2025.08.03

ホームステージング専門業者への依頼が増加!ホームステージング実施方法の最新状況をご紹介

昨今の不動産業界では、中古住宅市場、賃貸物件市場共に、ホームステージングへの注目度が高まっています。ホームステージングは、もともと中古住宅市場が活発なアメリカで誕生し、中古住宅の売却を促進するための工夫として広く普及しています。日本では、新築物件に対しては、モデルルームやモデルハウスを用意するという販促手法が取り入れられていたものの、中古住宅市場や賃貸物件市場では、空室状態で集客するという手法が当たり前でした。

しかし、少子高齢化が進む日本では、空き家の増加が社会問題化するなど、全国的に「家が余る」という傾向が強くなっていて、中古住宅や賃貸物件を市場に出したとしても、ライバル物件が多すぎてなかなか成約までは至らないという状況に陥っています。そこで、不動産の仲介を担う不動産会社などを中心に、ホームステージングへの期待感が高まり始め、ここ数年で一気にホームステージングを実施する方が増加し始めているのです。ホームステージングは、売却・賃貸予定の不動産の内装を家具やインテリアなどを使ってコーディネートすることで、物件の魅力を引き出す手法のことを指しています。空室状態と比較すると、物件を見た時の印象が大幅に良くなることが期待できるため、購入希望者に「ここに住みたい!」と思わせることができ、早期売却や高値での成約を目指すことができるわけです。

それでは、不動産の売却や賃貸を促進するため、物件にホームステージングを実施すると決めた時、その対策は「誰が?」実施しているのでしょうか?この記事では、ホームステージングの実施方法と、現在の不動産業界は「誰が?」ホームステージングを実施するようになっているのかについて解説します。

ホームステージングの実施方法について

ホームステージングは、売り出し中の中古物件や空室状態の賃貸物件に対して、その内装を家具やインテリア、照明などによって魅力的な空間になるよう演出するという対策です。不動産の取り引きでは、売買でも賃貸でも、最終的な判断を下すため、実際の物件を内覧するという工程を挟みます。ホームステージングは、この内覧の段階において、出来るだけ良い印象を与えられる空間にコーディネートすることを目的としています。

先ほど紹介したように、中古住宅市場や賃貸物件市場は、空室状態の部屋を内覧してもらうという方法が一般的でした。しかし、内覧者からすると、空室状態で内覧しても部屋のサイズ感が分かりにくい、入居後の生活をイメージしにくいといったデメリットが生じ、「悪くはないけど決め手がない…」「どこにでもある物件だな」など、その物件に住んでみたいというまでの好印象を受けるケースは少ないのです。これが、ホームステージングを実施し、部屋の中が素敵な空間に演出されている場合、入居後の生活をイメージしやすくなるため「ここに住んでみたい!」と思わせることができ、早期の成約に繋がる可能性が高くなるとされているのです。ホームステージングは、物件のターゲットとなる人を想定し、その人たちに最も良い印象を与えられるような部屋にコーディネートするため、内覧時の印象は大幅に良くなると期待できるのです。

それでは、不動産の売却や賃貸を促進できるとされるホームステージングは、いったい誰が実施する物なのでしょうか?空室状態の部屋に家具やインテリアを設置する方法と聞くと、時間と手間をかければ誰にでも実施できる対策のように感じます。実際に、ホームステージングが普及し始めた当初は、コストを抑える目的でDIYによるホームステージングの実施割合がそれなりに多かったです。そこでここでは、昨今の不動産業界で注目を集めているホームステージングについて、主な実施方法をご紹介します。

物件オーナー様自身がホームステージングを実施する(DIYパターン①)

先程からご紹介しているように、ホームステージングは売却や賃貸を検討している物件に対して、部屋の中に家具やインテリアを設置するという方法です。ただ、内覧者の印象を良くする対策という点で見ると、部屋の中を綺麗に掃除する、内覧当日にフレグランスを設置して良い香りの空間にするといった対策も、ホームステージングの一種と言えます。実際に、専門業者にホームステージングの実施を依頼する場合、家具などの設置以外にも、ハウスクリーニングや内装クロスの修繕など、軽微なリフォームをホームステージングの一環として依頼することができるようになっています。

物件オーナー様自身がホームステージングを実施する場合、専門業者に作業を依頼することと比較すると、コストが抑えられる点がメリットとみなされています。特に、住みながら物件の売却を進めるというケースでは、既存家具を活用したホームステージングが可能になるため、コストを大幅に削減することができるのです。また、単身者向け賃貸物件の場合、部屋数が少ないことから、配置しなければならない家具やインテリアが少なく、物件オーナー様自身が実施する場合でも、短時間で作業を完了させることが可能です。専門業者に依頼する場合、業者探しから始まり、打ち合わせに見積りの提出、ホームステージング作業などと、対策が完了するまでにそれなりの時間を要してしまう可能性があります。この場合、空室物件の客付けがその分遅れることになるため、賃貸経営を圧迫する可能性も考えられ、「それなら自分で…」と考える人がいるのだと思います。

