2025.10.03

AIホームステージングが人気?メリット面と導入時の注意点をご紹介

昨今の不動産業界では、中古住宅の流通促進や賃貸物件の空室対策に有効な手法としてホームステージングへの注目度が高くなっています。ホームステージングは、もともと1970年代のアメリカで誕生した中古住宅の販売促進手法とされているのですが、2000年代に入ったころより、日本国内でも採用されるようになっていて、現在では不動産の売却や賃貸を仲介する多くの不動産会社が取り入れています。

ただ、従来のホームステージングは、売却や賃貸を考えている不動産について、実際に部屋の中を家具やインテリア、照明などでコーディネートするという手法が採用されるため、対策を施すには時間や手間、コストがかかってしまうという点が難点になります。中古住宅の売却促進を目的にホームステージングを施す場合、1件当たり数十万円単位のコストがかかることもありますし、家具の手配から配置が完了するまでには数日以上の時間を要してしまいます。

そこで、ホームステージングをもっと手軽に実施するための方法として開発されたのがVR技術やCG技術を採用したバーチャルホームステージングです。バーチャルホームステージングは、実際の家具を配置する「ホームステージング」とは異なり、物件写真にCGで家具やインテリアを合成するだけなので、手軽に物件の印象を向上できる手法として注目されています。特に、コロナ禍には、対面での物件案内が難しくなったこともあり、web上での物件広告を充実させることができるバーチャルホームステージングが、一気に普及を拡大しています。
そしてここにきて、ホームステージングをさらに手軽に実施できる方法として「AIホームステージング」なるものが登場しています。そこでこの記事では、AIホームステージングとはどのような手法なのか、また採用する場合のメリットや注意点について解説します。

AIホームステージングとは?そのメリットもご紹介

それではまず、AIホームステージングがどのような方法なのかについて解説します。日本国内におけるホームステージングは、実際に家具などを配置する通常のホームステージングが注目され、コロナ禍になると仮想空間上で物件画像にCGで作成した家具などを配置するバーチャルホームステージングが開発される、さらに画像編集をAIに任せるというAIホームステージングの登場という流れで技術の進化が続いています。ただ、これらの手法については、新たな技術の登場で、旧式の方法が陳腐化しているというわけではなく、それぞれの手法のメリットを生かしつつ併用されているというケースが多いです。

AIホームステージングについては、先ほど紹介したように、バーチャルホームステージングがさらに簡略化された方法と認識していただければ分かりやすいです。バーチャルホームステージングは、画像の加工技術を持った業者がVR技術や合成技術を活用し、物件の画像データ上に家具やインテリアのCGデータを配置するという方法でホームステージングが施されています。つまり、一般的なバーチャルホームステージングは、技術者の手によって加工画像が作られているわけです。

しかし、AIホームステージングの場合は、AIによる画像生成や編集技術を使って、空室写真に家具やインテリアを仮想的に配置するという手法が採用されます。AI技術は世界中で開発合戦が行われていることから、急速に進化しています。ホームステージング業界でも、この技術を利用して、AIが写真を解析し、壁・床・窓の位置を認識した上で、ユーザーが求めるイメージの部屋になるように家具を自然に配置します。現在、主流となっているAIホームステージングサービスは、ユーザー側が「北欧風」「モダン」「和風」「ラグジュアリー」など、好みの部屋のスタイルを指定するだけで、それに合ったインテリアを配置してくれるというサービスが多いです。

AIホームステージングは、バーチャルホームステージングの一種で、技術者の手を借りることなくAIが自動でホームステージングを施してくれるサービスと考えていただければ問題ないと思います。

AIホームステージングのメリット

AIホームステージングは、実際に家具を配置するホームステージングや通常のバーチャルホームステージングと比較した時、ユーザー側に大きなメリットがあるとされています。そこでここでは、不動産の売却や賃貸を検討した時、AIホームステージングを取り入れることで得られるメリットなどについて解説します。

