2025.07.09

ホームステージングの基本!グリーンや照明による演出が重要とされる理由

ホームステージングサービスは、単なる家具のレンタルサービスではありません。ホームステージングは、部屋の中に家具やインテリアなどを配置する作業が行われるため、お客様の中にはホームステージング会社は、家具をレンタルしてくれて、搬入や配置までを行ってくれる会社と考えている方もいるかもしれません。

しかし、ホームステージング会社の役割は、売り出し中の物件を「早く売れるようにする」ことや賃貸物件の空室を「早く埋める」ことにあり、ホームステージングは物件が持つ魅力を最大まで引き出すため、さまざまな演出が部屋に施されているのです。特に、ホームステージング会社が対策を施す場合、単に家具やインテリアを配置するだけでなく、グリーンや照明を取り入れた演出が行われるケースがほとんどです。

それでは、物件の魅力を引き出すためのホームステージングで、グリーンや照明が重要とされる理由はどこにあるのでしょうか?この記事では、ちょっとした工夫で物件の印象を大きく変えることができるグリーンや照明による演出について解説します。

ホームステージングの目的と効果

ホームステージングは、単に家具をレンタルできるサービスではなく、物件をより魅力的に演出することで、中古住宅の購入を検討している、賃貸物件を探しているという方を惹きつけ、早期の成約や高値での売却を促進すための手法とされています。具体的な対策としては、空室状態の部屋の中に、家具やインテリア、観葉植物や照明などを配置して空間をお洒落に演出し、入居後のそこでの生活をイメージしやすくすることで、購買意欲を高めるという手法になります。

もともと、中古住宅市場が活発なアメリカで誕生した方法で、欧米では家を売却する時には当たり前に採用されているとされています。例えば、スウェーデンでは、売りに出される物件の80%以上にホームステージングが施されていると言われています。

ここでは、ホームステージングの基礎知識として、ホームステージングを施す目的や、実施したことでどのような効果が得られるのかについて簡単にご紹介します。

ホームステージングの目的

ホームステージングを実施する目的はさまざまです。ここでは、ホームステージングの主な実施目的をご紹介します。

  • 物件の第一印象を向上させる
    ホームステージングは、魅力的な空間を演出することで、内見した人の興味を引き、購買意欲を高めるということが一つの目的です。プロのホームステージャーがコーディネートしたおしゃれな空間は、内見者に「ここに住んでみたい!」と思わせることができるため、早期の成約につながりやすくなります。
  • ライバル物件との差別化
    どのような物件でも、周囲にライバルとなる類似物件が存在するはずです。ホームステージングは、周辺の類似物件との競争で優位に立ち、購入(賃貸)希望者の選択肢から外れないようにするということも大きな目的となります。特に、昨今ではインターネット上の不動産検索サイトが顧客とのファーストアプローチとなるため、一覧表示される際にライバル物件よりも目を引きやすくするということも目的となっています。
  • 入居後の生活をイメージさせる
    ホームステージングが実施された物件は、部屋の中に家具や小物などが配置されていることで、入居後のそこでの生活を具体的に想像しやすくなるとされています。空室状態の部屋を内見した時には、部屋のサイズ感さえ分かりにくくなるので、決め手がないという理由で契約が見送られてしまうことがあります。そこでの魅力的な生活が具体的にイメージできれば、契約の後押しになるはずです。
  • 早期成約の促進
    ホームステージングは、「物件が早く売れるようにする」「空室を早く埋める」ということが最大の目的といえます。
  • 高値売却を狙う
    ホームステージングは、物件の価値を最大限に引き出すことで、より高い価格での売却を目指すという対策でもあります。また、ホームステージングにより、弱点を目立たなくさせることで、無理な値引き交渉を防止し、物件の売却価格を維持するということも目的の一つです。

ホームステージングは、上記のようにさまざまな目的のもと実施されています。ただ、最終的には「物件をできるだけ早く売る」「物件をできるだけ高値で売却する」という目的に帰結します。

ホームステージングの効果

それでは次に、ホームステージングを実施することで得られる効果もご紹介します。ここでは、一般社団法人日本ホームステージング協会が公表している「ホームステージング白書2023」のデータを参照し、ホームステージングを実施することでどのような効果が得られたのかに関する調査データをご紹介します。

