賃貸の空室対策としてモデルルーム化が注目!空室対策になる理由や実施時のポイント
近年、賃貸物件の空室対策として「モデルルーム化」と呼ばれる手法が賃貸物件オーナー様や仲介を担う不動産会社の間で注目を集めるようになっています。賃貸経営者にとって、空室期間の長期化は、収入減少に直結する問題であるため、可能な限り早く次の入居者を見つけたいと考えるはずです。しかし、空室を埋めるためとはいえ、無限に予算を使えるわけではないため、空室が生じるたびに、最新のトレンド設備を導入したりリノベーションをかけるといった空室対策は現実的ではありません。
賃貸物件の空室対策には、他にも入居条件の緩和や家賃の値下げなど、さまざまな方法が存在していますが、これらの空室対策は、既存入居者の退去を招いてしまうリスクが生じる、継続的な収入減少を招いてしまうなど、見落とすことができないデメリットが存在するため、なかなか実行に移すことができないという声を聞くことが多いです。
そしてこのような状況の中、新たな空室対策として注目され始めた手法が物件のモデルルーム化なのです。賃貸物件におけるモデルルーム化は、空室になった物件に対してホームステージングを施したうえで集客活動を実施するという手段です。ホームステージングは、中古住宅の高値売却や早期売却を実現するための有効な手段とされていますが、実は賃貸物件の空室対策としても、非常に費用対効果の良い方法です。
そこでこの記事では、空室対策としてのモデルルーム化の基礎知識やなぜこの対策が空室対策になるのか、また実施時の注意点などについてまとめてご紹介します。
空室対策としてのモデルルーム化とは?
それではまず、賃貸物件の空室対策として注目されているモデルルーム化について、これが何を意味しているのかを解説します。
モデルルームと聞くと、新築のマンションや分譲住宅の販促のために用意されるものというイメージが強いと思います。建築に関する知識を持たない人の場合、図面などを見てもどのような部屋なのかを具体的にイメージすることができず、購入するという決断になかなか至らないケースが考えられます。そのため、マンションや分譲住宅の販売時には、別の場所に同じ間取りの部屋を用意して、その中に家具などを配置して購入希望者に確認してもらうという販促手法が採用されているのです。モデルルームがあれば、建物が完成していなくても、実際のお部屋の中を見ることができるため、購入希望者は入居後の生活をイメージしやすくなり、購入するかどうかの決断がしやすくなるのです。
日本では、モデルルームやモデルハウスを用意するという販促手法について、新築物件の販売時に行われることが一般的でした。しかし、中古住宅市場が活発な欧米などでは、中古住宅の売却時にこういった手法が当たり前に採用されていたのです。そして最近では、賃貸物件の販促手法としても注目され始め、空室状態の部屋を家具や小物でモデルルームのようにインテリアコーディネートし、そこでの生活感を表現することで早期の成約を目指すという工夫がなされるようになっているのです。この販促手法については、「ホームステージング」と呼ばれていて、2020年頃より賃貸業界でも普及が拡大し始め、現在は多くの物件が取り入れるようになっています。
入居希望者は、ある物件を借りるかどうか判断する際、最終的な決断を下すために物件まで足を運び、内見するのが一般的です。この際、空室状態の部屋を見ても部屋のサイズ感やそこでの生活がイメージしにくいため、成約にまで至らないというケースが意外に少なくないのです。しかし、ホームステージングを施し、モデルルームのような素敵な空間を演出できていれば「ここに住んでみたい!」と思わせることができるようになるため、早期の成約を後押しできるようになるわけです。そもそも、物件の内見にまで足を運ぶということは、家賃や立地条件は納得しているはずなので、部屋が気に入ってもらえれば契約してもらえる可能性が高くなるはずです。ホームステージングによるモデルルーム化は、この賃貸契約の最終段階における非常に効果的な対策と考えられ、仲介を担う不動産会社を中心に普及が拡大しているという訳です。
モデルルーム化(ホームステージング)が空室対策に有効な理由
