2025年度最新版、ホームステージングの実情をご紹介します!
近年、中古住宅の流通促進や賃貸物件の空室対策など、不動産市場でホームステージングの存在感がどんどん増してきていると言われています。ホームステージングは、1970年代のアメリカで誕生した中古住宅の販売を促進するための対策だとされているのですが、2000年代に入ったころから日本国内の不動産市場でも注目されるようになっています。
そして2020年代に入ると、賃貸物件の仲介を担う多くの不動産会社がホームステージングを導入し始め、空室を早期に埋めるための新たの手法として、その立ち位置がほぼ確立されたように思える状況となっています。賃貸物件の空室対策では、古くなった設備の更新や大掛かりなリフォーム工事、リノベーション工事が家賃を維持しながら空室を埋めるための手法として人気です。しかし、これらの対策は、空室を埋められるにしても多額のコストがかかってしまうため、費用対効果を考えた時には、実施を躊躇してしまう物件オーナーが多いのです。
ホームステージングは、リフォームなどと比較すると圧倒的に低コストで実施することができるため、仲介を担う不動産会社から見ても、空室を早く埋めるための対策として提案しやすいという側面があり、多くの仲介業者が取り入れているという状況になっています。ただ、2025年現在でも、全ての不動産会社がホームステージングの導入を完了しているわけではなく、「本当に効果があるのだろうか?」と様子見を続けている企業も少なくありません。そこでこの記事では、不動産業界におけるホームステージングの実情について、一般社団法人日本ホームステージング協会が行った実態調査から分析してみます。
ホームステージングとは?その基本情報をご紹介します
ホームステージングについては、2000年代に入って日本国内で取り入れられ始めた、まだ新しい技術であるという側面があるため、不動産会社の中にも「どんなことをするのか?」「何を目的としているのか?」など、基本的な部分の情報をつかみ切れていない方も少なくないと思います。特に賃貸物件の空室対策としては、2020年代に入って急速に普及し始めたとされているため、ちょうど導入するかどうかを検討中という企業も多いと思います。そこでここでは、「ホームステージングとは何か?」という基本情報について簡潔にご紹介します。
ホームステージングは、売買や賃貸に出される物件に対し、家具やインテリア、照明や植物などを配置することで、新築物件のモデルルームのように魅力的な空間を演出するという手法となります。購入検討者がその物件を内覧(内見)した時、そこでの暮らしを具体的にイメージできるようにすることで購買意欲を高め、早期かつ高値での成約を促進することができるとされています。
なお、日本国内でホームステージングの注目度が高まるにつれ、ホームステージングサービスを提供する業者も増えてきており、実施できる対策については多様化しています。2025年現在では、空室状態の部屋に家具などを配置することで空間演出をするだけでなく、居住中の物件に対するホームステージングやハウスクリーニング、不用品の回収・リサイクルに軽微な修繕など、物件の魅力を高めることができる対策全般を請け負ってもらえるようになっています。
ホームステージングの主な目的と効果について
それでは、ホームステージングの目的や実施した際に期待できる効果についてもご紹介します。
- 売却・賃貸の促進
ホームステージングの最大の目的は、中古住宅の売却促進や賃貸に出される物件の早期成約です。少子高齢化が進む日本では、全国的に空き家が増加しており、住宅市場においては家余りが顕在化しているとされます。ホームステージングは、物件内の空間を魅力的に演出することで、広告や内覧時に良い印象を与え、成約までの期間を短縮させることができるという効果が期待出来ます。 - 物件の価値向上
ホームステージングは、物件の価値向上を目的として実施されるケースも多いです。家具やインテリアで空間を彩ることができれば、無機質な印象を持たれがちな空室状態の物件と比較すると、温かみのある魅力的な空間という印象を与えることができ、物件の価値を高める効果が期待出来ます。 - 購入希望者に住むことをイメージさせる
ホームステージングを施した物件は、内覧時に入居後の具体的な生活をイメージさせるということも目的になります。空室状態で内覧した時には、部屋のサイズ感などもつかみにくく、そこでの生活はなかなかイメージできません。しかし、家具などがきちんと配置されていれば、生活動線なども具体的にイメージできるようになるため、物件への関心を深めることができ早期の成約が期待できるようになるのです。
ホームステージングは、不動産の購入者や借り手に、「こんな魅力的な家に住みたい!」と思ってもらうことが主な目的で、それにより早期の成約や物件価値の向上と言った効果が得られるわけです。
2025年最新版ホームステージングの実情をご紹介!