■不動産売買におけるホームステージングの効果

まずは、不動産の売買を促進するために実施するホームステージングの効果についてです。ホームステージングは、もともと中古住宅市場が活発な欧米で誕生した手法であるということからも分かるように、家の売却を促進するための手法として大きな効果をもたらせてくれると認識されるようになっています。その証拠に、家の売却を進める際のホームステージングの導入状況について、2022年度と比較して「ホームステージングを実施した物件の件数が増えた」と回答した人は66.7%(大幅に増えた24.1%、少し増えた42.6%)と、大幅に増加しているという調査データが出ています。

この調査は、全国のホームステージングを導入している不動産関連会社および賃貸オーナー、ホームステージングを提供する各会社などを対象に行っているのですが、「ホームステージングを実施して何らかの効果があったのか?」という質問に対しては、なんと92.8%が「効果があった」と回答しています。

なお、ホームステージング実施後、成約までの平均期間については、2ヶ月以内(1週間、2週間、1ヶ月以内を含める)が46.4%とほぼ半数が2カ月以内に成約できています。さらに、3ヶ月以内までを含めると、87.1%となっていて、ホームステージングを施した物件の約9割が3ヶ月以内で買い手が見つかっているという状況になっています。
この結果については、ホームステージングを施さなかった場合と比較すると、「成約までの期間が短くなった」という回答が69.1%と、確かな効果が認められていると言えるでしょう。この他、ホームステージングによる効果は、以下のような点でも認められています。

  • 閲覧数:77.8%(大幅に増えた20.4%、少し増えた57.4%)
  • 問い合わせ数:77.8%(大幅に増えた16.7%、少し増えた61.1%)
  • 内覧者数数:79.2%(大幅に増えた11.3%、少し増えた67.9%)

このように、家の売却においては、ホームステージングによって早期売却を目指すということと考えた時には、それを後押しするさまざまな効果が認められています。

■不動産賃貸におけるホームステージングの効果

次は、不動産賃貸におけるホームステージングの効果についてです。賃貸経営者にとっては、空室が長期間続くということが最も恐ろしいことであるため、出来るだけ早く入居者を見つけたいと考えるはずです。そして昨今では、賃貸物件の空室対策としてもホームステージングの導入が急速に拡大しています。

ホームステージング白書によると、賃貸物件を取り扱う不動産関連会社や賃貸オーナー、ホームステージングを提供する各会社では、ホームステージングを実施した件数が前年よりも「増加した」との回答が66.1%(大幅に増えた23.2%、少し増えた42.9%)と、かなり増加しているということが分かります。また、ホームステージングによる効果については、92.9%の方が「効果があった」と回答しているなど、ホームステージングを実施した多くの方がその効果を実感しているという結果になっています。

実際に、ホームステージング後の「成約までの平均期間」については、1ヶ月以内(1週間以内、2週間以内を含め)で成約したという回答が72.2%に上っており、賃貸物件の空室対策ではホームステージングが非常に大きな効果をもたらすということが分かっています。賃貸物件でのホームステージングに関しては、実施していない時と比較して「成約までの期間が短くなった」という回答が82.1%となっているのですが、さらに「大幅に短くなった」という回答が44.6%と約半数が早期に空室を埋められたという効果を得ています。

この他、賃貸物件へのホームステージングは、閲覧数や問合せ数、内覧者数などにも劇的な効果をもたらせているという調査結果が出ています。

  • 閲覧数:83.7%(大幅に増えた36.4%)
  • 問い合わせ数:76.7%(大幅に増えた32.1%)
  • 内覧者数数:73.3%(大幅に増えた30.4%)

このように、不動産賃貸業界では、売買と比較するとホームステージングにより大幅に状況が変わったという回答が多くなっています。

ここまでの解説で分かるように、ホームステージングは、不動産の売却や賃貸を促進するための手法として、確かな効果が認められるようになっています。ホームステージングは、ただ単に家具を配置するだけという対策ではなく、物件のターゲットとなる人が内見に来たとき、最も良い印象を持ってもらうために細かな部分まで考えてコーディネートが施されるためです。次項では、ホームステージングを実施する際の重要なポイントとされているグリーンや照明の利用について解説します。

ホームステージングに「グリーン」が取り入れられる理由とは?