それでは次に、モデルルーム化が賃貸物件の空室対策としてなぜ有効なのかについて解説します。新築マンションや分譲住宅の販売では、モデルルームやモデルハウスが必ず用意されていると思います。これは、部屋の中を実際に見てもらい、購入希望者がそこでの生活をイメージしやすくなる方が、契約に繋がる可能性が高くなるからです。新築業界では、モデルルームやモデルハウスを利用した販促手法が長年採用されていることから分かるように、住居選びの際には非常に効果的な方法と言えるのです。
賃貸物件の空室対策についても、当然同じような効果を見込むことができます。空室対策としてのモデルルーム化については、以下のような効果が期待できるため、採用する物件が増えているのです。
内見者数の増加が期待できる
空室対策としてのモデルルーム化は、物件広告の面でも非常に高い効果を発揮します。今の時代、賃貸物件を探す時には、インターネット上の物件検索サイトで好みの部屋を探すという方法が一般的です。大手物件検索サイトにアクセスし、立地や家賃、設備などの条件で物件を絞り込み、内見してみたいと思う物件を見つけるという行為は誰でも経験があるでしょう。
この際、希望条件で物件情報を絞り込んだとしても、数百というレベルの物件情報が一覧表示されるのですが、ホームステージングを施してモデルルーム化しておけば、他の物件情報と差別化することができるのです。賃貸物件へのホームステージングは、徐々に採用する不動産会社が増えているものの、まだすべての物件をモデルルーム化するというところまでは至っていません。そのため、空室状態の物件画像とお洒落な空間に演出された物件情報が並んでいれば、後者の物件情報の方が目を引き、詳細まで確認してもらえる可能性が高くなるのです。実際に、ホームステージング実施後の反応として、以下のような効果があったというデータがあります。
上のグラフの通り、ホームステージングを施し、モデルルーム化することで、内覧者数が増えた、反響数が増えたという回答が3割を超えています。賃貸物件の空室を埋めるには、内見してもらう人の数を増やすことがファーストステップとなるため、物件オーナーとしても非常にありがたい効果と言えるのではないでしょうか?
内見時の第一印象が良くなる
賃貸物件で入居者募集を行う際は、基本的に入居者がいる状態で内見してもらうことはなく、空室が生じてから物件広告を出すという方法が一般的です。そして、従来の賃貸業界では、空室状態で内見してもらうという方法が一般的だったため、入居希望者が室内を確認する際には、家具や照明、カーテンなどのインテリアなどが何もない殺風景な状態を見せることになります。
この場合、部屋がいくら広く、使いやすいはずの間取りであったとしても、内見した人の印象は「部屋がなんか暗い…」「寂しい感じがする…」など、マイナスな印象を与えてしまう可能性が残ってしまうのです。
これが、ホームステージングを施し、モデルルーム化された部屋を内見してもらうようにすれば、部屋全体が温かみのあるお洒落な空間になるため、入居希望者の第一印象はかなり良くなると考えられます。家具やインテリアを配置していれば、家事動線や生活動線などもイメージすることができるようになりますし、物件の良さをより伝えることができるようになるでしょう。特に、築年数が経過している物件の場合、外観との格差が非常に大きくなるので、部屋に対しての印象が格段に良くなる可能性もあります。
実際に、ホームステージング白書で公表されているデータとして、ホームステージングにより内見時の印象が良くなったという回答が一位になっています。
内覧者の印象が良くなるため家賃のアップまで期待できる
入居希望者のほとんどは、インターネットでどのような物件なのかを調べたうえ、自分の希望に見合う物件をある程度絞ってから不動産会社に問い合わせするという流れが一般的になっています。そして、内見時には、インターネットに掲載されていた内容と相違がないか確認し、最終決定を行うのです。
ただ、従来の空室状態で内見してもらうという方法の場合、部屋のサイズ感や家具の配置イメージについてある程度はイメージできるかもしれませんが、実際に入居してみると、思ったよりも狭かった、使いにくさを感じるなど、内見時のイメージとズレが生じてしまうことも少なくありません。しかし、ホームステージングを施し、モデルルーム化された部屋を内見した場合、どのような家具が配置できるか、また家事などの生活動線がどうなるのかを明確にイメージすることができるようになります。
