2025.06.24

ホームステージングは自分でできる?代表的な実施方法と失敗を避けるためのポイント

ホームステージングは、不動産の売却や賃貸を促進させることができる方法として、年々その注目度が高くなっています。賃貸物件に対するホームステージングは、ファーストアプローチの段階でライバル物件よりも目立たせることができるようになるため、成約率を高めて、空室期間を短縮するのに非常に有効な手段と看做されるようになっています。また、不動産の売却を検討した時には、ホームステージングを施すことで、物件の魅力を最大限まで引き出すことができるようになり、早期売却だけでなく、不要な値下げ交渉を防止することで高値で売り抜ける可能性が高くなるとされているのです。実際に、ホームステージングの本場である欧米では、ホームステージングをして売りだした物件は、ホームステージングをしていない物件と比較すると、売却期間が半分になり、さらに希望価格よりも6%以上の高値で売却できたという調査データもあるようです。

日本でも、年々ホームステージングへの注目度が高くなっていて、不動産の売却、賃貸ともに、この手法に取り組んでみようかと考えている方が増えています。ただ、ホームステージングは皆さんが考えているほど単純で簡単な対策ではなく、ホームステージングを実施したからと必ず不動産の取り引きが有利に進むとは言えないのが実情なのです。

そこでこの記事では、代表的なホームステージングの実施方法をご紹介したうえで「ホームステージングは自分でできるのか?」とお考えの方が注意しておきたい失敗事例などを解説します。

ホームステージングの実施方法について

それではまず、ホームステージの実施方法について解説します。

そもそも、ホームステージングとは、売り出し中の中古物件や空室状態の賃貸物件について、内装を家具やインテリア、観葉植物や照明などを使って内見した人に良い印象を与えられるよう、魅力的な演出を施すことを指しています。ホームステージングの主な目的は、物件の購入や賃貸を検討している方に対し、物件をより魅力的に見せることで、スムーズに成約まで話を進めることとされています。このホームステージングは、1970年代のアメリカで誕生したとされていて、中古住宅市場が活発な欧米では、中古物件の売却時には当たり前に実施される取り組みとなっています。

それでは、ホームステージングの実施については、どのような方法があるのでしょうか?「物件の内装を家具やインテリアなどを使って演出する」と聞くと、なんだかとても簡単そうに聞こえホームステージングは自分でできるのではないかと考える人も多いと思います。実際に、いくつかの注意点はあるものの、DIYによりホームステージングを実施することは不可能ではありません。
そこでここでは、物件の売却や賃貸を促進させるためのホームステージングについて、代表的な実施方法についてその特徴と注意点を解説します。

自分で(DIY)ホームステージングを実施する

ホームステージングは、部屋の中を家具やインテリアなどを使って装飾する方法です。そのため、インテリアやコーディネートに関する知識を持っている方であれば、自分で対策を施すことも可能で、実際に、最近では手軽にできるホームステージングの方法として人気を集めています。

DIYによるホームステージングは、下で紹介する専門業者に依頼する方法と比較すると、コストを抑えられる点がメリットになるでしょう。専門業者に依頼する場合、プロの目線で適切な対策を提案、実施してもらうことができるものの、どうしても費用がかかってしまうことになります。そのため、賃貸物件でのホームステージングの場合、費用対効果のことを考えると、なかなか専門業者に相談することができない…なんてケースも考えられます。単身向けの賃貸物件などの場合、配置しなければならない家具やインテリアも少ないですし、短時間で実行できる空室対策としては有効に働くのではないでしょうか?

ただ、注意が必要なのは、大規模なホームステージングが必要というケースでは、準備に時間がかかりすぎてしまう、中途半端な対策になりホームステージングの意味をなさないなんてケースがあることです。例えば、築年数が経過した物件などは、家具を配置するだけでは物件の印象が良くならない…なんてことも多いです。専門業者に相談すれば、ハウスクリーニングや壁紙の張り替えなど、物件が良く見えるために必要な作業をすべて手配してもらうことができるのですが、DIYによる作業はどうしても限界が生じてしまい、内見した人に良い印象を与えるところまでいかない…なんてこともあるのです。当然、中途半端な対策になると、ホームステージングを実施した意味が全てなくなってしまうので、そこまでに掛けた時間や手間、コストはすべて無駄になってしまいます。DIYによるホームステージングは、実施できる範囲にどうしても限界が生じるという点は注意しましょう。