物件オーナー様自身が、DIYでホームステージングを実施するという方法は、対策に掛けるコストを削減できる、対策にかかる時間を短縮できる点などがメリットになります。しかし、家具やインテリア、コーディネートの知識が何もないという方の場合、見当違いな対策となってしまうことで、ホームステージングが本来持つ効果を全く発揮できなくなる可能性があるので注意しましょう。特に、ホームステージング用に、新たに家具やインテリアを購入するという場合、それなりのコストがかかってしまう訳なので、「専門業者に依頼するよりコストを抑えられる」というメリットも打ち消されてしまう可能性があります。他にも、水回りの掃除などについては、プロに依頼するのと比較すると、その仕上がりは大きく劣る可能性があるため、物件の魅力を向上できないなど、根本的な部分でホームステージングに失敗する可能性もあるのです。

ホームステージングは、文字だけで説明されると、誰にでもできそうな簡単な対策のように思えます。しかし、当然そのようなことはなく、さまざまな面に対する専門知識と高い技術が求められる対策なので、初心者にはなかなか難しいと考えた方が良いです。

不動産会社がホームステージングを実施する(DIYパターン②)

DIYによるホームステージングについては、物件オーナー様自身が実施するケース以外に、仲介を担う不動産会社が実施するケースが増えています。日本の中古住宅市場でホームステージングが注目され始めたのは、仲介業者がホームステージングを取り入れ始めたのが要因でもあるわけなので、空室を早く埋める、高値で売却することを目的に、不動産会社がホームステージングを実施するのは当然のことかもしれませんね。

不動産売買・賃貸の仲介を担う不動産会社は、一般の方よりも不動産に対する知識は明るいです。物件の特徴から、どのような層の人たちがターゲットとなるのか正確に判断することができるため、物件オーナー様自身が実施するホームステージングと比較すると、正しい方向性の対策になると期待することができます。
不動産会社は、どこもそれなりの人数の人員を抱えているため、大型家具などを使ったホームステージングも人家戦術で実施することが可能です。また、不動産の仲介業務を継続的に行う企業であるため、ホームステージングに使用する家具やインテリアを購入しても、使いまわすことができるので家具やインテリアの購入費用についてそこまで気にする必要がなくなります。そのため、物件オーナー様自身がホームステージングを実施することと比較しても、さらに対策にかかるコストを抑えられる傾向にあるのです。

注意点としては、不動産会社の従業員は、ホームステージングが本業ではないという点です。単身者向け物件など、部屋数が少ない物件に実施するホームステージングの場合、数時間で対策を施すことも可能ですが、中古戸建て住宅の売却などの場合、部屋数が多いためホームステージングの作業量も多くなってしまうのです。売却のためにはハウスクリーニングやクロスの修繕が必要…などという場合、数日から数週間かけて対策を実施しなくてはならなくなることも考えられ、その間は本業に手を付けることができなくなるため、企業としての生産性が低下してしまう恐れが生じるのです。
また、不動産会社は、物件の売却や賃貸に関する専門家であることは確かですが、ホームステージングの専門家を抱えている企業は少ないです。ホームステージングは、不動産業界に係わる知識が必要であることは確かなのですが、それ以外にも家具やインテリア、部屋のコーディネートに係わる知識など、通常の不動産仲介業務では必要とされない知識も多く必要になります。そのため、不動産会社がDIYでホームステージングを実施した場合も、効果の出せない対策となってしまうケースが多々見受けられるのです。この場合、ホームステージングに時間をかけるあまり、本業の生産性が落ちたうえ、ホームステージングの効果も出ない…という本末転倒な状況に陥る可能性があるので注意しましょう。

ちなみに、ホームステージング用に家具やインテリアを購入する場合、維持管理にコストがかかることも想定しておかなければいけません。物件が成約すれば、家具やインテリアを速やかに撤去するのですが、継続的に使用することを想定する場合、その家具などを保管する倉庫を用意しなければいけません。また、ホームステージングに使用する家具は、塗装剥がれや金属部のサビなどがあってはならないため、普段から小まめにメンテナンスしてあげる必要があります。つまり、自社でホームステージング用のアイテムを用意する場合、継続的にコストがかかってくる可能性があると考えなければいけません。