  • ホームステージングにかかるコストを抑えられる
    AIホームステージングの大きなメリットは、従来型のホームステージングと比較すると、対策にかかるコストが圧倒的に安くなるという点です。例えば、専門業者に依頼して実際の部屋に家具などを配置してもらうという従来型のホームステージングの場合、1回あたりの費用として数十万円単位の費用がかかることも珍しくありません。もちろん、対策を施す部屋数や内容によって安く抑えることは可能ですが、2024年度における不動産売買で実施されたホームステージングのコストは10~20万円の間が最も多い割合を占めています。また、従来型のバーチャルホームステージングでも、画像を1枚生成してもらうのに3.5万円程度かかるのが相場となっています。しかし、AIホームステージングサービスを利用すれば、1枚当たりの画像生成が数百円〜数千円で実現できるとされているのです。コストについては、AIホームステージングが圧倒的に安くなります。
  • 対策にかかる時間が短くなる
    AIホームステージングの2つ目のメリットは、ホームステージングにかかる時間や手間が大幅に削減できるという点です。従来型のホームステージングを実施する場合、物件の印象を高めることができる家具を用意するところからスタートし、部屋の中に搬入、配置するという作業が必要になります。また、ホームステージングによって成約できたとしても、その後は配置した家具などを撤去するという作業が必要になるのです。大規模なホームステージングになると、業者探しや業者との打ち合わせにもかなりの時間を要してしまうことになり、ホームステージングにかかる時間だけで考えても数日から数週間の時間が取られてしまうのです。一方、AIホームステージングの場合、物件画像が用意出来れば、パソコン上でAIホームステージングサービスにアクセスし、画像をアップロードすれば良いだけです。AIへの指示が上手くいけば、最短で30秒程度でホームステージングが施された物件画像が出来上がります。したがって、インターネット上の物件検索サイトに広告を掲載したいと考えた時には、圧倒的なスピード感でホームステージング後の広告画像を反映できるようになるのです。ちなみに、従来型のバーチャルホームステージングも、家具を実際に配置するよりは時間を短縮できますが、最短でも1日程度の時間を要します。速さを優先する場合は、AIホームステージングが最もオススメと言えるでしょう。
  • 多様なスタイルを用意できる
    AIホームステージングは、対策にかかるコストが安い、また画像生成にかかる時期が圧倒的に短いという点から、1枚の空室画像から複数パターンのホームステージング画像を生成しても負担になりにくい点も大きな魅力と言えるでしょう。物件広告を見る入居希望者は、それぞれ異なる好みを持っているため、幅広い層の顧客にアピールすることができるようになります。従来型のホームステージングの場合、実際に家具を配置するわけなので、一度に複数のホームステージング例を用意することは物理的に不可能です。もちろん、ホームステージングを施した後、他のスタイルに変更を依頼することは可能ですが、その場合はコストや時間がさらにかかってしまうことになり、ホームステージングの目的である「早期の成約」が難しくなるのです。また、従来型のバーチャルホームステージングなら、仮想空間上で対策を施すので、複数パターンの画像を用意することが可能です。しかし、1枚あたり数万円単位のコストがかかるため、複数パターンの画像を用意するのは費用対効果的にあまり望ましいとは言えないでしょう。AIホームステージングは、コストをかけずに顧客の好みに合わせて比較提案ができるという点も大きなメリットとなります。

AIホームステージングは、物件画像を用意すれば、AIが自動的に魅力的な物件画像に変換してくれるというサービスです。上で紹介しているように、従来型のホームステージングと比較すると、対策にかかる費用や時間を大幅に削減することができるため、顧客が比較検討できるよう複数のスタイルを用意することができるのです。今の時代、中古住宅の購入や賃貸住宅の引っ越しを検討した場合、まずはインターネット上の物件検索サイトにアクセスするようになっています。AIホームステージングを採用すれば、物件広告として魅力的な画像を用意することができるようになるため、クリック率や問合せ率が高まり、その結果として反響や成約率の向上につながると期待できるのです。

また、AIによる画像の加工技術が大幅に進化した現在では、空室状態の画像に家具などを配置するだけでなく、既存家具や壁の汚れなどを消すという加工も施してもらうことができるようになっています。そのため、居住中の物件を売却する際などは、不用品の回収を依頼しなくてもAIにより画像を加工してもらうことができ、スピーディーに物件広告を出すことができるようになります。

なお、従来型のホームステージングでも、対策を施した後にプロのカメラマンに撮影をしてもらい、その画像を広告として利用することができます。AIホームステージングと比較すると、コストや時間はかかりますが、物件広告の閲覧率や問合せ率の向上、その結果としての成約率の向上については大きな違いはありません。

ちなみに、ホームステージングによる物件広告の効果としては、ポータルサイトの閲覧数が平均3~5倍になったという事例が報告されています。

参照:ホームステージング額書2024年

AIホームステージングが注目されている理由について

AIホームステージングがどのようなサービスなのかは分かっていただけたと思います。それでは、昨今の不動産業界でAIホームステージングへの注目度が高くなっている理由についても簡単にご紹介します。

