2025.08.06

ホームステージングにかける費用は増加傾向にある!ホームステージングの最新動向をお伝え

今回は、先日公開された最新版のホームステージング白書2024年を参考に、不動産の売買、賃貸業界におけるホームステージングの最新動向について解説していきます。前回は、ホームステージングの実施方法について、DIYではなく専門業者に依頼するケースが増えているという状況をお伝えしましたが、今回は、ホームステージングにかけるコストがどう変化しているのかに注目して、最新動向をご紹介します。

ホームステージングは、不動産の売却や賃貸を促進するための手法として日本国内でも注目されるようになっています。簡単に言うと、空室状態で集客活動を行うのではなく、中古物件や賃貸物件をより魅力的に見せるため、家具や小物を配置してモデルルームのように演出するサービスがホームステージングと呼ばれます。具体的には、リビングにソファやテーブルを置いたり、照明により空間を演出することで、内覧者に「ここに住んでみたい」と思わせるような空間を創り出し、早期の成約や高値売却を目指す販促手法となります。

ホームステージングを実施するためには、部屋を飾るための家具やインテリア、照明などを用意しなくてはならないですし、業者に作業を依頼する場合、作業費が発生します。つまり、ホームステージングを実施するためには、それなりのコストがかかってしまうという訳です。それでは、不動産の売却や賃貸を促進する方法として、その効果が認められ始めたホームステージングは「実施にかけるコスト」に変化は生じているのでしょうか?

この記事では、2023年から2024年にかけて、ホームステージングにかける費用がどう変わってきているのかを解説します。

ホームステージングで実施している作業とは?

冒頭でご紹介しているように、ホームステージングは「部屋の中に家具やインテリアを配置してモデルルームのように演出する」対策と解説されるケースが多いです。しかし、実際のホームステージングサービスに関しては、家具などの配置だけでなく、物件の魅力を向上させるため、さまざまな作業が実施されています。

例えば、築年数が経過した戸建ての売り物件の場合、建物そのものは良好な状態を維持できていたとしても、お庭のお手入れが行き届いておらず荒れ果てているというケースが少なくありません。この場合、家の中をどれだけ魅力的に演出しても、家の外観イメージが悪いことを理由に買い手を見つけることが難しくなります。したがって、売却のためには、外構部分のお手入れもしてあげる必要があり、これもホームステージングの一環とみなされるようになっているわけです。

ここでは、昨今のホームステージングで、どのような対策が実施されているのかについてご紹介します。

ホームステージングの具体的な作業について

ホームステージング白書2024によると、不動産売買、賃貸部門で2024年に実施されたホームステージングでは、以下のような作業が行われています。

引用:ホームステージング白書2024年

上のグラフから分かるように、やはり「空室ホームステージング」が最も多い割合となっています。

しかし、注目したいのは、一般的なホームステージングのイメージとは少し異なる作業が実施されているケースが多いという点です。例えば、以下のような作業については、ホームステージングの認識とは少しずれていると感じる方も多いのではないでしょうか?

  • ハウスクリーニング:31%
  • リフォーム(原状回復):19.3%
  • 草刈り・庭木カット:15.2%
  • 不要家財回収:15.2%
  • 補修・修繕:13.5%

実は、ホームステージングとして実施された作業としては、空室ホームステージングの次にハウスクリーニングが位置しているのです。部屋の中に家具などを設置することで魅力的な空間に演出したとしても、壁などに汚れが付着している場合、演出が台無しになってしまいます。また、お風呂やキッチン、トイレなどの水回りに関しては、非常にしつこい汚れが付着していて、一般の方では掃除しきれないケースも多いです。そこで、空室ホームステージングに合わせて、ハウスクリーニングも一緒に依頼する方が増えているわけです。

