2025.10.27

ホームステージングで家が売れる理由!欧米との取り扱いの違いもご紹介

ここ数年、不動産の売却、賃貸ともに、早期の成約を手助けしてくれる手法としてホームステージングが大きな話題を集めるようになっています。実際に、インターネットや雑誌などで、ホームステージングという単語を見聞きする機会が増えた…という印象を持っている方は非常に多いのではないでしょうか?

このホームステージングは、中古住宅の売買において、より高値での売却を目指せる、早期に買い手を見つけられる方法として日本でも注目されるようになったのですが、2025年現在では、中古住宅の販売業だけでなく、賃貸市場や引っ越し関連業、リフォーム業などと、幅広い業種の人たちから目が離せない存在になっていると言われるようになっています。

ただ、ホームステージングについては、この対策を施すことで「なんで家が売れるようになるのか?」という点に疑問を感じる方もまだまだ多いように思えます。そこでこの記事では、ホームステージングがそもそもどのような対策で、なぜ家が売れるようになるのかについて解説していきたいと思います。ちなみに、ホームステージングは、1970年代のアメリカで誕生した方法なのですが、日本で実施されるステージングと欧米のステージングでは違いがあるとされているので、その辺りについても解説します。

ホームステージングの概要と歴史

ホームステージングは、中古住宅市場が活発なアメリカで誕生した手法です。もともと欧米では、中古物件の売買が日本よりも盛んに行われていたのですが、近隣のライバル物件と差別化し、より高値で売却するためにはどうすれば良いのかということが考えられ、1970年代に「物件内に家具などを配置して魅力的な空間に見せる」というホームステージングという販促手法が開発されたのです。その後の欧米諸国では、ホームステージングを施すことで、より高く、より早く中古住宅が売却できるという認識が広がっていったとされ、現在では、市場に出る中古物件の8割以上にホームステージングが実施されているという国もあるようです。

ちなみに、ホームステージングとは、英語の「HOME(家)」と「STAGING(演出する)」を組み合わせた造語です。その意味は、「家や部屋を素敵な空間に演出する」というものなのですが、一般の方が日常生活の中で部屋にインテリアを配置して装飾を楽しむという事とは少し異なります。

ホームステージングの「HOME」が指しているのは、主に中古の一戸建て住宅や分譲マンションなど、今後売却を考えている、もしくは既に売却活動が実施されているような物件です。近年では、ここに賃貸物件も含まれるようになっていますが、基本的には「売りに出す中古住宅や中古マンションを綺麗に装飾して見栄えを良くすることで、購入希望者の印象を良くする」という方法がホームステージングなのです。そのため、ホームステージングの説明を行う時には、誰にでもその内容が分かりやすくなるよう、「中古住宅をモデルルームのように演出する対策」と紹介されることもあるのです。

なお、アメリカなどでは、家の売却時にホームステージングを実施するかしないかで、販売スピードが大きく変わるとされていて、なんとホームステージングを実施した中古物件は、していない家の売却と比較すると、その販売スピードが300%近くも早くなるとされています。このような効果がみとめられ、日本国内でも2000年に入った頃からホームステージングが実施されるようになっています。

日本独自のホームステージング

上述の通り、ホームステージングは、アメリカで誕生し、その効果が欧米各国で広く認められたこともあり、日本でも取り入れられるようになった販促手法となります。

ただ、日本国内におけるホームステージングについては、欧米各国とは少し異なる面があります。これは、日本は、アメリカで広まったホームステージングでは直面していないような、高齢化や人口減少、空き家の急増など、住環境の悪化から起こるさまざまな問題が表面化しているためで、ホームステージングに求められるものが諸外国とは少し異なっているのです。

例えば、現在の日本は「大相続時代」を迎えていると言われています。これは、団塊の世代の全てが後期高齢者となる2025年頃から本格化すると言われている問題で、親が住んでいた実家を相続するというケースが急増し、相続によって不要な不動産を承継することで、さらに空き家が増加することが問題視されるようになっています。
相続した実家の売却では、そのまま家具などを配置するわけにはいかず、事前に片付けや整理整頓を行うことが要求されます。実際に、日本国内におけるホームステージングは、依頼者の状況や気持ちに寄り添い、家の片づけを行うという遺品整理などのサポートも含まれているとされ、欧米とはかなり異なる作業が実施されているのです。また、国土の狭い日本では、家の片づけで発生した廃棄物については、廃棄物処理法をはじめとするさまざまな法令を遵守しながら、適切な対処が必要になるなど、より複雑化しているのです。

つまり、日本におけるホームステージングは、日本の住宅事情やライフスタイルに合わせながら、日本独自の形に変化しているのです。

ホームステージングを施すことでなぜ中古物件が売れるのか?