この他、インテリアや家具、部屋のコーディネートに関する知識が何もない…なんて人の場合、見当違いな対策になる可能性が高いので、初心者には難しいと考えておきましょう。

専門のホームステージング会社に相談する

二つ目の方法は、ホームステージングサービスを展開している会社に相談するという方法です。昨今は、日本でも中古住宅市場が活性化していて、それに引っ張られる形でホームステージングの需要が高くなっているのです。そして、ホームステージングの需要の高まりを受け、ホームステージング業界に進出してくる会社も増えています。

専門業者にホームステージングの実施を依頼すれば、物件の最適なターゲットを絞り込み、それに最適なホームステージングの計画を提案してもらうことができます。さらに、ホームステージングに必要な家具やインテリアについて、業者側が用意して、搬入・配置まで一貫して行ってもらうことができるようになります。ホームステージングを専門に取り扱う業者の場合、実施計画をホームステージャーというプロの資格保有者が実施することになるため、所有者の方でも気付けなかった物件の魅力を効果的に引き出すホームステージングを実施してもらうことができます。

注意点としては、ホームステージングの実施にかかる費用が高くなってしまう点です。もちろん、ホームステージング会社によってサービス内容や費用感は変わりますが、それなりの規模のホームステージングを依頼する場合、数十万円単位のコストがかかります。したがって、費用対効果のこともよく考えて、自分で行うのか、業者に相談したほうが良いのかを検討しましょう。

バーチャルホームステージングを利用する

バーチャルホームステージングは、上で紹介した二つの実施方法とは異なり、仮想空間上の物件に家具などを配置するという方法となります。バーチャル・リアリティ(VR)技術を活用したホームステージングで、仮想空間上の物件内に、家具やインテリアを配置し、インターネット上の物件検索サイト内でライバル物件よりも目立たせることを目的としています。

DIYや専門業者に依頼してホームステージングを実施する場合、家具やインテリアを用意して、部屋の中に搬入して設置するなど、さまざまな作業が発生します。しかし、バーチャルホームステージングの場合は、空室状態の物件画像を利用してパソコン上でCG加工することで家具、インテリアを配置するだけになるため、コストを大幅に削減することができるのです。また、人の手による作業も少なくなるので、ホームステージング後の物件画像の納期は圧倒的に短くなります。

バーチャルホームステージングは、あくまでも画像を使って物件内を装飾するという方法なので、デザインなどが異なる様々なパターンのホームステージングを実施することができる点も魅力です。ただ、あくまでも「ホームステージングが実施された画像」が出来上がるだけで、パソコンやスマホ上でしか確認することはできません。不動産の売買や賃貸の取り引きは、最終的に現地に足を運び、物件の内見を行うのが一般的ですが、その時の対策にはならない点に注意が必要です。画像を見て良い印象を持ったけど、現物を見ると逆に弱点が目立ってしまい、成約に至らない…なんて可能性もあります。

ホームステージングによる効果

ホームステージングについては、実施することで本当に効果が得られるのかが気になるポイントだと思います。DIYで実施するにしても、専門のホームステージング会社に相談するにしても、それなりのコストと手間がかかる対策となるので、どのような面で効果が期待できるのかという点は、実施するかどうかの決め手になるはずです。

そこでここでは、日本ホームステージング協会が発行している「ホームステージング白書2023」から、不動産の売買と賃貸において、ホームステージングによりどのような効果が得られたのかについてそのデータをご紹介します。

データ参照:ホームステージング白書2023

ホームステージングの不動産売却における効果

それではまず、不動産の売却でホームステージングを実施した時の効果についてみていきます。ホームステージング白書2023に掲載されている調査データによると、不動産売買におけるホームステージングの実施については、なんと92.8%(非常に効果があった:46.4%、少し効果があった46.4%の合計)の方が効果があったと回答しています。