ホームステージングは、「部屋に家具やインテリアを設置する」ということを意味しているわけではなく、あくまでも「物件の魅力を引き出し、ここに住んでみたいと思わせる」対策全般を指していると言えます。そのため、内覧時に邪魔になるような既存家具の回収や一時預かり、外構部分のお手入れなどもホームステージングの一種と考えられていて、サービスとして提供するホームステージング会社が増えています。逆に言うと、ホームステージング会社のサービスが多様化しているため、自分たちだけでは対応しきれない範囲のホームステージングを依頼できることが要因となり、DIYではなくプロにホームステージングを依頼する人の割合が増えているのかもしれません。

ホームステージングを導入した理由について

それでは、不動産の売却や賃貸を検討した時、ホームステージングを導入する方は何を目的としているのかについてのデータもご紹介しておきます。

引用:ホームステージング白書2024年

ホームステージングの導入理由に関しては「ライバル物件との差別化」が1位になっています。これは、少子高齢化が進む日本では、全国的に「家が余る」という状況に陥っていることが一つの要因と言えるかもしれません。また、賃貸業界では、相続税対策として賃貸経営が有効という面があるため、相続対策でアパートを建てる方が多く、都市部などでは「賃貸住宅は供給過剰である」などという指摘がなされるようになっています。
このような背景があるため、物件に空室が生じた際、出来るだけ早く客付けするためには「ライバル物件との差別化」が非常に重要とみなされるようになっているのです。そして、差別化をするため、ホームステージングが非常に有効だとみなされるようになっていて、導入されるケースが増えているという状況です。

この他、物件オーナーや仲介会社からすると「売値・ 賃料を高くしたかった」という導入理由が25%もあるという点に注目するかもしれませんね。実は、ホームステージングは、賃貸物件などでも「賃料をアップできた」という効果が実際に認められています。

引用:ホームステージング白書2024年

このように、ホームステージングを実施することで賃料をアップすることができたというケースが6割を超えています。ホームステージングは、内覧者に良い印象を与えることで、「ここに住んでみたい!」と強く思わせることができ、エリアの家賃相場よりも高く貸し出せることが期待できるため、コストをかけてでも実施したいという方が増えているのだと思います。

ホームステージングにかける費用の最新動向について

それでは、ホームステージングにかける費用の最新動向についてもご紹介していきます。ここでは、2023年度と2024年度のホームステージング白書から、ホームステージングを実施した人が、どの程度の費用をかけていたのかを比較する形でご紹介します。

不動産売買におけるホームステージングの費用について

まず、2023年度におけるホームステージングにかけた費用のデータをご紹介します。

引用:ホームステージング白書2023年

2023年では、不動産の売却を目的に実施するホームステージングについては、「5万円未満」の費用でおさえたという回答が35.7%と、他の回答に大きな差をつけて1位になっています。この費用に関しては、2022年と比較しても、かなり費用がおさえられているという結果になっています。ちなみに、2022年は、15~30万円という回答の割合が最も多かったようです。
それではなぜ2023年のホームステージングは、これほどまで費用がおさえられているのでしょうか?これについては、上の左側のグラフから分かるように、2023年の不動産売却時で実施されたホームステージングは、仲介を担う不動産会社自身が実施しているケースが多かったことが要因と考えられます。ホームステージングによる効果がある程度認められ始めたことから、自社の社員にホームステージングに関して学習させ、対策を自社内で実行することでコストの削減を目指したのだと思います。不動産会社は、不動産を取り扱うプロ業者であることは間違いないため、各物件のターゲット層などを明確にすることができるため、必要な対策は自分達でも考案できると考えられたのだと思います。

しかし、2024年に入ると、この状況が一変していることが分かります。2024年における不動産の売却を目指したホームステージング費用は以下の通りとなっています。

引用:ホームステージング白書2024年

上図の通り、2024年のホームステージングにかけた費用については、「10~20万円未満」が30%以上と、一気に予算が倍増しているのです。また、ホームステージングに20万円以上かけられているケースが44%と、半数近くがかなりのコストをかけてホームステージングを実施するようになっていることがよくわかります。

