2025.08.09

家を早く、高く売る工夫!ホームステージングに関するよくある疑問にお答え

昨今では、日本国内でも中古住宅市場が活発化していると言われています。これは、少子高齢化を背景として、全国的に放置空き家が増加したことで、地域コミュニティの崩壊を招くケースが増えていることから、国や自治体が中古住宅市場の活性化を後押しするようになっているのが大きな要因と言えます。

そして、中古住宅の取り引きの増加に伴い、家を早く、さらにより高値で売却するための方法として注目され始めたのが『ホームステージング』と呼ばれる手法です。不動産の仲介を担う不動産会社を中心に、ここ5年ぐらいで一気に普及し始めているのですが、一般の方の中には「ホームステージング」という言葉を聞いたことがないという人もまだ多いのが実情です。

ホームステージングは、簡単に言うと、家やマンションなどの不動産を売却する、もしくは賃貸に出す際、部屋の中に家具やインテリア、植物や照明などを配置して、新築のモデルルームのように演出するというサービスのことを指しています。家を購入する時、または借りる時には、最終判断として物件まで実際に足を運び、家の状態や雰囲気などを確認します。ホームステージングは、部屋の中を素敵な空間に演出することで、内覧に来た人に良い印象を与えることで、購買意欲を高めるということを目的としています。そのため、家を売りだしてもなかなか売れなくて困っている…、住み替え資金のためにできるだけ高く売りたいなどと考えている方には非常におすすめの方法となっているのです。

ちなみに、もともと中古住宅市場が活発な欧米では、中古住宅やマンションを売却する際、ホームステージングを実施することが当たり前になっています。スウェーデンなどでは、売りに出される中古住宅の8割以上にホームステージングが施されていると言われているなど、中古住宅を希望通りに売却するためには「実施しなければならない対策」と位置付けられているのです。

日本では、まだまだ知名度が低く、不動産を取り扱っている仲介会社などでも「詳しくは分からない…」という方が多いです。そこでこの記事では、年々注目度が高くなっているホームステージングについて、実施を検討した人が考える代表的な疑問とその答えを解説します。

疑問① ホームステージングとは何?

ホームステージングは、ここ数年、中古住宅市場や賃貸物件市場で注目度が高くなっているものの、まだまだそこまで高い知名度はありません。そのため、ホームステージングという言葉を聞いても「どんな対策か分からない」という方が多いのです。

ホームステージングという対策は、冒頭でご紹介したように、中古住宅などを売りに出す際や賃貸物件の借り手を探す際、ガランとした空室状態のまま営業活動を行うのではなく、部屋の中に家具やインテリアなどを配置して、素敵な空間になるようにトータルコーディネートした状態で営業を進める販促手法です。具体的には、以下の画像のように、部屋の中をコーディネートします。


新築住宅の住宅展示場や新築マンションのモデルルームは、空室状態にされているのではなく、必ず家具やインテリアなどが置かれた状態になっています。ホームステージングは、その状態をイメージしていただくと分かりやすいです。

皆さんも、賃貸住宅の物件探しで内覧をした経験はあると思うのですが、空室状態の部屋を見ても、そこでの暮らしを具体的にイメージすることは難しいと感じたのではないでしょうか?物件内を内覧したとしても「悪くはないのだけどな…」と言った感じで、「ここで暮らしてみたい」とまで思えるようなことはほとんどないはずです。しかし、新築物件のモデルルームなどは、家具などにより室内がコーディネートされているため、家事動線などまで具体的にイメージすることができ、購入するかどうかを判断しやすくなるのです。ホームステージングは、それと同じような効果を期待できる手法として、中古住宅市場や賃貸物件市場で注目されているのです。

なお、ホームステージングは、新築物件のモデルルームのように、空室状態の物件にだけ対策が施せるわけではありません。家の売却は、「住みながら進める」ケースも少なくないため、居住中の物件に対しても、ホームステージングを実施することが可能です。さらに、「築年数が経過している物件」に対する販促手法であるという特性上、ハウスクリーニングやリフォーム、修繕、家具の一時預かり、不用品の回収など、新築物件に対する販促にはないサービスを受けられる点も大きな特徴になっています。

不動産会社を中心にホームステージングが注目されるようになった昨今では、リビングなどは当然として、お風呂やトイレ、クローゼットなどもホームステージングを施す対象となっています。

ホームステージングは、上の画像のように空間をコーディネートする対策となります。ホームステージングのために使用する家具やインテリアについては、ホームステージングを請け負う業者からレンタルすることが一般的です。居住中のホームステージングであれば、使用中の既存家具を採用することも可能ですが、家具の状態などが悪いケースが多いため、ほとんどの場合、レンタル家具を使用します。

日本でも家の売却手法としてホームステージングが広く普及しています。そのため、現在では日本ホームステージング協会が設立され、ホームステージングに関する専門資格である「ホームステージャー1級、2級」という制度が作られています。

疑問② ホームステージングはいつ実施すればいい?また誰に相談すれば良いのか?

