをスムーズに売却する方法」について解説します。

汚いマンションの売却が難しくなる要因
冒頭でご紹介したように、マンションの売却については、「長年住み続けているから汚い」「生活感がある」などといった物件については、売却が難しくなるという印象を持っている方が多いと思います。
実際に、国土交通省の「住宅市場動向調査報告書」を見ても、見た目が汚いマンションの場合は売却がやや難しくなると考えても良いデータが出ています。例えば、令和4年度の調査報告によると、2021年4月~2022年3月の間に分譲マンションへの住み替えを決めた世帯については、物件の取得理由として「新築だったから(58.0%)」という理由が最も多いという結果が出ています。中古マンションを選択しなかった理由についても、「新築のほうが気持ち良いから(57.3%)」という回答が最多で、その他の中古マンションを選ばなかった理由として「見た目が汚いなどが不満だった」という回答もあるのです。ちなみに、この回答の比率については、平成30年から令和4年までの5年間を見ても、約10~15%の割合を常に占めていて、一定以上の方がマンションの状態を嫌って購入を避けたという結果が出ているのです。これからも分かるように、物件の室内や共用部が汚いなど、状態が悪い物件の場合は、新築物件よりも売りにくくなるとみて間違いないでしょう。
それでは、汚いマンションの売却が難しくなる理由について、もう少し詳しく見ていきましょう。
参照:令和4年度住宅市場動向調査報告書
中古物件の購入をためらう理由について
それでは、汚いマンションなど、中古物件の購入をためらっている方が気にしているポイントについてもう少し詳しくご紹介します。
国土交通省の「令和6年度 不動産市場動向調査」によると、中古住宅の購入をためらう理由としては、「リフォームやメンテナンス費用で結局割高になると思ったから」「隠れた不具合が心配だったから」「耐震性や断熱性など品質が低そうだったから」などが上位を占めていて、購入希望者側は見た目以上に、その裏に隠れている物件のリスクを警戒しているということがよくわかります。
見た目が汚い物件は、買い手側が物件の品質に疑いを持つため、以下のような理由などが原因で敬遠され、購入を見送られている可能性があるのです。
■隠れた不具合があるのではないか
物件の内覧に足を運んだ際、壁に水染みやカビが繁殖しているなど、目に見える汚れが残っていた場合、単に「汚い」という悪印象を与えるだけでなく、以下のような問題を疑われます。
- 給排水管に漏水があるのでは…
- 表面だけでなく、内部の構造部分も腐食しているのでは…
目に見える汚れは、見えない部分の重大な不具合を買い手側に連想させてしまいます。その結果、物件への信頼感が失われてしまい、購入の候補から外されてしまう可能性があるのです。
■写真の段階で購入候補から外される
今の時代、賃貸物件探しだけでなく、不動産の購入時にも不動産検索サイトで物件探しを始めるという方がほとんどです。不動産検索サイトで、住宅に求める条件を指定すれば、売りに出されている物件情報がピックアップされるため、物件の画像などを確認し、魅力的に感じた物件に内覧予約を入れるという流れになるのです。
このような不動産購入の流れを見ると、購入希望者が最初に目にする物件の写真が非常に重要であるということが良く分かるはずです。例えば、不動産検索サイトに、荷物が散らかった状態の写真や汚れた内装の写真を掲載した場合、それだけで購入候補から外されてしまい、内覧の機会すら得られないという状態になってしまうのです。
■価格交渉やローン審査で不利になる
築年数が経過して、汚れが目立つ物件の場合、物件の審査価値の面でも落とし穴が待っている可能性があります。例えば、室内の状態が悪い物件の場合、買い手からの値下げ交渉の格好の材料となるのです。購入希望者側は、購入後のリフォームやハウスクリーニングなどの出費を想定するため、売主側の希望価格をそのまま飲むようなことはほとんどないでしょう。物件については「状態が悪い」という明確な弱点があることも事実なので、「値下げできないなら他の物件を探す」などと、かなり強気の交渉をされることになるでしょう。
