ホームステージングで素敵な空間を作るためのコツを紹介
中古住宅の売却や賃貸住宅の早期成約を手助けしてくれる方法として、ホームステージングへの注目度が年々高くなっています。
ホームステージングは、新築住宅の販売促進手法であるモデルルームやモデルハウスのようなもので、売却や賃貸に出すことを検討している物件内を、素敵な空間にコーディネートすることで高値売却や早期成約を実現するという対策になります。そして、このホームステージングの特徴の一つとして、専門業者に依頼するという方法以外に、物件オーナーや仲介を担う不動産会社の担当者など、自分たちで対策を施すことも可能とされている点があります。
ただ、ホームステージングは自分で実施できると聞いたときには、「モデルルームみたいな素敵な空間にするセンスは一般人にはないのでは?」「モデルルームはプロのインテリアコーディネーターが作っているのだし、自分では効果的な対策にならないのでは?」など、あきらめの気持ちを抱いてしまう人も多いようです。ホームステージングを実施するためには、部屋を装飾する家具やインテリアなどを用意しなければならないものの、どんなアイテムを用意すれば部屋が魅力的に見えるようになるのかは、専門知識がない人の場合、なかなか判断がつきにくいものです。
そこでこの記事では、自分でホームステージングを実施してみようと考えている方に向け、モデルルームのような素敵な空間を作るためのコツをご紹介します。

見え方の工夫について
新築住宅のモデルルームやモデルハウスは、広い部屋にプロがインテリアコーディネートすることで素敵な空間が作り出されているというイメージを持っている方が多いです。そのため、自分でホームステージングの実施を検討した時には、「モデルルームのように部屋が広くないから、難しい…」と考える人が少なくありません。
しかし実は、モデルルームというのは、実際の面積が広く作られているというわけではなく、コーディネートの工夫によって空間を広く見せているのです。そもそも、モデルルームやモデルハウスは、実際に販売している物件そのものを使って作られているケースも多いため、中古住宅の売却や賃貸を促進するためのステージングと条件は変わらないのです。
それでは、なぜモデルルームやモデルハウスというのは、「広くて素敵な空間」という印象を与えるのでしょうか?これは見る人の「目線」を意識して対策を施しているからなのです。人間の目は、ある空間を見た時、実際の広さよりも「広く感じてしまう」ということが意外に多く、ホームステージングを実施する際にちょっとした工夫を施すことで広々空間に感じさせることも出来るのです。ここではまず、見え方の工夫について、いくつかのコツをご紹介します。
部屋をコーディネートする時はなるべく区切らない
ホームステージングを実施する際には、可能な限り部屋を区切らないようにすると良いです。ホームステージングを自分たちで実施する際には、ダイニングとリビング、リビングと書斎など、部屋同士の区切りとなる部分に仕切りを設けて区切るという方法が主流です。
しかし、モデルルームやモデルハウスのように、広々とした素敵な空間に感じさせるには、部屋やコーナー同士の区切り(仕切り)はなるべく作らないようにすることが大切なのです。もちろん、場所によって仕切りを配置すべき場合もありますが、そのようなケースでも、人の目線よりも低い物(棚やソファーなど)で区切るようにしてみると良いです。可能な場合は、区切りの先が見通せるようなガラスやスケルトン素材を採用したパーテーションなどでも構いません。
部屋の中を見た時、目線を遮る部屋の区切りを意識させないようにすれば、見通しが良くなり本来の部屋の面積以上の広さを感じさせることができるようになります。
背の高い家具の配置について
次は、背の高い家具の配置についてです。ホームステージングは、家具などを配置して部屋を素敵な空間に見えるようにコーディネートするのですが、この際には、背の高い家具を配置する場所を間違うと部屋に圧迫感が出てしまいます。例えば、ドアから部屋に入った時、真正面の壁に背の高い家具が配置されていると、それを見た人の中には圧迫感を感じてしまう人がいるとされています。
人の視線の高さ(立っている時)は、平均で1.5~1.7m程度です。背の高さは人によって異なりますが、日本人の平均的な視線の高さであれば1.5m前後を想定しておくのが良いでしょう。そして、この目線よりも高い家具があると、「家具が目に入る⇒圧迫感を感じる⇒狭く感じる」といった印象を与えやすいとされているのです。
したがって、背の高い家具をステージングに使用する際には、遠近法を利用できるように、手前から順に高いものから低くなっていくように設置すると良いです。こうすると、部屋がすっきりと見え、より広く感じるようになります。
床面を可能な限り見せる
人の目は、部屋の広さを床面の空き(広さ)で感じ取っていると言われています。皆さんも、部屋の中心部や家具との間に床面が多く見える部屋の場合、広くてゆとりがあると感じられるのではないでしょうか?空室状態の物件を見た時、通常よりも広く感じ、実際に生活を初めて見ると狭く感じるのもこれが原因かもしれませんね。