ホームステージングは、家の売却や賃貸を促進するための方法と紹介しました。つまり、ホームステージングの実施タイミングについては、「物件を売り出す時」が基本となるでしょう。

ただ、売り物件にしても賃貸物件でも、ホームステージングの必要性は慎重に検討しなければいけません。例えば、人気のエリアにある物件、築浅物件など、物件そのものの価値が高い場合は、ホームステージングを実施しなくても買い手を早く見つけることができる可能性は高いです。こういった物件については、ホームステージングのために時間を使うよりは、そのまま売りに出す方が良いかもしれません。ちなみに、2024年のホームステージングの実施状況について、物件の売買においてホームステージングを実施するかどうかの判断基準は以下の通りとなっています。

引用:ホームステージング白書2024年

上のグラフから分かるように、ホームステージングを実施する基準は「売れにくい」と判断されるかどうかです。例えば、駅から遠い、商業施設や学校が近くにないなど、利便性が低い立地であったり、築年数がかなり経過した古い物件などという場合、そのまま売りに出したとしてもなかなか買い手を見つけることができないと想定されるため、ホームステージングを実施して、他のライバル物件との差別化を目指すのです。

この他のタイミングでは、最初はそのままでも売れると考え、売りに出したのに長期間買い手が見つからない…というケースです。例えば、内覧にまでは何人も来てくれているけど、無理な値下げ交渉をされて成約までは至らないケースが多いという場合、ホームステージングは非常に効果的です。先ほど紹介したように、ホームステージングは、物件内を素敵な空間に演出するという対策です。ホームステージングを実施した物件は、内覧時に「ここに住んでみたい」と思わせることができるため、無理な値下げ交渉などを受ける可能性も少なく、早期に売却することが期待できるわけです。

なお、ホームステージングの実施を誰に依頼するのかについてですが、物件オーナー様の場合、仲介を依頼している不動産会社に相談してみると良いでしょう。ホームステージングは、不動産会社を中心に話題となっていることもあり、多くの会社が導入を始めています。ただ、まだまだホームステージングに精通していない不動産会社があるのも事実なので、その場合は、ホームステージング会社をネットで探し、直接連絡してみると良いでしょう。

疑問③ ホームステージングは自分で実施することは可能?

ホームステージングは、空室状態で売りに出すのではなく、部屋の中に家具やインテリア、照明や植物を配置することで、おしゃれな空間に演出する方法と解説されていることが多いです。そのため、「家具を配置するだけなら自分でできるのではないか?」と感じる方も多いようです。

この点について、「可能か?不可能か?」だけで言えば、ホームステージングを自分で実施することは可能です。ただし、ホームステージングは、「家具やインテリアを配置する」ことを目的としているのではなく、中古住宅をできるだけ早く、また高く売る、賃貸物件については、借り手を早く見つけるための手段ということを忘れてはいけません。ホームステージングに関する知識がない人が、自己流でホームステージングを実施したとしても、それが物件の売却や賃貸に繋がるとは限らないのです。

なぜなら、ホームステージングを専門とする会社などは、ホームステージングのプロであるホームステージャーが実施計画を立てます。ホームステージングのプロ業者は、依頼のあった物件ごとに、どのような人がターゲットとなり、その人が内覧にきた時にどのような見せ方をすれば気に入ってくれるのか、またどのようなホームステージングを施せばそこでの生活がイメージできるのかなどを考えながらコーディネートを検討しています。そのため、ホームステージングに関する専門知識がない人が行った対策と、プロが行った対策では、ホームステージングの質に大きな違いが生じてしまうのです。実際に、不動産の売買に関しては、対策を専門業者に依頼するケースが年々増加しているというデータが出ています。

引用:ホームステージング白書2024年

上のグラフから分かるように、2024年は不動産の売買を目的としたホームステージングについては、約4割が専門業者に依頼しているという結果になっています。実は、2023年の不動産売買では、不動産会社が自社で実施しているというケースが約6割で、専門業者への依頼は25%程度にとどまっていたのです。これが、1年後には専門業者に依頼したという事例が10%以上増加している状況を考えると、ホームステージングは単に家具を配置するだけでなく『質』が求められるようになっていると判断できるでしょう。不動産会社は、不動産の売却や賃貸に関してのプロであるのですが、その業者がホームステージングに関して専門業者に依頼するケースが増えているとなると、「効果のあるホームステージング」は、一般の方が簡単にできるものではないということがよくわかっていただけると思います。

なお、ホームステージングをプロの専門業者に依頼する場合、状態の良い家具やインテリアをまとめてレンタルすることができる点も大きな魅力になると思います。自分でホームステージングを実施する場合、家具やインテリア、照明などを新たに購入しなければならないため、その部分にそれなりのコストがかかってしまいます。

こういたことから、ホームステージングは、自分で実施するのではなく、専門業者に依頼したほうが、手間や時間、コスト負担を軽減でき、ホームステージングによる結果も良いものになると考えて良いと思います。

疑問④ ホームステージングを実施するとどんな効果があるの?