ホームステージング会社に依頼する

日本国内でもホームステージングの注目度が高くなっている昨今では、ホームステージングサービスを展開する専門業者が増えています。人口減少による空き家の増加が問題視され始めた昨今では、国や自治体が中古住宅市場を後押しするようになっています。ただ、全国的に空き家が増加している昨今では、今まで通りに空室状態で売りに出したのではライバル物件との差別化が難しく、所有者が希望するような価格で売却することが難しくなっているのです。そのため、欧米などで中古住宅を高く、早く売るための方法として認知されているホームステージングが日本でも実施されるようになっているのです。

専門業者にホームステージングを依頼する場合、上で紹介したDIYによる対策では難しい部分まで対処してもらうことができます。現在では、ホームステージング会社のサービスも多様化していて、以下のようなサービスを受けることができるようになっています。

  • 家具やインテリア、照明などを配置することで魅力的な空間にする
  • プロによる写真撮影
  • ハウスクリーニングを実施してもらう
  • リフォーム(原状回復)、部分的な修繕
  • 外構部分の手入れ(草刈りや庭木のカット)
  • 不要家財回収・リサイクル
  • 家具やインテリアの販売
  • 消臭・芳香
  • 共用部の美化(屋外エリア含む)
  • 家財の一時保管
  • バーチャルホームステージング

不動産の売却や賃貸を検討している場合でも、それぞれの物件の状況は大きく異なります。築年数が浅い物件の場合、家具やインテリア、照明などを使って空間を演出するだけで、内覧者のイメージを良くすることができるかもしれません。しかし、築年数がある程度経過した物件の場合は、お風呂やトイレ、洗面台など、水回り設備などの汚れがひどく、家具などの配置だけでは物件のイメージを向上させることが難しいケースがあるのです。また、長年空き家状態で放置されていた物件は、お庭が荒れ果てていることを理由に買い手が付かないケースも考えられるでしょう。

昨今のホームステージング業界は、物件の状態に合わせて「最も高く売れるようにするため」「できるだけ早く売れるようにするため」に必要なさまざまな対策を請け負ってくれるようになっています。DIYによるホームステージングでは、どうしても手が届かないような対策でも実施可能な業者があるため、複数のホームステージング会社に相談して必要な対策が何なのかを提案してもらえるという点は非常に大きなメリットになります。

ただ、DIYによるホームステージングと比較した場合、対策にかかる費用がどうしても高くなってしまう点は注意が必要です。依頼するホームステージング会社や、どのような作業を依頼するのかによって費用感は変わりますが、専門業者にホームステージングを依頼する場合は10~35万円程度の費用が相場となっています。

※上記以外にも、仮想空間上でホームステージングを実施するバーチャルホームステージングという方法もあります。これについては、以下の記事で詳しく解説しているので、そちらを確認してください。
関連記事:バーチャルホームステージングとは?リアルとの違いやVRのメリット・デメリット

ホームステージング専門業者への依頼が増加

ホームステージングの実施方法については、前項でご紹介したように、「DIY(自分で)実施する」以外にも「専門業者にホームステージングをしてもらう」という方法があります。ホームステージングの実施にかかるコストの面だけを考えると、「家具を配置するだけなら自分でできる」と考える方が多いかもしれません。

しかし、日本ホームステージング協会が毎年公表しているホームステージングに関する調査によると、最近の不動産業界では、DIYではなく専門業者に依頼してホームステージングを実施するというケースが増えているようなのです。そこでここでは、ホームステージングの現状を理解するためにも、2023年から2024年にかけて、ホームステージングの実施方法がどう変わってきているのかをご紹介します。

最新のホームステージング実施状況について

ホームステージングは、中古物件の売却の際、高値での売却や早期の売却を目指す、また賃貸物件であればできるだけ早く空室を埋めるということを目的に実施します。つまり、ホームステージングは販促手法の一環として中古住宅市場や賃貸物件市場で取り入れられ始めているのです。

そして、当然のことではありますが、販促のために実施する対策は「できるだけコストを抑えたい」という考えが思い浮かびます。実際に、2023年までの売買物件におけるホームステージングについては、以下のように『DIY(自分で)で実施している』という回答が多かったというデータがあります。

■ホームステージングの作業をした人は?(2023年不動産売買)

  • 不動産会社自社:58.2%
  • ホームステージング会社:25.5%
  • 売主自身:20.0%
  • その他:5.5%

上記は、複数回答可で行ったアンケート調査です。上のデータから分かるように、2023年度は、不動産売買においては、専門業者ではなく売主自身や仲介業者などがDIYで実施するというケースが非常に多かったようです。

