2025.07.03

バーチャルホームステージングとは?リアルとの違いやVRのメリット・デメリット

昨今では、不動産の売却や賃貸を促進するための対策として、ホームステージングの実施が一般的になりつつあります。ホームステージングは、もともと中古住宅市場が活発なアメリカで誕生した方法で、売却を考えている不動産について、部屋の中に家具やインテリア、照明や観葉植物などを設置することで、空間をお洒落に演出するという方法です。家具などが何もない部屋を内覧しても、そこでの生活を具体的にイメージすることは難しいですが、家具などで空間が演出されている部屋を見れば、入居後の自分たちの生活がイメージしやすくなり、購入や借りるという決断の後押しをしてくれるのです。

ただ、実際の部屋に家具などを設置する「リアル」ホームステージングの場合、準備や施工に時間とコストがかかってしまいます。当然、ホームステージングに利用する家具やインテリアを用意するにはそれなりのコストがかかりますし、配置するには時間と手間がかかってしまうことになります。そこで、新たなホームステージングの方法として注目され始めたのが「バーチャルホームステージング」と呼ばれる方法です。

バーチャルホームステージングは、VR技術を活用してホームステージングを施すと解説される場合が多いのですが、実際の部屋に家具などを設置する通常のホームステージングとどのような点が異なるのかが分からないという声が多く、自社に合うホームステージングはどっちなのか…と迷ってしまう人も多いはずです。

そこでこの記事では、バーチャルホームステージングと通常のホームステージングとの違いや、バーチャルホームステージングを導入した時のメリット・デメリットを解説します。

バーチャルホームステージング?リアルホームステージングとの違いをご紹介

それではまず、バーチャルホームステージングがどのような技術なのか、また実際の部屋に家具などを配置する通常のホームステージングと何が違うのかについて簡単に解説します。バーチャルホームステージングは、VR技術(バーチャル・リアリティ)を活用してホームステージングを施す手段です。VR技術は、日本語で「仮想現実」と訳されるように、人工的に作られた仮想空間を現実かのように体感させる技術となります。

ホームステージング業界におけるVR技術の活用については、空室状態の画像を用意し、そこにCGで制作した家具やインテリアを仮想的に配置し、人が住んでいるような状態の合成画像を作成するというサービスになります。バーチャルホームステージングでは、主に3Dレンダリング技術やVR技術を用いて、仮想空間上にある部屋の中にCGで制作した家具やインテリアなどを配置し、空間を演出するというサービスとなります。

実際に、部屋の中に家具などを配置しなくても、モデルルームのようなリアルな空間画像が用意できるバーチャルホームステージングは、不動産の売却や賃貸において、成約率を高めるための販促ツールとして不動産業者を中心に注目を集めるようになっています。

特に、不動産の売買、賃貸ともに、インターネット上の不動産検索サイトが顧客とのファーストアプローチになっている現在では、空室状態の物件画像を利用するのに比べて、魅力を伝えやすくなることから、内覧の問い合わせを増やすことが期待ででき、早期契約に繋がりやすくなる訴求ツールとして需要が高まっています。特に、仮想空間上で画像処理を施すことで部屋を演出するバーチャルホームステージングは、リアルタイムでさまざまなデザインオプションを試すことができるため、さまざまなターゲット層に物件の魅力を訴求することが可能です。

リアルホームステージングとの違いは?

バーチャルホームステージングの特徴が理解できれば、通常のホームステージングとの違いはすぐに分かると思います。

リアルホームステージングと呼ばれる通常のホームステージングは、空室状態の物件に対して、実際に家具やインテリア、観葉植物や照明などを配置して、空間をお洒落に演出するという方法です。バーチャルホームステージングは、仮想空間上でCGで制作した家具などを配置するだけで、実際の部屋には手を加えることはありません。

この違いから、リアルホームステージングの場合は、画像以外の面でも、物件のイメージをよりリアルに伝えやすくなるというメリットが得られます。また、物件検索サイトで希望に沿った部屋を見つけた時には、画像を見ただけで契約するわけではなく、実際の部屋に足を運び内覧させてもらうのが一般的です。リアルホームステージングの場合、内覧時にもきちんと家具が配置された魅力的な空間を見せることができるため、ファーストアプローチの段階で感じた印象とのギャップも少なくなります。一方、バーチャルホームステージングの場合は、あくまでも仮想空間上で空室の画像に家具を配置しているだけなので、内覧時は空室状態の部屋を見せることになり、最初の印象とのギャップで内覧者の購買意欲が下がってしまうなんてリスクも生じるのです。

ただ、リアルホームステージングは、部屋の中に設置する家具やインテリア、観葉植物などを実物として用意しなければならないため、購入もしくはレンタルに費用がかかってしまう点に注意が必要です。バーチャルホームステージングの場合、仮想空間上でデータとして制作した家具を合成するだけなので、家具などを用意するための費用は気にする必要がありません。

バーチャルホームステージングとリアルホームステージングは、それぞれに良さがあるため、物件のターゲット層に合わせて最適な方法を選定する必要があると考えましょう。

バーチャルホームステージングの利点

バーチャルホームステージングと通常のホームステージングの違いはある程度分かっていただけたと思います。それでは、実際に家具を配置するリアルホームステージングと比較した時、バーチャルホームステージングの利点はどのような点にあるのでしょうか?