内見者がそこでのイメージを明確にすることができれば、「ここに住んでみたい」とより強く思わせることができるため、家賃の値下げ交渉などを受ける可能性も少なくなるほか、近隣の家賃相場よりも多少高い家賃設定になっていたとしても、入居してもらえる可能性が高くなります。実際に、ホームステージングを実施した不動産会社などは、家賃を下げなくても良いという点や、家賃をアップできたという点をモデルルーム化のメリットに感じていると回答しています。
上のグラフから分かるように、ホームステージングは家賃を維持できる、もしくは値上げできるという効果まで期待できます。ホームステージング白書2024年の調査によると、ホームステージングによって家賃を1~4%値上げできたという回答が50%で、さらに5%以上家賃の値上げができたという回答が約10%もあったのです。これは、賃貸経営者にとって非常にありがたい効果のはずです。
空室対策としてモデルルーム化を採用する際の確認ポイント
それではここから、賃貸物件の空室対策として、実際にモデルルーム化という方法を採用したいと考えた時の確認ポイントをご紹介します。上でも解説している通り、モデルルーム化は、空室にホームステージングを施すことで、新築物件のモデルルームやモデルハウスのような空間を作る対策のことを指しています。
こう聞くと、「部屋の中に家具やインテリアを配置すれば良いだけだし、簡単そう」と感じるかもしれません。しかし、ホームステージングによるモデルルーム化は、家具やインテリアを配置すれば良いというほど簡単な対策ではありません。なぜなら、入居希望者が物件に求めている条件は人それぞれ異なるからです。当然、色の好みやデザインの好みは入居希望者ごとに大きく違いますし、入居後にどのような生活をしたいと考えているのかも違うはずですよね。
それなのに、ターゲットとなる入居希望者の考えを無視して、物件オーナー様の好みだけでホームステージングを施した場合、逆に印象を悪くして成約に至らない…という状況に陥るケースも考えられるわけです。したがって、空室対策としてモデルルーム化を実施したいと考えた時には、以下のようなポイントをあらかじめ確認して、適切なホームステージングが施せるようにしましょう。
物件のターゲット層を明確にする
賃貸物件は、それぞれ異なるターゲットが存在します。賃貸物件の入居者は、男性や女性などの性別の違いや、若者か高齢者かと言った年齢の違い、単身かファミリーかなど、さまざまな属性が存在するのです。そして、それぞれの属性ごとに、物件に求める条件が大きく異なるため、ターゲットを明確にしていない場合、適切なホームステージングを実施することが難しいのです。
ホームステージングによるモデルルーム化で、集客効果を最大化するためには、万人受けするモデルルームを作るのではなく、物件のターゲットが好むモデルルームを作ることが大切です。したがって、空室対策としてモデルルーム化を実行する場合、どんな人が物件のターゲットになるのか、具体的に考えてから計画を進めましょう。
かけられる予算を検討する
賃貸経営者にとって、空室の長期化は最も悩ましい問題のはずです。空室期間中は、その部屋の家賃収入がなくなるわけなので、賃貸経営そのものに影を落とす結果になります。
そのため、賃貸経営を行う際は、常に空室対策のことが頭に浮かぶという方が多いと思います。しかし、いくら空室を埋めたいと考えているとはいえ、無限に予算を使えるというわけではありません。家賃が5万円の物件に対して、100万円以上のコストをかけて空室対策をした場合、入居者が見つかったとしても、かけたコストを取り戻すことを考えると、とても費用対効果が合うと言えません。
したがって、ホームステージングによるモデルルーム化を実行する際は、どれぐらいの予算をかけられるのかを慎重に検討してください。かけられる予算によって、実現可能なモデルルームの質が大きく変わります。
- 予算があまりかけられない場合、DIYでホームステージング