しかし、2024年度のデータを確認すると、この状況が一変していることが分かります。

引用:ホームステージング白書2024年

このように、2024年度の不動産売買の部門においては、専門業者に依頼しているという回答の割合が一気に伸びて、1位になっているのです。ちなみに、賃貸部門に関しても、2023年と比較すると、専門業者に依頼するという回答の割合が増えていますが、賃貸物件は対策にかけられるコストにどうしても限界があるため、2024年度もDIYによる実施割合が多いです。

不動産売買部門において、「ホームステージング専門業者に依頼する」という回答が増えている理由は、高価格帯物件の売却でホームステージングが非常に有効な手段とみなされるようになっていることが要因のようです。都市部では、中古マンション市場が活発化していると言われているのですが、人口減少の影響もあり、高値での売却を実現するには、ライバル物件との差別化が非常に重要とみなされるようになっています。そのため、ホームステージングによる差別化のニーズが高まっているのですが、演出の質が求められるようになったことで、DIYではなくプロのホームステージャーへの依頼が急増していると分析されています。

また、日本でもホームステージングの効果が認知され始めていて、ホームステージングサービスを取り扱う企業が増えてきたことで、サービスの多様化が進んでいます。それにより、導入しやすい価格帯のプランが提供されるようになったことも、専門業者への依頼が増加している要因の一つと考えられます。

ホームステージングを専門業者に依頼する人が増えている理由

前項でご紹介したように、ホームステージングの実施方法については、年々「専門業者に依頼する」という方が増えています。これは、不動産売買、賃貸業界共に、早期成約などを目指してホームステージングを実施する不動産会社が増加してきたことが要因の一つと考えられるでしょう。ホームステージングという手法が、日本で認知される以前は、「ホームステージングを実施している」ということだけでライバル物件との差別化が可能でした。しかし現在では、物件の売却や賃貸を促進するため、ホームステージングを実施する物件が増えていて、単に「ホームステージングを実施している」という部分だけでは差別化することが難しくなっているのです。多くの物件がホームステージングを実施するようになった昨今では、ステージングのクオリティが求められるようになっていて、DIYによる対策では効果を出せなくなったため、プロに依頼するようにしているという不動産会社も多くなっています。

また、2024年度のホームステージング白書を確認してみると、「ホームステージングを実施する基準」から「なぜ専門業者への依頼が増加しているのか?」が見えてきます。

■不動産売買部門での「ホームステージングを実施する基準」
引用:ホームステージング白書2024年

■不動産賃貸部門での「ホームステージングを実施する基準」
引用:ホームステージング白書2024年

上記は、不動産売買と賃貸部門におけるホームステージングの実施基準のアンケートデータです。

売買部門では、築古物件や利便性が悪い立地など、何らかの要因で売れにくいと考えられる物件は積極的にホームステージングが実施されています。賃貸物件では、長期空室が生じている物件に対して、その打開策としてホームステージングが実施されているようです。

ここで注目してほしいのは、売買、賃貸部門共に、高額物件にホームステージングを実施するという回答が2位になっている点です。ホームステージングの実施基準について、高額物件という条件は、2023年以前は毎年下位に位置していたのですが、2024年度の調査では一気に上位に食い込んでいるのです。これは、東京都内などを中心として、都市部において、不動産価格の高騰や高額物件の増加、家賃の上昇などが進んでいるため、物件の差別化ニーズが高まり、それに比例する形でホームステージングが増加していると分析されています。そして、高額物件でのホームステージングは、やはりクオリティの高さが求められるため、DIYではなく、プロのホームステージング会社への依頼増加につながっているのだと考えられます。

まとめ

今回は、不動産業界で注目を集めているホームステージングについて、その実施方法や専門業者への依頼が増加している要因などについて解説しました。

記事内でご紹介したように、ホームステージングは、コストを抑える目的で、物件オーナー様自身や仲介を担う不動産会社が実施するというケースも多いです。しかし、最新版のホームステージング白書によると、2024年度になってからホームステージングの実施を専門業者に依頼するケースが一気の増加していることが分かったのです。

これは、多くの物件がホームステージングを実施するようになったことから、ライバル物件との差別化をするには「ホームステージングのクオリティが求められている」ことが要因の一つでしょう。また、東京都内や大阪市など、都市部では高額物件が増加していることもあり、それらに対するホームステージングは素人では難しいと考える人が多いのだと思います。高額物件のホームステージングでは、使用する家具なども高級感を求められますし、ホームステージングが本業ではない不動産会社などが用意することは難しいと考えられるわけですね。

ホームステージングは、日本国内でもその効果が認められ、多くの物件が取り入れ始めているため、差別化には高いクオリティが求められていると考えてください。