まず挙げられるポイントとしては、ホームステージングにかかる手間や時間、コストを削減できるという部分でしょう。通常のホームステージングは、部屋の中を演出するための家具やインテリアを、購入またはレンタルしてこなければいけません。さらに、内覧した人の印象を良くするため、部屋の中に家具やインテリアを配置する必要があるわけです。設置する家具の中には、搬入や組立てに時間や手間がかかるものも多いですし、皆さんが考えている以上にホームステージングの作業量は多いのです。当然、家具を用意する、人力を使って家具を設置するといった点にはそれなりのコストもかかってしまうことになります。
一方、バーチャルホームステージングの場合、あくまでも仮想空間上に家具を配置するだけです。作業は、パソコン上で行うことができますし、実際の家具を用意するわけでもないので、対策にかかる時間や手間、コストを大幅に削減することができます

さらに、バーチャルホームステージングの場合、デザインなどが異なる複数のパターンのホームステージングを用意できる点が利点です。実際に家具を配置するリアルホームステージングは、一度に複数のデザインを用意することなど不可能です。しかし、仮想空間上でホームステージングを施すバーチャルホームステージングの場合、クリック一つで異なる雰囲気の部屋を体感することが可能になります。この利点は、特に遠方に住む人で、気軽に内覧することが難しい…なんて場合に非常にありがたい仕組みとなります。

なお、不動産検索サイト上の訴求力UPに関しては、リアルホームステージングの場合でも高くなります。なぜなら、専門業者にホームステージングを依頼する場合、プロのカメラマンがホームステージング後の部屋を撮影し、広告画像として提供してくれるというサービスをほとんどの会社が行っています。その画像をサイト上に掲載すれば、空室状態のライバル物件よりも目を引くことはできるようになります。

バーチャルホームステージングのメリットとは

それでは、不動産の売却や賃貸を考えている方がバーチャルホームステージングを実施することで得られるメリットについて解説していきます。

バーチャルステージングは、通常のホームステージングにはないメリットもあるので、ここでは、代表的なメリットをご紹介します。

メリット1 不動産検索サイト上で目を引くようになるため反響率がUPする

バーチャルホームステージングは、内覧者の印象をUPさせるという目的ではなく、インタネット上の不動産検索サイトでライバル物件よりも目立つことができるという点が最大のメリットです。

現在、マイホームの購入や賃貸の引っ越しを検討した時には、不動産検索サイトを利用して自分の希望に近い物件をピックアップするというのが当たり前の行動となっています。一昔前であれば、不動産会社の店舗に足を運び、物件に求める条件を伝えることで希望に合う物件情報を提示してもらうという感じでした。しかし、スマホやパソコンが広く普及した現在は、先に物件を見つけて、その物件を取り扱っている不動産会社に問い合わせするという流れが一般的となっているのです。

不動産検索サイトに掲載される物件情報は、導入されている設備などの情報とともに、物件の画像が複数載せられています。ただ、多くの物件は、空室状態の画像を掲載しているにとどまっていて、画像を見ただけでは入居後の生活をイメージすることが難しいという状況なのです。しかし、ホームステージングを施した画像は、家具などがきちんと配置されているため、部屋のサイズ感やそこでの生活を具体的にイメージすることができるようになるとされ、他の物件情報よりも目立つことができるようになります。特に、不動産検索サイトでは、物件情報がズラッと一覧として並ぶため、1件だけ家具などが配置されている画像が表示されると、他の物件よりも目立つことができます。実際に、ホームステージングを施しておけば、詳細ページまで確認してもらえる確率が高くなるとされています。

不動産業界では、年々ホームステージングへの注目度が高くなっていると言われているものの、全ての不動産会社が導入しているわけではありません。そのため、他社の物件情報と差別化することができ、物件の反響率が高まる可能性が高いというのは非常に大きなメリットになるでしょう。なお、バーチャルホームステージングの場合、複数の演出を施した画像を用意できる点も、顧客の目を引き、問合せ率を向上させることに繋がる可能性が考えられます。