それではここからは、日本国内におけるホームステージングの普及状況などについて解説します。ホームステージングの実態については、一般社団法人日本ホームステージング協会が毎年実態調査を行っていて「ホームステージング白書」という名称で情報を公開しています。そこでここでは、最新版のホームステージング白書2024年をもとに、不動産業界でこの対策がどのような扱いを受けているのかについて解説します。
現在、ホームステージングの導入を検討しているという方がいれば、以下の記事を参考に今後の方針を考えてみてはいかがでしょうか。
ホームステージングは継続的に実施する不動産会社が増えている
先程紹介したように、ホームステージングは1970年代のアメリカで誕生した中古住宅の販売促進方法です。欧米では、家は百年以上持たせようという考えがあるため、日本と比較すると中古住宅市場がかなり活発に動いています。ただ、数ある中古住宅の中から自分の物件を選んでもらわなければならないという課題が存在していたのです。そこで、物件の中に家具などを配置して、魅力的な空間に演出するというホームステージングが開発され、現在では中古住宅の売却時には当たり前に採用されているのです。
そして2000年代に入り、日本国内でも取り入れられるようになったホームステージングは、2020年をさかいに賃貸物件市場で一気に普及し始めたとされます。これは、新型コロナウイルス問題により、対面での物件案内が難しくなったことが要因です。コロナ禍には、非接触型のVRホームステージングが新たに開発され、仲介を担う不動産会社の間で一気に広がったとされています。
日本国内でも普及が広がっているホームステージングについては、導入後の継続期間について以下のようなデータが公表されています。
■ホームステージング導入後の継続期間
引用:ホームステージング白書2024年
上のグラフの通り、ホームステージングを導入した企業については、1年以上継続して実施しているという不動産会社が63.2%に上っているのです。また、5年以上継続しているという企業に限ってみても、22.2%とかなりの割合を占めています。
これは、ホームステージングに対して、その効果を実感し、自社の戦略の一環としてホームステージングを取り入れるようになっている企業が増えていることを示していると考えられるでしょう。空き家の増加やアパートの供給過多が指摘され始めた昨今では、不動産の売買や賃貸を促進するための工夫が物件オーナーから強く求められるようになっているため、業務プロセスの重要な一部としてホームステージングを導入している企業が一定以上の割合に達し始めたと考えられます。
実際に、不動産の売買や賃貸を促進するための対策として、ホームステージングを実施した売主・貸主の満足度は以下の通り、非常に高いという結果が出ています。
■貸主・売主の満足度
引用:ホームステージング白書2024年
上のグラフの通り、ホームステージングの結果についてはなんと84.2%と、大半の売主・貸主が満足していると回答しているのです。ホームステージングは、その効果が安定的、長期的に評価され始めていて、仲介を担う不動産会社の間でも標準的な手段になり始めていると言えます。そのため、今後もホームステージングの実施を継続する、新たに取り入れ始めるという企業が増えていくと予想できます。
ホームステージングの実施基準について
それでは次に、不動産会社がホームステージングを実施するかどうか、なにをポイントにして決めているのかについても確認していきましょう。不動産の売買、賃貸それぞれの部門において、ホームステージングの実施基準としては以下のようなデータが出ています。
■売買におけるホームステージングを実施する基準
引用:ホームステージング白書2024年
不動産売買においては、売却しにくい物件に実施するという回答が最も多いです。例えば、最寄駅から遠い、築年数が経過しているといった物件は、どうしても買い手が付きにくくなります。そこで、ホームステージングを実施することで、広告の段階で他の物件との差別化を目指し、実際の内覧時の印象も良くするという目的でホームステージングを導入しているのでしょう。
■賃貸におけるホームステージングを実施する基準
引用:ホームステージング白書2024年