つまり、ホームステージングを実施する際、部屋を広く見せたいと考えた時には、床面もしっかりと残るような配置を検討することが大切です。良かれと思って、たくさんの家具やインテリアを配置しすぎると、ゴチャゴチャしたイメージや狭く感じさせる可能性があるのです。また、もともと部屋があまり広く無くてステージングが難しい…というケースでは、ダイニングテーブルやデスクを壁にピッタリとくっつけるように配置するのがおすすめです。
テーブルやデスクなどの大型家具は、部屋の中央部に配置するよりも壁際に配置する方が、床面が広くあけられるようになるので、空間にゆとりが生まれるのです。
鏡を利用する
狭い部屋を広く見せるためのアイテムとして有名なのが「鏡」です。鏡は、部屋に入った時、正面に配置しておくだけで、人の目で見た時には「その先にさらに空間が続いている」と錯覚させることができ、部屋が広く見えるのです。
モデルルームなどでも鏡を利用する方法はよく採用されているのですが、ホームステージングを実施する際は、姿見など大型の鏡をうまく活用すると良いです。見学者の体全体が映るような大きさの鏡を選べば、部屋の抜け感や開放感を生み出すことができるようになります。
空間をスッキリ見せるコツ
次は空間をスッキリと見せるためのコツです。モデルルームやモデルハウスは、家具などが置かれているだけでなく、各所にインテリア小物を配置することでおしゃれにコーディネートしています。これを見た時には、小物類がたくさん置かれているのに、なんで空間がスッキリしているように見えるの…と不思議に感じたことがある人も多いかもしれません。
実は、モデルルームなどについて、小物類を置いている状態でもスッキリと見えるのは、「外に出ているモノ」の数を極力少なくするという工夫が施されているからなのです。ちなみに、モデルルーム以上にスッキリとした空間に見えるホテルについても、家具や小物の点数を数えると、1室あたり100点程度はあるとされています。モデルルームについても、これに習って1室あたり200点以内でまとめるようにされていると言われています。
ただ、ホームステージングについては、居住中の住宅に対して実施するケースもあり、この場合、家の中で目に見える物の数は数千点以上に及んでしまうこともあるのです。そして、目に見えるモノの数が多くなると、ゴチャゴチャしている、生活感が出てしまうなど、見学者に悪印象を与えてしまうケースがあるのです。
そこで、居住中の家にホームステージングを実施する場合には、空間を飾ることを考えるのではなく「出ているモノを片付ける」という点に注目することが、モデルルームのようなスッキリとした広い空間に見せるためのコツになるのです。ここでは、部屋をスッキリ見せるためのコツをいくつかご紹介します。
モノをひとまとめにしてゴチャゴチャ感を無くす
居住中の家を売却する場合、日常生活で使用する雑貨が目に見える位置にたくさん出てしまうことで、見学者が生活感やゴチャゴチャした印象を持ってしまいます。皆さんも、普段生活している空間には、生活雑貨や雑誌、子供のおもちゃなどが目に見える位置に置かれているのではないでしょうか?特に、頻繁に使用する物品に関しては、引き出しの中にきちんと片付けるということがなかなか難しいです。
しかし、家の売却を考えた時には、これらのモノが物件そのものの印象を悪くする要因になってしまうのです。したがって、ホームステージングを実施する際には、表に出ているモノの数を減らすという目的で、「ボックス」や「フタ付きバスケット」などを使用して、ひとまとめに片付けてしまうのがおすすめです。片付ける場所を決めておけば、使用した後も手早くしまうことができるようになるので、内覧の度に焦って片付けなければならない…と言った事態を防止することにもつながります。
表に出しておくモノは統一感のあるデザインに
家の中にあるモノの中には、「片付けるのが難しい」または「完全に片付ける方が違和感を生む」というモノもあります。例えば、キッチン周りに関して、調味料や調理器具などについては、全て見えない位置にある方がおかしいです。また、洗面台やバスルームなどに関しても、石鹸などのボトル類は完全にしまうことの方が難しく、片付けたとしても違和感を生む可能性があります。しかし、表に出したままの状態にすると、生活感やゴチャゴチャしたイメージを与える可能性が残ります。
これらの「完全にしまうことが難しいモノ」に関しては、「同じデザイン・同じフォルム」にそろえるなど、統一感を意識したコーディネートを施すと良いです。目に見えるボトル類について、色やフォルムなどのデザインが異なるモノが置かれている場合、ゴチャゴチャとした散らかった印象を与えやすくなります。その逆に、統一感のあるデザインにそろえることができれば、モノが出ていたとしても、スッキリとした印象を与えることができます。
壁面収納を活用する
