空き家にすると劣化スピードが速くなる理由と対策を紹介
近年の日本では、年々増加する放置空き家が社会問題となっています。この記事をご覧いただいている方の中にも、親が住んでいた実家を相続したものの、その取扱いに困っているという方も少なくないと思います。
核家族化が進む日本では、親世代と離れて暮らす方が増えていて、実家を相続することになった際には、既に離れた場所にマイホームを所有していて、実家を相続しても誰も住む人がいない…といった状況になるケースが珍しくありません。不動産は「大切な資産である」という意見もありますが、家は所有しているだけでさまざまなコストがかかってしまうことになるため、誰も住まない空き家の所有は、大きな負担となってしまうことも珍しくないのです。
そして、現在、空き家の取り扱いに困っているという方の中には「家は空き家状態の方が劣化スピードが速くなる」という情報を耳にして、本当なのだろうかと疑問に感じているという方もいるのではないでしょうか?この点について、結論から言ってしまいますが、空き家状態で放置されている家は、人が住んでいる状態の家と比較すると、劣化しやすい傾向にあるというのは事実です。
そこでこの記事では、空き家状態になるとなぜ劣化スピードが速くなるのか、その理由や対策について解説していきたいと思います。また、空き家の取り扱いに困っているという方に向け、有効な活用方法などについても解説します。

空き家にすると劣化スピードが速くなる理由
冒頭でご紹介しているように、空き家が居住中の家と比較すると、劣化スピードが速くなる傾向にあるというのは事実です。空き家の劣化が早くなる理由を一言で説明すると「人が住んでいないから」に他なりません。
それでは、人が住んでいないことにより、家の劣化スピードが速くなるのはなぜなのでしょうか?ここでは、人が住んでいないことによる早期劣化の主な理由をご紹介します。
ドアや窓が閉め切られることで換気不足に陥る
空き家は、居住中の家と比較すると、人が出入りする機会が少なくなります。人が住んでいなければ、ドアや窓が開け閉めされる機会が少なくなり、開口部が常に閉め切られていることで空気の循環が起こらず、湿気などが室内にこもりやすくなってしまうのです。木造住宅が多い日本の住環境においては、湿気がこもるという状態になると、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
- カビの発生・繁殖
- 木造部材の腐食
- シロアリ被害
- ダニや細菌の繁殖
- 内装の劣化
木材が多く使われている日本の住宅は、湿気が正に天敵と言えるものなのです。特に、高温多湿な環境になると、家の部材を腐食させる原因の「腐朽菌(ふきゅうきん)」が繁殖しやすい状況となり、木材が腐食することで家そのものの強度が落ちてしまいます。
さらに、木材が湿気を含み、腐食により柔らかくなると、その木材を餌とするシロアリを誘引してしまい、家の劣化速度がさらに早くなるのです。空き家状態であれば、シロアリの発生に気付くのが遅れてしまい、柱や部材に穴が開いてしまうことで、雨漏り被害に発展するなど、さらなる問題を引き起こす可能性もあります。
掃除が行われないことでカビや害虫被害を引き起こす
居住中の家であれば、そこに住んでいる人が日常的に掃除を行います。しかし、空き家の場合は、定期的な掃除を実行することはなかなか難しいのが実情です。
実は、チリやホコリなどは、空気中を浮遊している物であるため、ドアや窓などを閉め切った状態の家であっても、徐々に蓄積していってしまうのです。そして、空き家状態であれば、定期的な掃除が行われないことで、チリやホコリが溜まり、以下のような問題を誘引するのです。
- カビや虫のエサとなり繁殖を招く
- クロスや床、天井などの劣化を早める
- 床下や屋根裏など、目に見えない部分の劣化を進める
チリやホコリは、人間にとっては「ゴミ」という扱いになりますが、カビなどにとってはエサとなります。そのため、湿気がこもり、エサとなるチリやホコリが蓄積しているという状況は、カビにとっては絶好の繁殖条件となるのです。さらに、人の往来がない場所は、虫にとっては過ごしやすい環境となり、室内に害虫が住み着き、壁紙や木材が食い荒らされてしまうなど、家の劣化を早めてしまうことがあるのです。
水道管、ガス管が使用されない
空き家の早期劣化については、人が住んでいない状態のため、水道管やガス管が使われなくなることも大きな要因になります。
水道やガスを長期間使用しない場合、通水がなされないことを要因に、配管の内部がサビてしまったり、ヘドロなどがこびりついて破損を引き起こすといった問題に発展する可能性があります。
配管にサビが生じると、管そのものの強度が落ちてしまうため、破損から水漏れなどが発生する恐れがあります。そして、水漏れが発生すれば、湿気が高くなる、木材が濡れて腐食するといった事態を招き、カビやシロアリの繁殖に繋がる恐れもあるのです。
この他にも、長期間使用されていない水道管は、内部の水がなくなってしまうことで、小さな虫や動物の侵入経路となってしまう可能性があります。配管から虫が侵入すると、家の中に排泄物や死骸が残されてしまうことで、床の木材を腐食させるなど、家そのものを劣化させる要因にもなります。なお、冬場の気温が極端に下がる寒冷地などの場合、通水されないことで配管内部の水が凍結し、配管の破裂を引き起こす可能性もあります。