メリット2 ホームステージングにかかる費用を抑えられる

二つ目のメリットは、コストを抑えながらホームステージングを施すことができるという点です。先ほど紹介したように、リアルホームステージングの場合、空室状態の部屋をお洒落に演出するため、実際に家具やインテリア、観葉植物などを設置していきます。この際、家具は購入もしくはレンタルすることになるのですが、そのためにはそれなりの費用がかかってしまいます。また、家具の搬入、設置は人の手を使って進めていくため、人件費もそれなりにかかってしまうことになるのです。

一方、バーチャルホームステージングの場合、空室状態の画像の上に、CGで制作した家具やインテリアを配置していくという方法が採用されます。そのため、実際の家具などを用意する必要がありませんし、部屋に設置するという作業も発生しません。バーチャルホームステージングの場合、これらの費用を削減することができるようになるため、ホームステージングにかかるコストを抑えられるわけです。

もちろん、バーチャルホームステージングであれば、全てが無料でできるというわけではありません。1枚の画像当たり1万円程度で広告として利用できる物件画像を用意できるとされています。

メリット3 物件を傷つける可能性がない

バーチャルホームステージングは、実際の物件に手を加えることはありません。あくまでも、仮想空間上で物件内を演出するだけなので、物件そのものに影響を与えることがないというメリットが得られるのです。

一方、リアルのホームステージングの場合、実際の家具やインテリア、観葉植物などを部屋の中に搬入して、配置していくという対策が施されます。そのため、家具の搬入や配置の際に、壁などにぶつけてしまい、物件そのものを傷つけてしまう可能性はゼロではないのです。
もちろん、ホームステージングを専門とする会社に依頼すれば、作業になれたプロの方が家具などの搬入を担うため、物件を傷つける心配はほぼないと言えるでしょう。しかし、搬入時などに物件を傷つけなかったとしても、大型家具などを設置した場合、フローリングに凹みが生じてしまう…なんてことは普通にあり得るのです。

バーチャルホームステージングの場合、実際に家具を持ち込むなんてことがないため、物件の傷や汚れの心配を一切しなくても良いという点がメリットになるでしょう。

メリット4 同じ物件に対して、複数パターンのホームステージングが同時に実施できる

ホームステージングは、物件のターゲットをしっかりと定めたうえで対策を施します。年齢や性別、趣味趣向など、ペルソナをきちんと設定したうえで、ターゲットが最も良い印象を受けるような部屋に演出するのが大切なのです。ただ、部屋の演出については、人によって好みが大きく異なるため、ターゲット層の想定がズレていた場合、ホームステージングが逆効果に働いてしまうこともあるのです。

この点、バーチャルホームステージングの場合、さまざまなインテリアの好みに対応できるように、複数のデザインの演出を同じ部屋に対して提案することが可能です。仮想空間上で部屋に演出を施すだけなので、インテリアや家具、照明の設置だけでなく、壁紙のデザインや色なども変更し、趣味趣向が異なる様々な人に同時にアピールすることができるようになるのです。リアルホームステージングの場合、部屋に家具などを設置するという方法なので、一度に異なるデザインの演出を施すことはできませんよね。

バーチャルホームステージングの場合、インターネット上の物件情報に、さまざまなデザインの画像を掲載することができ、その分、ターゲット層を広げることができ、多くのターゲットに提案や訴求ができるようになるというメリットがあります。

バーチャルホームステージングにもデメリットがある

ここまでの解説を見ると、バーチャルホームステージングは非常に優れた対策だと感じたと思います。ただ、いくつか注意しておかなければならないデメリット面も存在するので、以下の点は頭に入れておきましょう。

デメリット1 実物とのギャップがどうしても生じる

VR技術やCG制作の技術はかなり進化していて、バーチャルホームステージングを施した物件画像の精度も十分に高くなっています。

しかし、現在のCG技術では、やはり限界というものが存在していて、実際の素材感などはCGで表現することは難しいです。そのため、実際の物件を見てみると、イメージしていたものとギャップを感じてしまう…なんてことも珍しくないのです。

また、部屋の印象は、照明などの光の当たり具合によって、雰囲気が大きく変わってしまうこともあり、物件情報を見て良さそうに感じていたのに、実際の物件を確認するとガッカリしてしまった…なんて声を聞くことも多いのです。昨今では、3DVRを活用したバーチャルホームステージングを見かけることも増えていますが、自然光を正確に再現することはまだまだ難しく、イメージと異なる…と感じられてしまう可能性はそれなりに高いです。