この他にも、管理状態が悪いとみなされるような汚いマンションの場合、物件の資産価値が低下してしまうため、金融機関のローン審査に悪影響を与えてしまう可能性があるのです。資産価値の評価が下がると、買い手側が住宅ローンを借りにくくなり、売買が成立しにくくなるということも想定できます。
上記の通り、汚いマンションは、物件そのものの状態が悪いとみなされてしまうことで、売却が難しくなる可能性がどうしても高くなります。したがって、スムーズな売却を考えた時には、第一印象を整えるということが第一歩になると言えるでしょう。
汚いマンションを売却する方法
それでは汚いマンションを売却するにはどうすれば良いのかについても見ていきましょう。マンションの売却に関しては、主に以下の二つの方法が存在します。
- 不動産会社に直接買い取ってもらう
- 不動産会社に仲介を依頼して買い手を見つけてもらう
ここでは、上記の二つの方法について、それぞれの特徴などをご紹介します。
不動産会社に直接買い取ってもらう
一つ目は、不動産会社に直接買い取ってもらうという方法です。この場合、マンションに汚れや不具合などが存在していたとしても、原則的に現状の状態のまま引き渡しできるため、スムーズに売却することができるという点が大きなメリットになります。
売主としては、新居を決め、必要な荷物を部屋から出してしまえば、そのままの状態で不動産会社に買い取ってもらえます。部屋の汚れを落とすクリーニングや、破損や不具合を修繕するリフォームについては、購入後に買主である不動産会社が手配して実施することになるため、売主側はマンションの売却に係わる手間がほとんどなくなります。
ただし、マンションを購入する不動産会社は、『再販』を目的に物件を購入するため、その後のクリーニングやリフォーム、維持管理や業者の利益などが経費として計上されて買取価格を決めます。そのため、マンションの市場価格よりも安い価格で売却することになるということです。一般的には、下で紹介する仲介で売却する方法と比較すると、6~8割程度の価格で売却する形になるとされています。
不動産会社に直接買い取ってもらうという方法は、「とにかく早く手放したい」「汚いところの掃除や破損部分の修繕にかかる手間を省きたい」という考えを持っている方にとってはおすすめですが、高値での売却を目指しているという方には不向きな取り引きと言えます。
不動産会社に仲介を依頼する
二つ目は、不動産会社に仲介を依頼して、買い手を見つけてもらうという方法で、皆さんがイメージする不動産売却の流れの通りです。この場合、市場価格での取引を目指すことになるため、不動産会社に買い取ってもらうという方法と比較すると、高く売れる可能性がある点がメリットです。
ただ、先ほど紹介したように、汚いマンションというのは、「さらなる問題が潜んでいるのではないか…」と疑われてしまい、購入を避けられる可能性があります。したがって、スムーズな売却を希望するのであれば、買い手にとってより良いマンションに感じてもらえるように、事前に手入れをしなければならないのです。
特に、築年数が経過した築古マンションの場合、物件そのものが「大事に住まれていたのだな」ということがきちんと伝わるようにすることが大切です。汚れやキズが残ったままの状態だと、悪印象がどうしても残ってしまうことになるので、マンションの売却活動を進める前に、汚れやキズを可能な限り取り除き、物件が最も魅力的に見えるような状態にしなければいけません。
当然、前に住んでいた人の生活感なども消し去り、できるだけ前入居者の存在を感じさせないようにすることも大切です。なお、汚れやキズの除去など、事前の準備をしっかりと実行したものの、なかなか買い手が付かない…というケースや、そもそも「とにかく早く売りたい」というケースでは、販売価格について相場よりも下げて売りに出すという方法も選択肢の一つになるでしょう。
汚いマンションの売却について、不動産会社に仲介を依頼するという場合、やはり第一印象を整えるということが第一歩になります。そのためには、以下のような方法で、室内のクリーニングなどを実行すると良いでしょう。
■自分で掃除をする
中古の不動産を売却する場合、室内をできる限り綺麗に掃除しなければならないということは皆さんも理解できると思います。汚れたままの状態で売りに出したとしても、それ以上の問題が潜んでいるのではないか…と疑われてしまい、購入を敬遠される可能性が高くなります。