賃貸部門においては、空室期間が長期化している物件や、売買と同じく立地条件などの問題から「借り手がつきにくい」と考えられる物件にホームステージングが実施されています。現在では、ほとんどの方がインターネット上の賃貸物件検索サイトを利用して物件探しを行うようになっていることから、広告の段階で差別化することが早期の成約のためには重要ポイントとなっています。ホームステージングを実施した後の画像を広告に利用すれば、物件検索サイト内でも目立つことができるようになるため、内見依頼の増加につながり、早期の成約が期待できると考えられているのでしょう。
また、ホームステージングの実施基準として注目したいのは、高額物件へのホームステージングの実施が、売買・賃貸共に2位になっている点です。実は、2023年の調査では、「高額物件への実施」が最下位だったのですが、2024年の調査になると一気に順位が上昇しているのです。これは、昨今、東京などの都市部を中心に、不動産価格の高騰や家賃の上昇が続いていることもあり、高額物件の成約を目指すためには他の物件との差別化が必要になっていることが大きな要因と考えられます。
ホームステージングによる成約期間の変化について
上でもご紹介しているように、ホームステージングの実施は、早期の成約を目的としている場合が多いです。そして、ホームステージング白書2024年で公表されているデータでは、この部分に大きな効果が認められているのです。
■売買物件におけるホームステージング後の成約期間について
引用:ホームステージング白書2024年
上のグラフから分かるように、ホームステージング後の売買物件については、9割以上が3ヶ月以内に成約しているという結果が出ています。また、ホームステージング前後の売却期間について「短縮できた」という回答が約7割と、ホームステージングの目的である「早期の成約」に大きな効果を発揮していることがよくわかります。
■賃貸におけるホームステージング後の成約期間について
引用:ホームステージング白書2024年
賃貸物件市場のデータを見ても、88.5%とほとんどの物件が3ヶ月以内に成約しているという結果が出ています。また、ホームステージング前後の成約期間については、70%以上で短縮できたという回答になっているなど、非常に大きな効果が出ていることが分かります。
先程紹介したように、不動産会社がホームステージングの実施を決断する基準は「売却しにくい物件」や「長期空室が生じている物件」など、一般的に買い手や借り手を見つけにくいとされる条件が悪い物件です。つまり、ホームステージングは、一般的に「条件が悪い」とされる物件において、早期成約に導くことができているわけです。
2020年以降、多くの不動産会社がホームステージングを導入し始めたのは、条件が悪い物件でも、ホームステージングを施すことで魅力的な物件に見せることができ、内覧後の成約率が高くなるという効果が認められているからでしょう。
まとめ
今回は、日本国内でも、不動産の売買や賃貸を促進するための手法として注目されているホームステージングの実情について解説しました。
記事内でご紹介しているように、2000年代に入ってから日本でもホームステージングと呼ばれる販促手法が注目されるようになっています。そして、2020年に起きた新型コロナウイルス問題への対処として開発されたVRホームステージングにより、不動産会社の間で一気に普及を拡大していったとされています。
最新版のホームステージング白書を確認してみると、ホームステージングは、不動産の売買・賃貸ともに、早期の成約や、より高値での成約に大いに役立っていると考えられます。そのため、ホームステージングを導入した不動産会社の多くは、自社の業務プロセスの一部としてみなすようになっていて、継続的にホームステージングを実施しているのです。
日本国内でも、ホームステージングの効果が広く認められるようになっていますし、今後は不動産を取り扱う企業として当たり前に実施しなければならない対策となっていくと予想できます。ほとんどの物件にホームステージングが実施されるようになれば、対策の『質』が物件ごとの差別化を図るために重要なポイントとなるため、今後のホームステージングは専門業者による対策が求められるようになっていくと考えられます。実際に、2024年度に実施されたホームステージングについては、専門業者への依頼が急増していたという結果が出ています。
現在、新たにホームステージングの導入を検討しているという不動産会社があれば、自社内で対策を実施することを考えるのではなく、質の高いホームステージングを請け負ってくれる協力業者を見つけることが重要になると思います。