ホームステージングは、空室状態の部屋に家具やインテリアを配置することで、そこでの生活を具体的にイメージできるようにするという対策です。ただ、ホームステージングの専門業者が対策を施す場合、必ずといっても良いほど植物が取り入れられています。なお、部屋の中に取り入れられる植物は、基本的に生花ではなくフェイクグリーンが使用されているのですが、これは手入れなどをしなくても枯れる心配がない、虫の発生リスクがないことが要因です。ドライフラワーやプリザーブドフラワーに関しても、枯れの心配はないのですが虫の発生リスクが残るため、基本的には使用されません。

それでは、プロのホームステージングサービスで「グリーン」が取り入れられる理由はどこにあるのでしょうか?実は、ホームステージングの本場であるアメリカでも、ホームステージングに関する教科書で、グリーンの重要性が強調されているのですが、それは以下のような理由があるからです。

  • 植物を嫌う人は少ないため、幅広いターゲット層に好印象を与えられるから
  • 植物は、マイナス要素をカバーするための万能アイテムとして働く
  • 日本の住宅は各所に木材が使用されており、グリーンは木の意匠と相性が良い

ホームステージングにおける「グリーン」は、上記のようにさまざまな面で好影響を与えてくれます。日本の住宅は、フローリングやドア、キッチン面材などとして木材が多く採用されているのですが、植物のグリーンは、これらの木の意匠と相性が良いため、多くの方に良い印象を与えることができるとされています。実際に、部屋の中に植物を配置している場合としていない場合では、印象に大きな差が生じます。

ホームステージングを行う上で「グリーン」の存在は、幅広いターゲット層に良い印象を与えやすくなるアイテムとして、非常に重要な要素になるのです。

ホームステージングで「グリーン」を取り入れる時のポイント

ホームステージングを実施する際、より良い印象の部屋にするためにはグリーンを取り入れることが大切です。ただ、グリーンを取り入れるにしても、いくつか注意しておかなければならないポイントがあります。

  • 植物の選び方について
    部屋の中にグリーンを取り入れる時には、インテリアのテイストに合わせて植物を選ぶことが大切です。例えば、葉の形やグリーンの色味、植物が与える印象(柔らかい印象orシャープな印象など)などを考慮して、全体のバランスが整うような植物を選びましょう。なお、植物だけでなく、鉢の色合いやデザインが他のインテリアのテイストに合うようにすることも大切です。
  • 植物の高さについて
    ホームステージングの一環として設置する植物は、ある程度の高さを確保できているものが望ましいです。理想を言えば、1700mm以上の高さがある植物が良いです。これは、1500mm以下など、背の低い植物は、安っぽく見えてしまうことからホームステージングの全体的な印象が損なわれてしまう可能性があるからです。
  • 植物周りの演出について
    ホームステージングにおける「グリーン」は、「+α」の工夫を施してあげることでより印象的な演出にすることが可能です。例えば、鉢の中に香りのアイテムを仕込むことで「においの演出をする」、クリップライトなどを使って植物をライトアップするなど、光の演出を施すなど、内覧者の印象を良くするための工夫も一緒に施すことがおすすめです。

ホームステージングにおける「グリーン」は、あくまでもワンポイント的な扱いで「あってもなくても良い」と考えている方が多いです。しかしそのようなことはなく、グリーンは多くの人に良い印象を与えることができるアイテムなので、ホームステージングを施すときには重要度の高いアイテムとみなさなければいけません。

ホームステージングにおける照明の重要性について

次は、ホームステージングを実施する際の「照明」の重要性についてです。空間のコーディネートをするうえでは、家具やインテリア、植物などを配置することでおしゃれな空間に演出するだけでは不十分です。実際に、ホームステージングが施された物件において、「売れる物件」と「売れ残る物件」が生じてしまうのは、照明が意外な盲点になっていたというケースが多いとされています。

たとえば、照明が設置されていない部屋を内見した時には、内見者は「暗い」「狭い」「古い」といったネガティブな印象を持ってしまいがちとされています。実際に、大手不動産ポータルサイトが行った調査によると、暗い物件と比較すると、明るい物件の方が成約率が約20~30%程度高くなる、また内見者の滞在時間が長くなるなど、不動産取引に好影響を与えるとされています。さらに、照明などが無く暗い物件の場合、同じエリア内にある類似物件と比較すると、売却できるまでの期間が約1.5倍長くなるといったデータもあるのです。