さらに、売却までの期間や閲覧数など、細かな部分に関しても、以下のようにほとんどの面でその効果が認められています。

  • 閲覧数・・・増えた77.8%(大幅に増えた20.4%、少し増えた57.4%)
  • 問い合わせ数・・・増えた77.8%(大幅に増えた16.7%、少し増えた61.1%)
  • 内覧者数・・・増えた79.2%(大幅に増えた11.3%、少し増えた67.9%)
  • 成約までの期間・・・短くなった69.1%(大幅に短くなった18.2%、少し短くなった50.9%)

上記のように、不動産の売却において、さまざまな面に効果を発揮しています。特に、閲覧数や問合せ数など、ファーストアプローチの段階については、8割近い人が効果を感じていると回答しており、他の物件との差別化には非常に効果的だということがよくわかります。

ホームステージングの不動産賃貸における効果

次は、不動産の賃貸におけるホームステージングの効果についてです。ホームステージング白書2023では、賃貸部門においても92.9%の方が「効果があった」と回答しています。こちらも、細かな部分の調査データもご紹介します。

  • 閲覧数・・・増えた83.7%(大幅に増えた36.4%、少し増えた47.3%)
  • 問い合わせ数・・・増えた76.7%(大幅に増えた32.1%、少し増えた44.6%)
  • 内覧者数・・・増えた73.3%(大幅に増えた30.4%、少し増えた42.9%)
  • 成約までの期間・・・短くなった82.1%(大幅に短くなった44.6%、少し短くなった37.5%)

賃貸物件に対するホームステージングは、ファーストアプローチを示す閲覧者数とゴールとなる成約期間について、どちらも8割を超える方が効果を感じていると回答しています。さらに、特筆すべきは、各項目について「大幅に」という回答の割合が売買よりもかなり多くなっている点でしょう。ホームステージングを実施した方の中で、5割近い人が「成約までの期間が大幅に短くなった」と回答していることから、賃貸においては絶大な効果がみられていると考えられるのではないでしょうか?

ホームステージングにありがちな失敗例とその対策について

前項でご紹介したように、ホームステージングは、不動産の売却・賃貸ともに、確かな効果が認められるようになっています。どちらに場合も、ホームステージングを実施しなかった時と比較して、ホームステージング後の物件の動きに「効果があった」と感じた人は9割以上に上っているのです。

この情報だけを見ると、ホームステージングさえすれば、希望の形で不動産の取り引きが進むのではないかと感じてしまう人が多いかもしれません。しかし、前項で紹介した調査データでもわかるように、ホームステージングに効果を感じなかったという方も一定数いるのは事実なのです。それでは、ホームステージングを実施したにも関わらず、効果が得られないなど、失敗するのはなぜなのでしょうか?

ここでは、ホームステージングについて、ありがちな失敗例と失敗を防ぐための注意点について簡単に解説します。

ターゲットとホームステージングの演出があっていない

どのような物件でも、ターゲットとなる入居者像はある程度決まっています。例えば、単身者用賃貸物件の場合、学生やサラリーマン、ワーキングウーマンなど、比較的若い年齢の方がターゲットとなります。

ホームステージングは、この物件のターゲット層と合わない演出をしてしまうと、いくらお洒落な空間を作ったとしても、共感を得ることができないのです。例えば、子育て中のファミリー向けの賃貸物件にもかかわらず、物件内をスタイリッシュで個性的な演出にしてしまうと、内見した人はそこでの暮らしが上手くイメージできなくなることから、ミスマッチが生まれてしまい「内見数はあるのに成約に繋がらない…」なんてことになりやすいのです。

ホームステージングで効果を出したいなら、まず、物件のターゲットとなる人の層を的確に見出すことが大切です。そしてさらに、ターゲット層が好むインテリアやライフスタイルをしっかりとリサーチしたうえで、その内容に沿ったホームステージングを実施することでミスマッチが起きないようにすることが重要と考えましょう。

インテリアを置くだけになっている

ホームステージング初心者にありがちな失敗は、部屋の中に家具やインテリアを配置するだけになってしまっているというパターンです。ホームステージングは、内見した人がそこでの生活や部屋のサイズ感をイメージしやすくするという役割も担っています。家具などが何も置かれていない空室状態の部屋と家具などが各所に配置されている部屋なら、後者の方が入居後の生活をイメージしやすくなりますよね。