ホームステージングに関する疑問については、「実施することでどんな効果があるのか?」という点だと思います。これについては、「高く売れる可能性がある」「早く売れる可能性がある」「買い手の満足度向上に寄与する」といった点がメリットになるでしょう。それぞれの効果について、以下でも少し詳しくご紹介します。

高く売れる

ホームステージングは、物件内をターゲットが理想とする空間になるよう演出するという対策です。そのため、空室状態で内覧してもらうのと比較すると、物件が美しく見えるようになり、購買意欲を高めることで値下げ交渉などを防止することができるようになるのです。その結果、売り出し価格のまま購入してもらえる可能性が高まるでしょう。

実際に、アメリカにおけるホームステージングに関する情報によると、ホームステージングを実施した物件は、行わなかった物件と比較して6%以上高く売れる(コールドウェル銀行の調査データ)という調査データもあります。また、ホームステージング白書2024年の賃貸物件に関するデータでも、「ホームステージングの導入による賃料の変化」について賃料を値上げできたという回答が6割を超えているというデータがあります。

早く売れる

ホームステージングは、物件の売却期間を短縮できるという点も大きな魅力です。

まず、ホームステージングの効果として挙げられるのは、インターネット上の物件広告の見栄えが劇的に良くなるという効果があります。中古住宅の物件広告は、空室状態の物件画像が掲載されていることが多いのですが、ホームステージングを施せば、その状況をプロのカメラマンに撮影してもらい、広告画像として採用することができます。これにより、物件検索サイトで一覧表示された時にも、他のライバル物件よりも目を引くことができるようになり、内覧の希望者数も増加することが期待できるのです。そして、実際に内覧に来てもらった時には、内覧者が気に入ると想定される部屋にコーディネートされているため、内覧時の印象を良くすることができるでしょう。その結果、「こんないい物件なら早く契約しないと他の人に買われてしまうかも…」という気持ちを喚起することができ、早期の成約が期待できるようになるのです。

実際に、ホームステージング白書2024年では、「ホームステージング実施前との比較・成約までの期間」について、短縮したという回答が70%近くに達しています。

引用:ホームステージング白書2024年

ホームステージングによる効果については、実施により成約までの期間が1カ月以上短縮できたという回答が2割近くあるなど、家の売却を検討している方にとっては非常に心強い対策になるはずです。

購入者側の満足度向上にも寄与する

ホームステージングは、家の売却や賃貸を考えている人にとってメリットがあるものというイメージが強いかもしれませんが、実は物件を購入する側の人にとってもメリットが存在します。

これは、ホームステージングが実施された物件の場合、部屋のサイズ感なども内覧時に正確につかむことができるからです。家具やインテリアなどが配置された状態を内覧しているため、実際に住んでみて「想像よりも狭かった…」「所有している家具が置けない」ということを防ぐことができるのです。また、どのようなタイプの家具やインテリアを用意すれば自分達好みの部屋にコーディネートできるのかが内覧時に分かるため、自分たちで家具を購入する時も迷うことが無くなります。なお、ホームステージング会社の中には、対策に使用した家具を物件購入者に安く販売するといったサービスを用意している会社もあります。この場合、自分達の理想通りの空間ごと物件を購入することができるようになるため、不動産の売買に対する満足度は自ずと高くなるでしょう。

このように、ホームステージングは、売主だけでなく買主にとってもメリットがある対策なので、今後さらに導入されることが増えていくと予想されます。

まとめ

今回は、中古住宅市場で、家をより高く、さらに早く売るための対策として注目されるようになったホームステージングについて、よくある疑問とその答えをご紹介しました。

記事内でご紹介したように、ホームステージングは、中古住宅の売却を検討した時、内覧時の印象を良くするため、新築住宅のモデルルームのように部屋の内装をコーディネートするという対策です。日本の住宅事情は、もともと新築住宅を求める方が多かったことから、中古住宅の売却では、売却活動にかかるコストをできるだけ抑えるため、空室状態のまま売りに出すというケースが多かったです。しかし、少子高齢化による空き家の増加が社会問題化している昨今では、「家が余る」という状況に陥っていて、中古住宅市場でライバル物件よりも目立つためには、新築住宅の販促手法と同じような対策が求められるようになっているのです。

ホームステージングは、もともと中古住宅市場が活発なアメリカで誕生し、欧米では当たり前に採用される手法となっています。物価高の影響などもあり、日本でも中古住宅市場が活性化してきていますし、今後は、家を売りに出す時の対策として、日本でもホームステージングが当たり前の存在になっていくのではないかと予想されています。