ただ、「マンションの売却のため、綺麗の掃除しよう!」と決意したとしても、「どこまで掃除しなければならないの?」という点に疑問を感じる方も多いです。物件の掃除については、始めて見るとあちこちが気になり始めるもので、掃除の範囲が際限なく広がってしまい、いつまでたっても売却の準備が完了しないことに途方に暮れる可能性もあるのです。
実は、内覧時に「綺麗なマンションだ」と思ってもらうためには、重点的に綺麗にしておきたいポイントというものが存在します。したがって、自分で掃除を実行するという場合、以下のようなポイントを重点的に綺麗にしていくと良いです。
- 玄関
- キッチン・バス・洗面・トイレなどの水回り
- 鏡や窓ガラスなどのサッシ周り
上記の3つのポイントをしっかりと綺麗にしておけば、古臭さや雑に扱われていたのではないか…と感じさせる可能性を格段に減らすことができます。玄関は、内覧時の第一印象を決めるポイントになりますし、水回りは重点的に確認されるポイントになるので、これらの部分を綺麗にしておけば、物件の印象が良くなります。また、窓や鏡を綺麗にしておけば、自然光を取り入れ室内で反射することで明るさを維持することができ、ポジティブな印象を持ってもらいやすくなります。
最近では、ホームセンターやドラッグストアで、本格的な掃除アイテムが販売されているので、自ら掃除を行うという方法でも、想像以上に綺麗にすることができるでしょう。
■自分でできない場合はプロに依頼する
最近では、ホームセンターやドラッグストアで、本格的な掃除アイテムを手に入れられることや、掃除のノウハウを細かく説明してくれている動画などが存在するため、掃除を自分ですることも難しくなくなっています。しかし、家中を綺麗に掃除するとなると、やはり時間と手間がかかってしまうという点が問題になります。マンションの売却活動は、日常生活と並行して進めなければならないため、掃除のための十分な時間を確保することが難しく、いつまでたっても売りに出せない…という状況に陥る可能性もあるのです。
したがって、自分たち家族で物件内を掃除することが難しいと考える場合、プロのクリーニング業者に掃除を依頼するのも一つの手です。費用的には、どの部分の掃除を任せるのかによって変わりますが、10万円前後の予算を見ておけば、売却に有利な状態まで綺麗にしてくれると思います。ハウスクリーニング業者に依頼すれば、自分で掃除するよりも、短時間でよりきれいになるので、物件の売却がスムーズに進むかもしれません。
リフォームまでは必要ない?
築古マンションや、汚れが目立つマンションの売却を考えた時には、少し掃除したくらいでは綺麗にならないし、「いっそリフォームをかけた方が売れるのでは?」と考える方も多いです。
確かに、給湯器やキッチン設備、お風呂の設備などに関して、既に耐用年数が近くなっているほど老朽化しているという場合、売却活動の前に最新の設備に交換するという対策は、売却を有利に進められる可能性もあります。しかし、売却前のリフォームに関しては、必ずしも売却の手助けになるとは限らないという点に注意が必要です。
これについては、以前別の記事で解説していますが、そもそも中古住宅の購入を検討している方は、「購入後のリフォーム」を前提に考えている方が多く、後から自分の理想に合わせてリフォームしたいと考えているのです。そのため、売主側が良かれと思って実行したリフォームが、買主の好みと合わない場合、費用をかけたのに余計に売れなくなる…という結果に繋がる可能性もあるのです。また、リフォームにかけた費用を上乗せして売却しようとすれば、相場価格よりも高くなってしまう可能性があり、リフォームが売れない理由になることも考えられるのです。
中古住宅の売却に際しては、リフォームが必ずしも効果的ではない時代になっているため、仲介を依頼する不動産会社に相談しながら、その必要性を判断するようにしましょう。基本的には、物件の見た目を良くする掃除やステージングに力を入れ、リフォームなどに関しては、購入者の意思で実行してもらうという方法が良いと思われます。
関連:マンション売却のためのリフォームは不要!売却を成功させたいならホームステージングがおすすめ!