中古住宅市場において、その効果が認められているホームステージングですが、この対策を施すことで家が売れるようになる理由はどこにあるのでしょう?

ホームステージングは、中古住宅の内部をキレイに装飾することで、物件がより高く売れる、より早く買い手がつくとされているので、ここではその理由について解説します。

空室ならではの問題を解消できる

前入居者が既に退去した後に物件の売却活動を進めるケースでは、中古マンション、中古一戸建て物件関係なく、従来の販売方法では、ガランとした空室状態のまま購入希望者に内覧をさせるという方法が採用されていました。日本は、新築信仰という言葉が作られているように、家の購入を検討している方の多くが新築物件を求める傾向が強かったこともあり、中古物件の売買では、モデルルームのような手のかかる販促手法は採用されなかったのです。

しかし、賃貸物件や中古住宅を探した経験があるという人ならわかると思うのですが、ガランとした空室状態の物件を内見した時には、以下のようなさまざまなマイナスイメージを見学者に与えてしまう可能性があるのです。

■入居後の生活イメージが湧きにくい

従来の内見、内覧方法では、空室状態のまま見学してもらうという方法が一般的だったのですが、この場合、他の物件との違いが分からない、部屋のサイズ感がつかみにくく、入居後の生活イメージが湧かないといった意見が出るケースがあり、なかなか成約に至らないという状況に陥ることも多いです。

実際に、過去に行われたアンケートでは、空室状態の物件を見学した人のうち、「部屋にどんな家具を置くか?どのように暮らすのか?」をリアルにイメージできる人は全体の15%程度にとどまったというデータもあるのです。そこでの生活がイメージできなければ、借りるor買うという決断はなかなかしにくいはずです。

■冷たい印象を与える

二つ目は、空室のままで見学させたときには、暖かみのない部屋に見えてしまい、冷たい印象を与える可能性が高いとされています。特に、天候の良くない日や日当たりの悪い部屋、夕方以降の内見の場合、備え付けの蛍光灯のみで部屋の中が照らされることになります。この場合、家具なども何も置かれていないことから、どうしても室内が薄暗く感じられてしまい、部屋の印象として冷たさが目立ってしまうと言われています。

■殺風景な印象を与える

空室状態のまま内見させる場合、家具はもちろん、カーテンやラグなどのファブリック類や壁面装飾なども何もありません。

当然、このような部屋に入った時には、病室のような殺風景さを感じてしまい、本来は良い物件だとしても、寂しい印象を与えてしまうことになるのです。

■部屋の欠点が目立つ

家具などのエレメントが一切ない部屋の場合、見学者の目線は、以下のような部分に集中しがちです。

  • 窓の大きさ
  • 日当たり
  • 窓からの景観
  • 水回りの設備や広さ
  • 部屋に備え付けられた設備などの機能や新しさ

空室状態の部屋は、空間そのものの印象を左右することができないため、どうしても上記のような部分に注目されがちです。そして、それらの部分に何らかの弱点が存在している場合、悪い印象がダイレクトに伝わってしまうのです。例えば、日当たりが今一つ、窓からの景観が悪い…など、何かしらの欠点がある場合、その部分にばかり目が行くようになってしまうことで、部屋の印象そのものを悪くする可能性があるのです。

空室状態のまま物件内を見学した時には、上記のように、悪印象を持たれてしまう可能性が残ります。これが、ホームステージングを実施して、家具やインテリア、照明などで空間演出を行えば、上記にあるようなマイナスイメージを見学者に与える可能性が減り、よりポジティブな印象を残すことができるようになるのです。