モデルルーム化にあまり予算をかけられないという場合、専門業者にコーディネートを依頼するのではなく、DIYでホームステージングを実施することになるでしょう。賃貸物件のモデルルーム化は、ホームステージングに使用する家具などについて、使いまわすことができるため、初回はそれなりのコストを覚悟しなければいけませんが、空室が出るたびに使えると考えると、モデルルーム化にかかるコストはそこまで高くないと言えます。最近では、100円均一などでもお洒落なインテリアが販売されるようになっていますし、インテリアコーディネートの知識がある人なら、コストを抑えながらお洒落なモデルルームを作り出すことも不可能ではありません。注意点としては、ホームステージングに使用した家具などについては、使いまわすことが前提となるため、保管場所やメンテナンスのことも考慮しておかなければならないです。メンテナンスを怠ると、家具の金属部がサビてしまい、空室対策の度に買い替えが必要になるなど、余計なコストをかけなくてはならなくなります。DIYによるホームステージングは、家具の保管のことまで考えると、手間やコストが想像以上にかかってくるので、その点は忘れないようにしましょう。 - 予算に余裕がある場合、専門業者に依頼する
ホームステージングによるモデルルーム化は、専門業者に1からコーディネートを依頼するという方法がおすすめです。自分でコーディネートする場合と比較すると、より印象の良いモデルルームを作ってもらうことができます。また、家具などについても、レンタルしてもらうことができるので、成約後の手間やコストも気にしなくてよくなります。専門業者にモデルルーム化を依頼する場合、家具の手配や配置、撤去以外にも、部屋の掃除や軽微なリフォームなどもまとめて依頼することができるようになっています。費用に関しては、DIYで実行するよりも高くなるものの、単身物件で10万円前後、ファミリー物件で20万円前後の費用で効果的なモデルルームを作ってもらうことができます。
空室対策として物件のモデルルーム化を実行する際は、かけられる予算によってホームステージングを実施する人員が変わります。なお、ホームステージングの実施方法については、2023年頃までは仲介を担う不動産会社が自社の社員を使って実行するケースが多かったとされています。しかし、ホームステージングが広く普及し始めた昨今では、多くの物件が取り入れ始めたことからホームステージングの『質』が求められるようになっています。そのため、2024年以降は、ホームステージングの実施方法として「専門業者に依頼した」というケースが増えています。実際に、不動産売買部門では、約4割の物件が専門業者に依頼しており、ホームステージングの実施方法として一位になっています。
ちなみに、不動産賃貸の業界でも、ホームステージングによる空室対策が人気になっていて、専門業者に依頼するケースが増えています。それに伴い、モデルルーム化にかけるコストも増加傾向にあり、2024年度は以下のような状況となっています。
上のグラフから分かるように、2024年に賃貸物件で実施されたホームステージングは、家賃の1~1.5カ月分の予算をかけたという回答が約65%となっています。2023年度に関しては、家賃の半月分に当たる金額をかけたという回答が約4割だったことを考えると、不動産賃貸の業界でも、ホームステージングにかけるコストが増加していると判断できます。これは、ホームステージングによる空室対策の人気が高くなっていることから、賃貸業界でも『質』が求められるようになったことが要因でしょう。
まとめ
今回は、賃貸物件の空室対策として、その効果が認められ始めたホームステージングによるモデルルーム化について解説しました。モデルルームやモデルハウスを使った販促手法は、新築業界では当たり前に実行されています。しかし、中古住宅市場や賃貸物件市場では、コストの問題がネックとなり、空室状態のまま集客が行われるというのが一般的です。
しかし、日本国内でもホームステージングの効果が認知され始めた昨今では、賃貸業界でも空室対策を目的にホームステージングが実施されるケースが増えています。さらに、2024年以降は、専門業者にホームステージングの実施を依頼するというパターンが急増しているなど、実施するホームステージングの質も重要視されるようになっています。
空室状態で集客するのではなく、新築物件のモデルルームのように素敵な空間を作れば、内見時の印象を大きく向上させることができ、成約率の向上と空室期間の短縮を期待することができるようになるでしょう。賃貸物件の空室対策には、さまざまな手法があるのですが、今後はホームステージングによるモデルルーム化が主流になっていくのではないかと予想できます。