人が住んでいないため、不具合の発見が遅れる、修繕がなされない
人が住んでいない空き家は、小さな不具合が家に生じていたとしても、それに気づくのが遅れてしまうことで適切な修繕が行われにくくなることも、劣化スピードが速くなる要因です。
居住中の家であれば、快適な住空間を維持するためにも、日常的な掃除や定期的なメンテナンスが実施されます。雨漏りの疑いがあれば、すぐに専門業者に点検してもらい、必要な修繕を行ってもらうことができるでしょう。しかし、そこに人が住んでいない状態であれば、雨漏り被害が生じていたとしても、それに気づくことができず、長期間放置する結果となります。この場合、木材の腐食やシロアリの繁殖など、二次被害にまで発展してしまう可能性が高くなります。
さらに、問題を発見したとしても、自分たちが居住しているわけでもない家屋の場合、コストをかけて修繕するのを敬遠し、「まだ修理しなくても大丈夫だろう…」「今度修理しよう」などと、対処を先延ばしにしてしまうことも考えられます。その結果、小さな不具合が大きな問題に発展し、修理するには大掛かりな工事が必要になる…といった事態にまで発展するリスクもあるのです。
特に、空き家の場合、地震や台風、大雪など、自然災害への対処がどうしても遅れがちという点で劣化が早くなります。例えば、冬場の降雪量が多い地域にある空き家の場合、人が住んでいいないため小まめな雪下ろしができなくなり、屋根が破損したり、最悪の場合、雪の重みで建物が倒壊するといった問題に発展する可能性もあるのです。
空き家の劣化を放置した場合のデメリットとは?
前項でご紹介したように、人が誰も住まなくなった空き家は、かなりの速さで劣化が進行してしまいます。実際に、街の中を少し歩いてみただけでも、今にも倒壊してしまいそうな建物を見かける機会が増えているという印象が皆さんもあるのではないでしょうか?
ただ、空き家の所有者からすると、「自分たちが居住しているわけではないし、多少劣化しても構わないのではないか?」と考えてしまう人もいるようです。空き家を良好な状態で維持しようと思えば、定期的に空き家に足を運んで、換気や通水、掃除などのメンテナンスや、不具合の修繕をしなければならないため、時間や手間、コストがかかってしまうことになります。そのため、「どうせ人は住んでいないし、多少の劣化は仕方ない…」と考えてしまうのでしょう。
しかし、空き家の劣化を放置するという行為は、さまざまなデメリットが生じてしまうという点に注意しなければいけません。例えば、以下のようなデメリットが生じると考えられます。
- 見栄えが悪くなって、売却や賃貸などの活用がしにくくなる
- 活用しようと思った時にはコストが嵩んでしまう(修繕やリフォームが大掛かりになるため)
- 犯罪に利用される恐れがあり、地域の治安を悪くする
- 小動物の住処になり、悪臭や騒音問題を引き起こすことでご近所さんに迷惑をかける
- 地価の低下や安全な地域生活に悪影響を与える
- 特定空き家に指定される恐れがある
空き家の劣化を放置した場合、上記のようなさまざまなデメリットが生じます。
例えば、建物が劣化した場合、まず見た目の悪さが目につくようになります。庭の手入れがなされないことで、雑草が繁殖したり、外壁の塗装剥がれやひび割れなどにより、見た目からして「老朽化した家だ…」と感じられるようになるのです。この場合、売却や賃貸などの不動産の活用を考えたとしても、買い手や借り手が見つかりにくくなる、また、人が居住できるようにするためには多額の修繕費がかかってしまうなどの問題が発生するでしょう。
さらに、建物の美観の悪化は、周辺の美観にも悪影響を与えてしまうことになるため、地域社会にもさまざまな悪影響を与える恐れがあるのです。見るからに「人が住んでいない」と分かるような建物の場合、犯罪者の住処として利用されたり、不法投棄などの被害を受ける可能性があります。この場合、タバコのポイ捨てなどを原因に、火災が発生し、近隣住宅へ延焼させてしまうこともあり、被害の補填のために多額の費用を要してしまうこともあるのです。
この他、放置空き家は、小動物の住処となり、悪臭や騒音問題を引き起こす、災害時に建物が倒壊して近隣の方の避難経路を塞いでしまうなど、地域社会そのものを破壊してしまう要因になることもあるのです。そのため、全国で急増する空き家問題に対応するため、国や自治体が空き家の管理を適切に実行するよう、所有者に強く求めるようになっています。
現在では、空き家の適正な管理を実施させるため、空家等対策特別措置法の改正と民法改正、そして相続登記の義務化などによって、所有者などに空き家の管理責任がかなり強く課されるようになっています。適切な管理を実行せず、空き家が放置された場合、「特定空家」や「管理不全空家」に指定され、改善命令に違反すると過料(最大100万円)が科されたり、固定資産税が最大6倍になったりするなどの対処がなされるようになっています。
つまり、空き家の劣化を放置するという行為は、所有者にとって非常に大きなデメリットが発生するようになっているのです。
空き家の劣化を防ぐ方法とは?