2024年になってから、ホームステージングにかける費用が高くなっているのは、ホームステージング作業そのものを専門業者に依頼するケースが増加していることが要因と考えられます。先ほど紹介したグラフから分かるように、2023年度は、不動産会社自身がホームステージングを実施しているという割合が過半数を超えています。しかし、2024年に入ると、ホームステージングの実施は「専門業者に依頼した」という割合が10%以上伸びて1位になっているのです。当然、不動産会社が自社の従業員を使ってホームステージングを実施するのと比較すると、専門業者に依頼する方がコストは高くなってしまいます。つまり、専門のホームステージング会社の利用割合が増えたことが、ホームステージングにかけるコストが増加している要因になっていると考えられるわけです。

ちなみに、2024年以降、ホームステージングを専門業者に依頼する割合が増えているのは、高価格帯の物件が増加し、ホームステージングによる差別化をするためには、演出の質が非常に重要とみなされるようになったことが要因と言われています。不動産会社の従業員は、不動産売買のプロではあるもののホームステージングに関する専門知識は持っていません。そのため、不動産会社自身がホームステージングを実施した場合、家具やインテリアコーディネートの知識が不足していることを要因に、魅力的な空間づくりができていないケースが多いのです。プロに対策を依頼した場合、ホームステージングに係わる幅広い知識を保有したホームステージャーが実施計画を立てるため、物件の魅力を最大にまで引き出すことができ、より効果的なホームステージングになると期待されたわけです。

また、ホームステージングの効果が広く認知され始めたことから、ホームステージング業界に新たに進出する企業が増えて、サービスの多様化や導入しやすい価格・プランの提供がされるようになったことも、専門業者への依頼の増加やホームステージングにかける費用の増加に関係していると言われています。

ちなみに、2024年以降、ホームステージングの実施を専門業者に依頼する割合が増えている状況については、以下の記事で詳しく解説しています。こちらの記事もぜひ合わせて確認してください。

関連:ホームステージング専門業者への依頼が増加!ホームステージング実施方法の最新状況をご紹介

不動産賃貸におけるホームステージングの費用について

不動産賃貸部門でのホームステージングの費用については、2023年度と2024年度において、データの表現方法が少し変わっているので、少し比較が難しいです。まず2023年のホームステージング費用のデータをご紹介します。

引用:ホームステージング白書2023年

上図から分かるように、2023年の賃貸物件に対するホームステージングは、1カ月の家賃を超えない範囲の費用で対策が実施されているように思えます。3~10万円の範囲が大きな割合を占めていますが、注目したいのは3万円未満という割合が対策を実施した平均家賃の割合を大きく上回っているという点です。

それでは、2024年度はどうなったのでしょうか?

引用:ホームステージング白書2024年

2024年の賃貸物件に対するホームステージングは、家賃の1カ月分~1.5カ月分という回答が約65%を占めているなど、2023年と比較すると、賃貸でもホームステージングにかけるコストは増加していると判断できます。

まとめ

今回は、日本ホームステージング協会が毎年発行しているホームステージング白書の最新版を参考に、ホームステージングにかける費用の最新動向をご紹介しました。

記事内でご紹介しているように、2024年以降は、ホームステージングの実施を専門業者に依頼するケースが増えていることにともなって、ホームステージングにかける費用も増加傾向にあることが分かりました。2023年は、不動産会社自身が対策を施しているケースが非常に多かったため、1件当たりのホームステージング費用はかなりおえられていたように思えます。しかし、ホームステージングの効果が広く認知され始めたことで、単にホームステージングを実施するだけでなく、対策の質が強く求められるようになっているのです。

そのため、今まで自社の従業員を使って作業を行っていた不動産会社なども、ライバル物件との差別化を目的に専門業者に作業を依頼するケースが多くなっているようです。ただ、ホームステージング自体の知名度が高くなってきた昨今では、新たにホームステージングサービスを展開し始めた業者が増えています。ホームステージング業界では、価格競争やサービスの多様化が行われるようになっているため、今後は専門業者への依頼がもっとしやすくなっていくのではないかと期待されています。