汚いマンションをスムーズに売却するにはホームステージングが有効
ここまでの解説で、汚いマンションの売却が難しくなる理由や、買い手を見つけるために注意すべきポイントなどが分かっていただけたと思います。
汚れやキズが残るマンションは、単に「汚いから買いたくない」と思われているのではなく、表面が汚れているのなら「その先にさらなる問題があるのではないか?」と考えられ、中古物件を探している方から敬遠されているのです。つまり、汚いマンションの売却を考えた時には、そのままの状態で売却するのではなく、内覧時の第一印象ができるだけ良くなるようにするということが最も大切になると考えられるのです。
そして、汚いマンションの第一印象を良くするための方法としておすすめできるのがホームステージングです。ここでは、汚れやキズが残るマンションについて、ホームステージングを実施することでスムーズに売却できるようになるといえる理由について解説します。
ホームステージングは「掃除や修繕」も対策に含まれている
ホームステージングは、不動産の売却や賃貸を促進するための方法として、不動産業界で注目を集めています。インターネットでホームステージングについて検索してみると、物件の高値売却や早期成約を実現するため、物件内に家具やインテリア、植物や照明を配置することで、素敵な空間に見えるように演出する方法と紹介されていることが多いです。もう少し簡単に言うと、新築住宅の販促のために用意するモデルルームのような空間にコーディネートすることで、内覧した人に「ここに住んでみたい!」と思わせ、早期の成約を実現する方法とされています。
これだけを見ると、長年住み続けたことで汚れやキズが目立つ物件の売却にはあまり関係がないのではないか…と感じる方も多いかもしれません。しかし、ホームステージングは、物件内に家具などを配置して、素敵な空間を作るという単純な対策ではないのです。ホームステージングは、物件の「高値売却」や「早期成約」を目的とした販促手法で、それに寄与すると考えられる対策全般が実行されるのです。実際に、2024年に実施されたホームステージングについては、以下の通り、家具やインテリアの配置以外にもさまざまな作業が実施されていることが分かります。
上記の通り、ホームステージングは、家具などの配置だけでなく、室内の清掃やリフォーム、不要家財の回収など、さまざまな作業を行ってもらうことができます。この中でも、築年数が経過した汚いマンションの売却を考えた場合、ハウスクリーニングや不用品の回収、破損部分の修繕など、物件の第一印象を良くするためのさまざまな作業をまとめて依頼することができるとわかります。
上でも解説していますが、汚いマンションの売却が難しくなるのは、汚れやキズなどの表面的な問題ではなく、目に見えない構造部分に深刻な問題が発生しているのではないかと疑われる事が大きな理由となっています。つまり、ホームステージングにより、それらの悪い部分を解消し、第一印象が良くなれば「築年数は経過しているけど、大切に住んでいた家なのだ」と思ってもらうことができ、スムーズに買い手を見つけることができるかもしれないのです。
ホームステージングは綺麗に掃除したうえで素敵な空間を作り出せる
ホームステージングは、プロの手によるハウスクリーニングやキズの補修などを実行することで、綺麗で清潔な空間を作り出すことができます。さらに、ホームステージングの場合、単なるハウスクリーニングにとどまらず、内覧者が「ここに住んでみたい」と思うような、素敵な空間にコーディネートしてもらうことができるのです。例えば、以下のような感じです。
■事例①

■事例②

上の画像の通り、ホームステージングの場合、物件内を単に綺麗にするだけでなく、より魅力的な空間に見えるようにコーディネートしてもらうことができます。そうすることで、内覧時の第一印象が良くなりますし、物件の弱点なども目立たなくすることができるので、高値での売却や早期の成約が期待できるのです。
ホームステージングの効果について
上述の通り、ハウスクリーニングや破損部分の修繕など、物件の印象を良くするための対策全般を実施してもらえるホームステージングは、築年数が経過した中古物件や汚いマンションの売却をスムーズに進めてくれる方法になると言えます。
実際に、中古住宅の売却におけるホームステージングは、以下のように、売主にとって非常にありがたい効果が認められているのです。
■ホームステージング実施前との比較・成約までの期間
引用:ホームステージング白書2024年
2024年度の不動産売買部門におけるホームステージングについては、対策を実施するかどうかを決める基準として「売却しにくい物件に実施する(43.4%)」という回答が一位になっています。売却しにくい物件とは、駅から遠いなどの立地条件が悪い、築年数が経過した築古物件などを指しているのですが、一般的に「売却することが難しい」と考えられる物件に多くのホームステージングが実施されていたのにかかわらず、上のグラフの通り、ホームステージングを実施することで、成約までの期間が短縮できたという回答が約7割に達しているのです。つまり、ホームステージングは、汚いマンションなど、条件の悪い物件の売却時には、非常に効果的な対策になると言えるのではないでしょうか?
まとめ
今回は、マンションの売却の中でも、買い手を見つけることが難しいとされる汚いマンションの売却について解説しました。
記事内でご紹介したように、汚れやキズが目立つような汚いマンションというのは、内覧時の第一印象がどうしても悪くなってしまうため、なかなか買い手が見つけられないという状況になりやすいです。これは、「汚い物件はイメージが悪い」という当然の問題もあるのですが、実は、表面的な汚れが目立つような物件は、目に見えない場所の劣化がさらに進んでいるのではないかと疑われてしまうことも大きな要因となります。
そのため、汚れやキズなどが目立つマンションの売却を考えた際は、掃除や修繕など、内覧者の第一印象を良くするための対策を実行することが大切です。そして、そのための対策としては、ホームステージングと呼ばれる手法が最も効果的と言えるので、ぜひ参考にしてみてください。
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