それでは次に、空き家の劣化を可能な限り防ぐための対策についてもご紹介していきます。人が住まなくなった家が急速に劣化する理由が分かれば、どのような対策が必要になるのかは予想できると思いますが、ここでは代表的な方法について解説します。
空き家に足を運び定期的にメンテナンスを行う
一つ目の方法は、空き家の所有者が定期的にメンテナンスのために空き家に足を運ぶという方法です。空き家が急速に劣化するのは「人が住まなくなる」ことで、換気や通水などが行われなくなることが原因と紹介しました。逆に考えると、これらのことが定期的に行われている限りは、空き家の劣化を遅らせること出来るはずです。
したがって、最低でも月に1回程度は空き家に足を運び、以下のようなメンテナンス作業を行っていきましょう。
- 換気
家の劣化は換気がなされず、湿気がこもることが要因となるため、定期的に窓を開放して空気を入れ替えてあげることが大切です。晴れていて、湿度が低い日を選んで空き家に足を運び、1時間程度は換気をしてあげるのが良いでしょう。なお、この際にはタンスや押し入れ、棚などの扉も開け、内部の空気を入れ替えてあげることが大切です。 - 通水
水道などのライフラインを活かしている状態なら、キッチンやバスルーム、トイレなどの蛇口を開け、1分以上は水を流し続けましょう。通水することで、配管内のサビ防止や排水トラップへの水の補給ができます。なおこの際には、蛇口回りの水漏れなどを確認しておくと良いです。パッキンなどは消耗部品なので、劣化が見られた場合、交換してあげる必要があります。 - 掃除と点検
先程紹介したように、人が住まないことで蓄積するチリやホコリも、家の早期劣化の要因となります。したがって、定期的に掃き掃除や拭き掃除を行うことで、ホコリなどが蓄積するのを防ぐ必要があるのです。なお、お庭があるお宅の場合は、草刈りや樹木の選定なども行っておきましょう。庭の草を放置すると、小動物の隠れ家になる恐れがあります。また、家の中を掃除していくときには、建物の劣化状況などを確認しながら行いましょう。小さな不具合のうちに対処すれば、修繕コストを抑えられるうえ、家の劣化を遅らせることができます。
空き家を良好な状態で維持するためには、上記のようなメンテナンスを定期的に行ってあげる必要があります。小まめに足を運んでいれば、不具合の発生に早期に気付くことができるため、劣化が小さいうちに対処することが可能になります。家の状態を維持しておけば、売却や賃貸など、不動産の活用を考えた時に有利に働きます。
専門業者にメンテナンスを依頼する
上記のような空き家の管理について、「遠方に住んでいるため、月一回は厳しい…」と感じた方も多いかもしれません。親が住んでいた実家を相続し、その家を管理するというケースでは、往復の交通費だけで数万円以上のコストがかかってしまうケースもあるため、どうしても管理が難しいというケースもあるのです。
この場合は、空き家の管理などを請け負ってくれる専門業者に作業を依頼すると良いです。全国的に空き家の増加が社会問題化している昨今では、空き家の換気・通水・掃除・点検などの管理業務を請け負ってくれる会社が登場しています。
費用は依頼する会社や作業内容によって異なりますが、月一回の換気や通水、掃除を依頼する場合、月額で1万円程度で請け負ってくれる業者もあるようです。住んでいる場所が、空き家の所在地から遠く、管理のために時間やコストがかかりすぎてしまう…という方は、専門業者に依頼するのが最も効果的と言えます。
賃貸に出す
空き家の劣化スピードが速くなるのは、「人が住んでいない」ことによるものと解説しました。逆に言うと、「人が住んでいる」という状況を作り出せば、換気不足や通水が行われないという状況を防ぐことができ、空き家の劣化を防止することができるのです。この場合、自分たちが住めないという状況なら、賃貸物件として活用するという方法が、早期劣化を防止する最も有力な方法になると言えます。
賃貸物件にして人が住むようになれば、以下のようなメリットが得られると考えられます。
- 住人が掃除や換気などを行うため、定期メンテナンスの手間が省ける
- 住人から修繕が必要な部分の情報を素早く仕入れることができる
- 家賃収入が得られる