ホームステージングは、もともとある物件の問題点を目立たなくさせ、さらに物件の良さを引き出すことができるため、売却に有利に働くのです。

居住中の物件売却の場合、生活感が薄れる

中古住宅の売却では、販売活動中も持ち主が住んでいるというケースは珍しくありません。実際に、中古住宅の売却活動のうち、約6割は「住みながら家の売却を目指す」という方法を選択しているというデータもあるのです。

この場合、日常生活を進めている部屋を見学してもらう、もしくは居住中の物件内を撮影し見学者が見るということになるのですが、空室物件の内見時とは真逆の欠点が生じてしまうのです。上述したように、空室にしてから販売活動を行う場合、内見時の殺風景さなどが弱点になるのですが、居住中の家の売却では「生活感が残りすぎてしまう」ことが販売時の大きな弱点になってしまうことがあるのです。具体的には、以下のような問題で、買い手が見つけられない…となるケースが多いです。

■ものが多くゴチャゴチャしているように見える

居住中の家の売却で問題になりがちなのが、生活に使用する家具や家電、日用品など、家の中にとにかく多くの荷物があることで、散らかってしまうという点です。収納力にも限界があるため、片付けたいと思っても、なかなかスッキリ綺麗に見えるようになるまでは片付けることができません。また、内覧に備えて、不要な荷物をどこかの部屋に詰め込んだ場合、その部屋を購入希望者に見せることができなくなることで、不信感を与えてしまう可能性もあるでしょう。

一般的に、新築マンションや新築戸建てのモデルルームの場合、見学者に良い印象を与えるためのコーディネートを行う際も、家具や小物を含めても、1部屋当たり100点前後のアイテムで装飾を行うとされています。しかし、実際に人が住んでいる家の場合は、目に見える場所にある荷物だけでも5,000点近くの数になるケースもあるとされているのです。
家の中のあちこちにモノがたくさん出ている…という状況は、生活感が出過ぎてしまい、内覧者は家の良さに気付けなくなることが多いです。

■汚れや使用感が気になる

居住中の家の売却は、日常生活をそこで進めならが、売却活動を並行して行うという方法になります。そのため、家の中は、生活による汚れやキズがどうしても残ってしまうのです。

内覧時には、「引渡し前にキレイに直します」「売却前にハウスクリーニングが入ります」と言った説明が行われますが、見学者にとっては、目の前にある物件が汚れているわけなので、その家に良いイメージを持つことは難しいはずです。家の売却では、壁紙のちょっとした汚れや水回りの汚れなど、ちょっとしたお手入れの違いで、見学者の購買意欲が大きく左右されてしまうので注意が必要です。

ホームステージングは、上記のような居住中の家の売却でも、その力を発揮します。先程紹介したように、日本独自のホームステージングは、片付けや整理整頓、クリーニング作業なども領域に含まれているため、居住中の物件であっても、部屋の片づけやクリーニングを行ったうえで、魅力的な部屋になるようにコーディネートしてもらうことができるのです。
日本国内で、ホームステージングの人気が高まるにつれ、対応可能なサービスの幅もどんどん拡大していっています。最近では、居住中の物件売却の際には、既存家具をレンタル家具に交換するのに合わせて、一時的に荷物を預かってくれるサービスがあったり、不用品を回収、リサイクルしてくれるような業者も登場しているのです。

ホームステージングは、どうしても散らかっているというイメージを与えがちな居住中の家でも、「美しく暮らしている家」を演出することができ、内覧者に「自分もこんなふうに暮らしたい、暮らせる」というイメージを与えることで、早期の成約を後押ししてくれるのです。

日本と欧米では、ホームステージングに使用する家具の扱いが違う

不動産業界で、中古住宅の高値売却や賃貸物件の早期成約を目指す方法として非常に効果的な手法とみなされるようになったホームステージングですが、部屋の演出を行うためには、家具やインテリア小物、照明などが必要になります。

それでは、ホームステージングに使用する家具などについては、どのようにして準備されているのでしょうか?実は、ホームステージングにおける家具の取り扱いについては、日本と欧米では調達方法やステージング後の取り扱いが異なる場合が多いのです。ここでは、その辺りについて簡単にご紹介します。