そもそも、不動産業界でホームステージングが注目され始めたのは、不動産の売却や賃貸に関する集客において、物件写真の印象が反響率に直結するからという理由があります。多くの入居希望者や購入希望者は、物件探しの最初の段階で、不動産検索サイトに掲載されるさまざまな物件写真を確認して「内見してみたいかどうか」を判断するのです。つまり、不動産検索サイト内に掲載する物件写真について、第一印象で魅力的に見えるかどうかが成約率に大きな影響を与えるわけです。

そのため、魅力的な物件広告を作り出すための一つの手法として注目されたのが、家具やインテリアを設置した写真を利用する「ホームステージング」なのです。従来のホームステージングは、売却や賃貸を考えている物件に対して、実際に家具などを搬入、設置したうえで物件画像を撮影することで、魅力的な物件広告に仕上がるような演出が施されていました。ただ、実際に家具を配置する従来型のホームステージングは、対策を施すのにコストも時間もかかってしまいます。部屋を魅力的に飾るための家具のレンタル費用、実際に家具などを搬入、配置するための人件費、魅力的な画像を撮影するためのプロカメラマンの手配など、1回のステージングで数十万円のコストがかかることも珍しくないのです。

そこでこうした課題を解決するための手法として登場したのが、AIを使ったホームステージングです。AIホームステージングであれば、空室画像を用意すれば、ユーザーの要望に合わせて自動的に家具を配置し、たった数十秒程度の時間で魅力的な広告画像を作り出すことができるのです。さらに、画像を生成するためのコストについても、先ほど紹介した通り、圧倒的に安いという利点が存在します。

中古住宅市場や賃貸物件市場では、不動産検索サイト内で顧客の目を引くことが非常に重要な時代になっています。AIホームステージングは、圧倒的な低コストかつスピーディーに「見栄えの良い物件画像」を用意してくれるというメリットがあるため、不動産業界での注目度が急激に高くなっているのだと考えられるでしょう。

AIホームステージング利用時の注意点について

ここまでの解説で、AIホームステージングがどのような対策で、また従来型のホームステージングと比較した時、どんなメリットがあるのか分かっていただけたと思います。AIホームステージングは、物件画像を用意して、専用サービスにアクセスすれば、誰でも簡単に魅力的な物件画像を作成することができます。そのため、その手軽さや低コストさが注目され、利用を検討する方が急増しているとされています。

ただ、AIホームステージングの利用については、いくつか注意しなければならないポイントがあるので、ここでは利用時の注意点をいくつかご紹介します。

不自然な生成結果になることも多い

AI技術は、現在でも開発途上の技術です。世界中で開発合戦が行われていることもあり、さまざまな面で技術の向上が急速に進んでいるとは言われているのですが、人間が自分の手で作業をするのと比較すると、どうしても不自然な仕上がりになってしまうケースも少なくないのです。

AIホームステージングサービスについても、いろいろな企業がアプリを公開していて、低価格で利用可能なサービスがどんどん増えています。しかし、実際に利用してみると、家具が壁に埋もれてしまう、影や照明の方向が不自然になるなど、満足のいく生成結果がなかなか出てこないことも珍しくないとされているのです。

ほとんどのAIホームステージングサービスは、画像をダウンロードするまで費用がかからないため、再生成を何度も行うことで広告に使用できるレベルの物が出来上がることも期待できます。しかし、中には何度実施しても自分が希望するレベルの物件画像にならないなど、時間を無駄にしてしまうケースがあるのでその点は注意しましょう。AIホームステージングは、現在も開発が進められている発展途上のサービスのため、気軽に使えるようになるにはまだまだ時間がかかるかもしれません。サービスごとに、生成結果にかなりの格差があるので、時間がある時にでも試してみると良いのではないでしょうか?

法的・倫理的配慮に注意が必要

AIホームステージングを利用する場合、不動産広告に関する規約に違反せず、消費者に誤解を与えないようにするということに注意しなければいけません。実は、バーチャルホームステージングやAIホームステージングなど、CG家具を仮想的に配置する手法は、不動産の表示に関する公正競争規約と照らした場合、利用には注意が必要と(公社)首都圏不動産公正取引協議会が声明を出しているのです。