賃貸物件として人が住むようになれば、日常的に掃除や換気が行われるようになるため、空き家特有の理由による劣化を防止することができます。さらに、賃貸収入が得られるようになるため、固定資産税などの税負担を軽減しながら、物件を資産として残しておけるようになるのです。
もちろん、賃貸需要がある地域で、借り手が見つけられるような条件が整った物件に限りますが、賃貸物件として運用するという方法は、空き家の早期劣化を防止する方法として非常に有効です。なお、将来的に「自分たち家族や親族が住む可能性が限りなく低い」というケースなら、売却を視野に入れるのも良いと思います。
空き家は早期売却が推奨される理由
親が住んでいた実家を相続するケースでは、離れた場所にマイホームを所有していて、自分たちでは住まないという選択をしながらも、なかなか「売却する」という選択ができないケースもあります。例えば、子供の頃、自分も住んでいた思い出のある実家であることから、自分で住むことはないと理解しつつも売却と言う選択を選べないというケースも少なくないのです。
しかし、人が住まなくなった空き家は、劣化スピードが非常に早くなるという特徴があるため、可能であれば早期の売却を検討するのがおすすめなのです。ここでは、空き家の売却を遅らせることで生じるリスクや、早期の売却を目指すための対策について解説します。
空き家は早く売った方が良い理由
相続などで空き家を所有することになった時、早めに不動産会社などを通じて売却を検討するのがおすすめと言える理由は、早ければ早いほど「好条件で売れる可能性が高い」からです。上でも解説していますが、人が住まなくなった空き家は、どうしても劣化スピードが速くなってしまいます。定期的な管理を実行するにしても、人が住んでいる状態と比較すると、メンテナンススパンはどうしても落ちてしまうことになるため、状態は悪くなってしまうのです。
さらに、遠方に住んでいる方の場合であれば、メンテナンスが必要と理解しながらも、日常生活の忙しさに追われてしまい、空き家が放置されるケースが多くなります。その場合、以下のようなリスクが生じてしまいます。
- 建物の外観の悪化
- 建物の耐久性や安全性の低下
- 修繕や解体にかかる費用の増加
- 特定空き家に指定されるリスクの増加
上記のような問題は、空き家の売却をより難しくする要因にもなってしまいます。家の売却では、立地条件以外にも、建物の状態が良好に保たれているのかといった点が非常に重要になり、空き家として放置されていた期間が長くなると、建物の劣化が進行することで「売りたくても売れない…」という状況を招いてしまう要因になるのです。
逆に、早めに売却活動を始めると、時間経過とともに家が劣化する前の「綺麗な状態」のまま売りに出すことができます。もちろん、築年数などが既に経過している物件の場合は、リフォームや修繕が求められるかもしれませんが、それにかかる費用は、早めに売りに出す決断をするほど安く抑えられるのです。
さらに、空き家として所有するのではなく、早期に手放すことができれば、将来的に空き家の維持管理にかかるコストや手間も削減することができるでしょう。また、家を売却して現金化することができれば、遺産相続の分割もしやすくなるなど、さまざまな面においてメリットが得られると考えられるのです。
これらのことから、空き家を相続した時、自分たち家族が将来的に住む予定がないというケースであれば、できるだけ早く「売却する」という決断をするのがおすすめと言えます。
空き家の早期売却はホームステージングがおすすめ
上述しているように、相続などで空き家を所有することになった場合は、早期の売却を目指すことがおすすめです。しかし、親が住んでいた実家を相続し、その物件を売りに出すというケースは、以下のような問題が立ちはだかることで買い手がなかなか見つけられない…と悩んでしまう場合も多いようです。
- 親が使用していた遺品が残っている
- 不用品がたくさん存在する
- 築年数が経過していて修繕が必要と考えられるケースが多い
- 物件内の汚れやキズが目立つ
親が住んでいた実家を相続し、その物件を売却しようと考えた時には、上記のように「直前まで人が住んでいた」ことが要因となる問題が立ちはだかるのです。例えば、家を内覧してもらうために、残された荷物の分別や処分などが問題として立ちはだかるケースが考えられます。他にも、家の中やお庭を綺麗に掃除しなければならない、老朽化した部分の修繕や住宅設備の交換などが必要になるケースもあるでしょう。