照明は、部屋をお洒落な雰囲気に演出するためのアイテムとして利用できる以前に、「明るさを保てる」というだけでも不動産取引に好影響を与えます。低コストで部屋の印象をアップさせ、売却までの期間を短縮することが期待できるので、ホームステージングにおいては照明が非常に重要な役割を担っていると言えます。

照明が必須だと言える物件と期待できる効果について

ホームステージングを実施するうえでは、照明の有無が効果に大きく関係する場合があります。特に、以下のような物件については、照明による演出が必要不可欠と考えましょう。

  • 築浅の物件
    築年数がそれほど経過していない物件の場合、部屋そのものが綺麗で好印象を与えやすいと考えがちです。しかし、部屋がきれいな分、照明がないことで「未完成」といったネガティブな印象を与えることがあるとされています。したがって、築浅物件は照明を設置することで、綺麗さをより際立たせる方が良いです。
  • ファミリー向けの物件
    ファミリー物件は、そこでの生活を具体的にイメージさせることが非常に重要とされています。荷物なども多いため、全ての部屋をしっかりと内見する方が多いです。ただ、内見時に子供部屋や寝室に照明が設置されていないと、具体的な生活イメージが湧かないことで成約につながりにくくなる可能性があるので注意しましょう。
  • 価格帯が高い物件
    照明の有無で高級感やお洒落さ、快適さのイメージは大きく変わります。これは、一般の飲食店などでも採用される方法ですが、高級な店舗ほど照明による演出がしっかりとなされています。したがって、高価格帯の物件は、その価格に見合った空間に演出する必要があり、そのためには照明による空間演出は必要不可欠です。
  • 長期間売れていない物件
    長期間、買い手が見つからない物件の場合、照明がないことで印象を悪くしている可能性が考えられます。したがって、照明を設置することで、ネガティブな印象をリセットする必要があります。

ホームステージングにおける「照明」の活用は、部屋を明るくすることで内見者の第一印象をアップさせることができる、また適切な明るさにより空間を広く見せることができるなど、物件の売却や賃貸を促進することを考えると非常に重要な要素となります。特に物件の内見については、夜間や悪天候時に訪問されることもあり、照明がない物件の場合、暗くて悪い印象を与えてしまう可能性もあるのです。

なお、物件の印象を良くするためには、照明の明るさや色について、環境に合わせて適切な物を選ぶ必要があります。例えば、リビングに設置する照明なら明るく自然な昼白色が好まれますが、寝室などは温かみのある温白色などが良いでしょう。空間ごとに適切な照明を選ぶことで、物件内にメリハリをつけることができるため、内見時の印象をアップさせるには、ホームステージングと適切な照明を組み合わせることが非常に重要になると考えてください。

まとめ

今回は、不動産の売却や賃貸を促進する方法として注目されているホームステージングについて、実際にホームステージングを施す時に重要になるポイントをご紹介しました。

ホームステージングについては、自社の従業員を使って家具の搬入や配置を実施している不動産関連会社様も多いと思います。一見すると、家具やインテリアを配置するだけでも、内見者の印象を良くすることができるのではないかと考えてしまうからです。
しかし、ホームステージングは、「家具やインテリアを配置するだけで効果が出る」ほど単純な対策ではありません。記事内でご紹介しているように、グリーンや照明の使い方ひとつで「売れる物件」と「売れ残る物件」に分かれてしまうことがあるなど、ターゲット層に好印象を与えられるようなコーディネートをしっかりと計画しなければならないのです。当然、自社の従業員を使ったホームステージングで効果が出せなかった場合、会社の生産性を落としてしまう結果になるため、きちんとポイントを抑えたうえで対策を実施できるようにしましょう。

なお、家具やインテリア、コーディネートの知識を持つ人間がいなくて「自分たちでホームステージングを施すのは難しいのでは?」とお考えなら、ぜひKAGKASにお問い合わせください。KAGKASでは、ホームステージャーの資格を始めとして、インテリアコーディネーターや建築士、宅地建物取引士といった不動産に関わる資格を保有した経験豊富なスタッフが多数在籍していますので、物件に最適なホームステージング計画をご提案いたします。