デメリット2 内覧対策にはならない

バーチャルホームステージングは、不動産検索サイト上に掲載する物件情報としては、非常に優れた訴求方法とみなされるようになっていて、多くの不動産会社が取り入れ始めています。しかし、あくまでも仮想空間上で物件の演出をするという方法なので、物件の内覧時に好印象を与えて成約率を高めるという効果を見込むことはできないという点に注意が必要です。

自分が住むための家は、購入する場合でも借りる場合でも、物件画像の確認だけで契約する人などほとんどいません。不動産検索サイトは、あくまでもファーストアプローチの段階で、そこで興味を持った物件は、実際に足を運んで内覧することで、契約するかどうかを決めるものです。バーチャルホームステージングの場合、実際の物件を内覧する時には、空室状態の部屋を見てもらうしかないので、契約の後押しをすることは難しいわけです。

リアルホームステージングの場合、実際の部屋に家具やインテリアなどを配置して、素敵な空間を作った状態で広告用の画像を撮影します。そのため、物件検索サイト上で目立つという効果も当然得られますし、興味を持った人が内覧に来たときには、より良い印象を与えることができるわけです。つまり、「物件の成約の後押し」という面で考えると、実際に家具を設置するホームステージングよりも効果が薄くなってしまうという点がデメリットです。

デメリット3 依頼する会社によってクオリティに大きな差がある

これは、リアルホームステージングにも言えることですが、バーチャルホームステージングは、依頼する会社によって画像加工、CG合成技術のクオリティに大きな差が生じるという点に注意が必要です。業者選びを失敗してしまうと、効果が得られないどころか、物件のイメージを下げてしまうこともあります。

低品質なCG技術しか持たない業者に相談すると、出来上がった物件の写真は、実物とのギャップが大きくとても使い物にならない…なんてことになるケースも多いようです。バーチャルホームステージングは、業界そのものがまだ新しいため、「ここに頼めば安心だ!」といえるような代表的な企業がないというのが実情です。したがって、制作を依頼する会社を選定する際は、過去の実績やクライアントの声などをしっかりと確認してから選ぶようにしましょう。

デメリット4 ユーザー側にスマホ、PC環境やネットワーク環境が必要となる

バーチャルホームステージングは、ホームステージングを施した物件情報をインターネット上で閲覧することになるため、インターネット環境が必要不可欠です。リアルホームステージングの場合、家具が配置された物件内を内覧するわけなので、インターネット環境など関係なく、自分の目で部屋の良し悪しを確認できます。

インターネット環境は、今時どこにでもあると考えがちですが、バーチャルホームステージングの確認には、高速で安定的な回線が求められるのです。データ容量が大きいため、回線速度が遅い環境の場合、読み込みが遅くなり、操作などもスムーズにできなくなるとされています。つまり、情報を閲覧するために、ユーザー側に求める条件が出てしまうという点がデメリットといえます。

デメリット5 コストがかかる

バーチャルホームステージングは、リアルホームステージングよりもコストが抑えられると紹介しましたが、導入には一定のコストがかかることに変わりはありません。費用がかかるという点は、明確なデメリットといえるでしょう。

なお、バーチャルホームステージングは、空室状態の物件画像を用意して、そこにCGで制作した家具などを配置するという方法です。ただ、空室状態の物件画像については、何でも良いのではなく、撮影条件が細かく決められているので注意しなければいけません。撮影条件を満たしていない画像を提出した場合、再撮影を要求されることになるので、どのような条件を満たした画像が必要かは事前にしっかりと確認しておきましょう。もちろん、画像の撮影から作業を依頼することも出来ますが、その場合は、撮影費が乗るので、バーチャルホームステージングにかかる費用も高くなると考えておきましょう。

まとめ

昨今では、不動産の売却や賃貸を促進させるための方法として、ホームステージングが注目されています。さらに、ホームステージングを手軽に、低コストに導入できる方法として、バーチャルホームステージングと呼ばれる手法が登場し、多くの不動産会社様が導入を始めています。

記事内でご紹介したように、バーチャルホームステージングは、仮想空間上で空室状態の物件画像にCGで制作した家具やインテリアを配置して、おしゃれに空間を演出するという方法です。実際の部屋に家具などを設置する方法ではないため、内覧時の対策にはなりませんが、一度に複数のデザインパターンを確認させることができるようになるため、ファーストアプローチでの購買意欲の向上には非常に役立つ方法として注目されています。

バーチャルホームステージングは、店舗での接客時に物件のイメージを正しく伝えられる、物件の新たな活用法を提案しやすくなるという点では非常に有効な手段だと言えます。しかし、物件の売却や賃貸のことを考えた時には、内覧時に良い印象を与えられるわけではないという点は大きな落とし穴になるかもしれないので、その点は注意しましょう。

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