昨今では、「住まいは供給過多の状況になっている」と指摘されているのですが、家の売却は、売りに出せばすぐに買い手が見つかるほど簡単な物ではなくなっています。さらに「空き家の売却」は、上記のような問題が発生している可能性が考えられるため、早期の売却を目指すためには、事前の準備が非常に重要になるのです。
そして、「実家を相続したけど、何から始めれば良いのか分からない…」という方は、ホームステージングの実施を検討すると良いです。ホームステージングは、中古住宅市場が活発なアメリカで誕生した販促手法で、家を売りに出す際に、物件内を家具やインテリア、照明や植物でコーディネートすることで、内覧者に良い印象を与えて購入を後押しするという方法とされています。家の売却では、購入の決断をする最終判断の場として、実際の物件を内覧するという工程が挟まれます。この際、空室状態の物件を内覧することと比較すると、家具やインテリア、照明などで空間をコーディネートすれば、入居後の生活を具体的にイメージさせることができるようになるため、購入検討者に「ここに住んでみたい!」と思わせることができるのです。欧米では、家を売りに出す際には、ホームステージングが当たり前のように採用されているのですが、2020年頃から日本国内でも盛んに取り入れられるようになっています。
さらに、日本国内におけるホームステージングは、日本特有の社会問題に対応する目的で、独自の進化を見せています。少子高齢化が進む日本では、「相続した実家を売却する」というケースが急増すると考えられているため、ホームステージングのサービス領域は、単に家具などを配置する空室ホームステージングだけでなく、以下のような作業も請け負ってもらえるようになっています。
- ①整理収納(片づけ、快適収納比率)
- ②断捨離(不要家財の区分・分別)
- ③遺品整理(遺品や相続に関する知識とサポート)
- ④掃除(汚れの分析と対処方、洗剤・用具の基礎知識、消臭・除菌)
- ⑤生前整理(顧客心理、コミュニケーション)
- ⑥廃棄と保管およびリサイクル(ホームステージングに関する法的な知識)
- ⑦インテリア(空間プランニング、テーブルコーディネート、アロマの知識、快適空間比率)
- ⑧インテリア写真の撮影及び画像(2D、3D、VR)
- ⑨エクステリア(ガーデニング)
このように、ホームステージングは、遺品整理や掃除、不要家財の分別・廃棄など、空き家の売却に必要とされる作業全般をまとめて依頼することができ、物件を売れる状態にしてもらうことができるのです。現在、相続した実家の取り扱いに困っているという方がいれば、ホームステージングを実施して早期の売却を目指してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、日本国内で急増していると言われている空き家について、人が住まなくなった家の方が劣化スピードが速くなると言われている理由について解説しました。
記事内でご紹介したように、空き家の劣化スピードが速くなるのは、まさに「人が住んでいない」ということが原因で、人が住んでいれば必ず行われる換気や通水、掃除などが不足することが主な要因と言えます。少子高齢化や核家族化が進んでいる日本では、親世代と子世代が離れた場所で生活するようになっていて、親が住んでいた実家を相続した時には、定期的な管理に足を運べないことで、家が急速に劣化してしまうという状況が増えているのです。このまま放置空き家が増加していくと、地域社会そのものを破壊してしまう可能性が考えられるため、国や自治体は空き家の所有者に対して、適切な管理を強く求めるようになっています。そのため自分たちが住まない不動産を所有するという行為は、一昔前と比較するとリスクが大きくなっていると考えられます。
現在、空き家を所有していて、その取扱いに迷っているという方がいれば、早期の売却を検討すべきと言えるでしょう。劣化が進行する前に売りに出せば、修繕などにコストをかけることなく、有利な条件で買い手を見つけることができるかもしれません。また、現在では、ホームステージングなど、中古住宅の売却を促進するための手法も開発されていて、あなたが「売れないのでは?」と考えている物件でも、高値で売却することができるかもしれません。