そのため、ホームステージングに初めて取り組む人の中には、部屋の雰囲気など関係なく、家具やインテリアを配置さえすれば良いと考えてしまう人がいるのです。しかし、何も考えずに家具やインテリアを配置すると、統一感のない見た目となってしまい、物件の魅力が伝わらずに成約に至らない…なんてことになりがちです。例えば、テーブルやカーテンなどはナチュラルな雰囲気の物を設置しているのに、その他の家具はスタイリッシュで個性的なデザインの物を配置しているなんて場合、内見した人は良い印象を受ける前に違和感を感じてしまう可能性があります。

ホームステージングを実施する際には、ターゲット層に合わせて、統一感のある空間にする方が良い印象を与えやすいです。コーディネートに自信がないという場合、ひとまずカラーや素材感を統一してみることを意識すると良いです。

個性的過ぎる演出

ホームステージングは、内見に来た人に良い印象を与えるため、家具やインテリア、照明などを用いて演出するという方法です。しかし、ホームステージングに慣れていない方が行う対策では、過度に個性的な演出を施してしまい、逆に印象を悪くしてしまう…なんてことは少なくないのです。

良かれと思って施す対策でも、内覧に来る人のライフスタイルとかけ離れた演出の場合、その物件に良い印象を抱くどころか、悪印象を持ってしまうこともあるのです。不動産の売買や賃貸は、ある程度ターゲットの絞り込みができるものの、不特定多数の方に見てもらい、良い印象を持ってもらわなければならないということを忘れてはいけません。

したがって、ホームステージングを施す際は、「自分の好み」を優先するのではなく、万人受けしやすいカラーやデザインのインテリア、家具を選ばなければならないと考えましょう。そうすることで、誰もが親しみやすい空間を演出することができ、内見する多くの人に受け入れてもらうことができるようになります。

部屋の広さを無視した演出をする

この失敗も意外に多いです。ホームステージング初心者の方は、ホームステージングに使用する家具やインテリアについて、カラーやデザインを重視しすぎるという傾向があります。ホームステージングは、物件ををよりよく見せるために実施する演出なので、どうしてもカラーやデザイン面に意識が引っ張られてしまう訳ですね。

しかし、この場合、物件の広さのことを見落としてしまい、家具やインテリアを配置することで、部屋が手狭に見えてしまう…なんてことになるケースがあるのです。この他にも、家具やインテリアの配置が不自然だった場合、内見者が部屋のサイズ感を誤解しやすくなり、早期の退去に繋がる…なんてことも考えられるでしょう。

こういった失敗を防ぐためには、家具やインテリアを選ぶときには、それぞれの物品のデザインに注目するのではなく、部屋全体として見た時の統一感やバランスも考慮してインテリア選びをすると良いです。また、物件の弱点として「部屋が手狭」という場合は、スリムな家具などを配置して空間を広く見せるなどの工夫を行うと良いです。

まとめ

今回は、昨今、日本でも注目を集めるようになってきたホームステージングについて、実施する方法や効果、ありがちな失敗例をご紹介しました。

記事内でもご紹介したように、ホームステージングは、不動産の売却、賃貸ともに、実施していない物件と比較すると、閲覧者数の増加や成約期間の短縮など、オーナー様にとって非常に嬉しい効果があるというデータが揃ってきています。皆さんも、過去に物件の内見をした経験があると思うのですが、室内に何の家具も配置されていない空室状態の物件を見ても、そこでの生活がイメージしにくく、良し悪しの判断が難しいと感じたと思います。一方、新築住宅のモデルハウスなど、家具が一通り設置されている状況を見た時には「ここに住んでみたいな!」と感じやすいはずです。

ホームステージングは、中古住宅市場の活性化や賃貸物件の空室対策に非常に効果的な方法で、今後は当たり前に実施されるようになると予想されています。ただ、やみくもに家具やインテリアを配置するだけでは、想像しているような効果はなかなか得られないので、記事内で紹介したポイントはしっかりと押さえておきましょう。

なお、物件にどのようなホームステージングを施せば良いのかがいまいち分からない…なんて方がいれば、お気軽にKAGKASまでお問い合わせください。弊社は、家具を取り扱うノウハウも豊富で、物件の魅力が最大限伝わるような、効果的なホームステージングサービスを提供しております。