AIホームステージングなどは、実際の部屋に家具を配置するわけではなく、画像合成の技術を利用して、CG家具を配置します。この際、パソコン上であれば、どのような家具でも配置することが可能なのですが、実際の部屋に持ち込めないような家具などを配置すると、事実と異なる表現となり、虚偽広告という扱いを受けてしまう可能性があるのです。
例えば、実際の部屋に家具を搬入する時には、エレベーターや通路、ドアの広さによって搬入することができない大型家具が存在します。しかし、仮想空間上で家具を配置するサービスは、搬入のための経路など考えずに家具を配置してしまうことがあり、本来は設置できないような家具を使って物件を魅力的に見せるということも出来てしまうのです。しかし、このような方法は、顧客を誤解させる結果になるため、優良誤認を誘引する表示規約違反とみなされてしまいます。

AIホームステージングは、不動産に関する知識があまりない人でも簡単に利用できますが、その場合は、気付かないうちに表示規約違反になってしまうケースが考えられます。AIは、画像から部屋の大きさなどを判断することはできるかもしれませんが、扉の大きさや部屋までの通路の広さまで考慮してホームステージングを施すわけではありません。したがって、生成された画像が、法律に適合した状態の広告になるのかは、自分で判断しなければならない点は注意が必要です。

なお、AIを利用してホームステージングを施す場合、消費者保護の観点から「バーチャルイメージであること」を明記する必要があるので、その点も注意しましょう。

関連:バーチャルホームステージングの主な機能と導入時の注意点をご紹介!

商用利用の可否について

AIホームステージングで生成される画像については、利用するサービスやプランによって商用利用の可否が異なるので注意が必要です。

有料のサービスであれば、生成された画像の商用利用は、利用者の責任において行えば良いとされているケースが多いのですが、細かく利用方法が定められているケースがあるかもしれません。したがって、集客のため、不動産検索サイトに掲載したいなど、商用利用が目的でAIホームステージングを利用する場合は、必ず利用規約を確認したうえで使うようにしましょう。

内見(内覧)の対策にはならない

AIホームステージングについて、致命的な問題点となるのが、内見や内覧時の対策としては何の役にも立たないという点です。

ここまでの解説を見ていただければ分かると思いますが、AIホームステージングは、あくまでもホームステージングが施された状態の画像を生成するだけのサービスであり、実際の部屋に何らかの対策を施してくれるわけではないのです。確かに、不動産検索サイトなど、物件の広告段階では、顧客の目を引くことができ、問合せ率を高めることができるという効果が期待出来ます。しかし、実際に成約するかどうかは、画像を見ただけで決めるような人はいないのです。

不動産の売買でも賃貸でも、成約するかどうかの最終判断は、物件に足を運んで自分の目で良し悪しを確認するという工程を挟みます。従来型のホームステージングの場合、実際に家具が配置されているため、画像を見た時と同じように、魅力的な部屋と感じてもらうことが出来るのですが、AIホームステージングの場合、空室状態もしくは居住中の物件を確認させることになるのです。この場合、好印象を持っていたホームステージング画像と大きな格差が生じてしまうため、物件への印象が余計に悪くなる可能性もあるとされています。そのため、不動産会社の中には、従来型のホームステージングとAIホームステージングを併用する企業が多くなっていると言われています。従来型のホームステージングを実施すれば、内見・内覧時の印象を良くできますし、AIホームステージングで複数パターンの物件画像を用意すれば、幅広い層の顧客にアピールできるようになるためです。

どちらにせよ、AIホームステージングによる対策は、あくまでも広告段階でしかその効果を発揮できないという点は注意が必要です。

まとめ

今回は、ホームステージングの新たな形として、不動産業界で注目度が高まっているAIホームステージングについて解説しました。

AI技術は、さまざまな業界で活用されるようになっており、特に画像や映像の加工部門は、最もAIの利用が進んでいるような気がします。そのため、不動産業界では、広告段階でのイメージを良くすることができ、物件の反響率に直結する強力なツールとしてAIホームステージングが注目を集めるようになっています。従来型のホームステージングと比較すると、圧倒的に低コスト、短時間で広告用の画像が生成できるため、今後の不動産マーケティングにおいては、AIホームステージングが欠かせない存在になるのではないかと言われています。

ただ注意しておきたいのは、AIホームステージングは、あくまでも画像生成のための技術で、実際の部屋には何の対策も施してもらうことはできません。不動産の売買や賃貸においては、最終的な決断を下すため、実際の物件に足を運んで良し悪しを確認するという工程が必ず挟まれます。したがって、ホームステージングによる早期の成約を目指す場合には、AIホームステージング単体の対策では不十分で、従来型のホームステージングが必須だと考えた方が良いです。