欧米では「購入・買取方式」で家具が準備されるケースが多い

アメリカなど、欧米におけるホームステージングでは、中古住宅と家の中を装飾している家具について、そのままセットで販売してしまうというパターンが意外に多いとされています。家具類については、テーブルやソファ・照明など、大型家具はもちろんとして、カーテンやラグなどのファブリック類、食器類や壁面装飾に使用している小物など、まとめて販売するという形式になっていることも珍しくないのです。

なお、中古の家と家具をセットで販売するというケースでは、以下のようなパターンがあるとされています。

  • 室内をコーディネートする家具は、基本的に居住者がもともと使用していた物を使い、家とセットで売る
  • 専門業者にホームステージングを依頼してからイメージに合うインテリアを選んで、その家具を購入してから売却活動を始める

家具付きのまま家の売却を進めるという方法は、あまり日本ではなじみがなく、驚く方が多いかもしれません。しかし、日本以外の諸外国では、賃貸物件でも家具付きの物件が主流になっている国が多く、そういった国では、中古物件の売買においても、家具付き物件の方が人気になる傾向があるとされているのです。そのため、ホームステージングによって、内装と合ったセンスの良い家具やインテリアを用意すれば、家を購入した時よりも高く売れることもあるとされているのです。

ちなみに、日本にホームステージングが導入され始めた初期においては、ホームステージングに使用する家具などを依頼者が購入(もしくは既存家具を使う)したうえで、家とセットで販売するという方式が選ばれるケースが多かったとされています。しかし現在では、この家具とセットで家を売却するという方法は選ばれなくなり、以下で紹介する形式が主流となっています。

日本では「レンタル方式」で家具が準備されるケースが多い

現在、日本国内におけるホームステージングでは、室内をコーディネートするための家具やインテリア、照明や植物については、レンタルで用意するという方式が主流となっています。

専門業業者にホームステージングについて相談すれば、有資格者であるホームステージャーが物件のターゲット層が好むインテリアスタイルを検討して、インテリアコーディネートや配置場所をしっかりと練っていきます。そして、部屋をコーディネートするための家具などについては、スタイルに合う家具(ソファ、テーブル、チェア等)を専用の業者からレンタルして、配置していくという方法がとられているのです。なお、家具やインテリア、照明などの設置に関しては、ホームステージング業者が行います。

レンタル方式の場合、物件の売却先が決まったら、レンタル契約を終了し、ステージングに使用していた家具を搬出して返却するのが一般的です。ただ、一部の業者の中には、基本的にはレンタル扱いとしておき、物件の購入者が希望する場合、家具の買取りも認めてくれるという選択肢を用意している場合もあります。

なお、居住中の家の売却の場合、家具は居住者が使用しているものをそのままホームステージングに使用するケースも少なくありません。ただし、家具の点数が多すぎる、インテリアのスタイルが揃っていないなどという場合、一時的にホームステージング業者が既存家具を預かり、レンタル家具に入れ替えするというケースも多いです。既存家具がそのまま使用できる場合には、照明やインテリア小物だけをレンタルで用意して、アクセントを加えるといった対策が施されるケースが多いです。

まとめ

今回は、日本国内の不動産業界でも大注目を集めるようになったホームステージングについて、その概要や諸外国と日本のホームステージングの違いなどについて解説しました。

ホームステージングは、もともと中古住宅の売却を促進するための手法として、1970年代のアメリカで誕生したとされています。その後、欧米各国で効果が認められる容易になり、2000年代に入ってから日本国内の中古住宅市場でも取り入れられるようになったのです。ホームステージングによる販売促進効果については「本当なのかな?」と疑問に感じる人もいますが、実施した人の声などを調べてみると、3年売れなかった物件がホームステージングを実施することで1カ月で売却できたなど、驚くような内容の事例を見かけることも多くなっています。もちろん、ホームステージングを実施すれば、必ず買い手が見つかるというわけではありませんが、売却できる可能性が高くなるのは間違いないと言えます。

ホームステージングは、日本国内で独自の進化を遂げ、諸外国では考えられないほどの手厚い内容の対策を施してもらうことができるようになっています。ただ、実施を依頼できる作業内容については、ホームステージング会社ごとに異なるので、その点は注意して、依頼する業者を探すと良いです。