モノが多すぎてどうしても片付かない…というケースの場合、壁面収納を活用するという方法もあります。壁面収納をうまく活用することができれば、単調に見える壁にデザイン性を加えられるうえに、効率よくモノを片付けることができるようになるのです。
特に、天井から床までを使用する壁面型収納の場合、凹凸感がなく、スッキリとした印象を残したまま、収納力を向上することができます。注意点としては、壁面収納に関しても、目線が高い家具となるため、ドアの真正面に置いてしまうと、先ほど紹介したように圧迫感を与えてしまう危険があるため、側面などに配置するようにしましょう。なお、収納家具については、白や薄い木目調など、淡い色の製品にすることで、大型家具特有の圧迫感を軽減できるので、デザインにも注目すると良いです。
インテリアについて色数を減らす
新築のモデルルームやモデルハウスに足を運んだことがある人なら気付くかもしれませんが、モデルルームに設置されている家具やインテリアは、カラー配色に特徴があります。実は、モデルルームに配置されるインテリアは、最も広い部分を取るベースカラーが70~75%、アソートカラーが20%前後、その他、部屋のポイントとするアクセントカラーが5%程度と言った配色がなされていて、これによりスッキリと見えるバランスの良い空間が実現できているのです。
一般の方が自分でホームステージングを施す際には、たくさんの色を使って装飾したほうがおしゃれに見えるのではないかと考えてしまいがちです。しかし、不必要なほどたくさんの色を使用した場合、逆にゴチャゴチャした印象を与えてしまうことになり、物件そのものの印象が悪くなってしまうのです。
なお、インテリアコーディネーターが作るモデルハウスの場合、アソートカラーに2色以上、ポイントカラーに2~3色と、それなりの数の色を使用します。この場合、カラーコーディネートの専門知識も持っているため、ある程度の数の色を利用したとしても、空間がゴチャゴチャした印象にはなりません。ただ、カラーコーディネートに関する知識がないという方がステージングを実施する場合には、なるべく色の種類は少なくするのがおすすめです。特に、初めてホームステージングを実施するという方の場合、ベースカラー・アソートカラー・ポイントカラーそれぞれ一色ずつとし、部屋の中を3色まででまとめることからスタートするのがおすすめです。
ちなみに、色選びに関しては、なるべく同系色のものを使ってコーディネートを施すということも、部屋をスッキリ見せるコツになります。
装飾に使用する「素材」にも注目する
ホームステージングを施して、モデルルームのような素敵な空間を作り出したいと考えた時には、家具や小物類の「素材(マテリアル)」に注目する必要があります。
モデルルームやグレードの高いホテルの部屋は、表に出ているモノの数は少なく、またカラー配色もシンプルにまとめられています。そのため、本来なら病院のような殺風景な印象を与えてしまってもおかしくないと言えるのです。しかし、モデルルームやホテルの部屋は、家具や小物類の「素材(マテリアル)」選びに気を使うことで、見学者に好印象を与えるような空間を実現しています。モデルルームなどは、室内がシンプルにまとめられている分、配置されている家具などの素材の印象が強く出ます。
これからも分かるように、新築のモデルルームのような空間を参考にホームステージングを実施しようと考えた時には、スッキリとした空間でも殺風景に見せない、チープ感が出ないようにするためにも、家具や小物の素材選びが重要になるのです。ここでは、素材によってどのような印象を与えるのかについて簡単にご紹介します。
素材によっては「優しさ」を感じさせる部屋にすることができる
- 無垢素材
- ラタン(籐)
- リネン(麻)
- ウール(羊毛) など
上記のような素材は、部屋に優しさや温かみを加えることができます。モデルルームやリゾートホテルの中には、スッキリとしたシンプルな空間なのに「冷たさ」は感じない部屋に仕上げている場合があります。これは、家具やファブリック類を選ぶ際、上記のような温かみを感じる素材を採用しているからなのです。
空間にスタイリッシュさを加える
- 金属(鉄やステンレス)
- 大理石
- ガラス
- シルク
- 皮革 など
上記のような素材は、スタイリッシュでクールなど、都会的な印象を与えることができるとされています。
例えば、白色のベッドカバーでも、素材がリネンの物と表面がツルりとしたシルクの質感では、人に与える印象が大きく変わります。したがって、部屋のコーディネートを考える時には、どのような印象の部屋にしたいのかをよく考え、それを実現するためにもきちんと素材もこだわって選ばなければいけません。なお、最近では、家具やインテリアについては、ネット通販を利用すれば手軽に集めることができます。しかし、ネット通販の場合は、素材感を確認することができないため、手元に届いたものを見た時に「思っていたモノと違う…」となってしまうケースが考えられます。したがって、ホームステージングに使用する家具やインテリアについては、素材感を確認するためにも、可能な限り実物をチェックしたうえで購入できる方法を選択するのがおすすめです。
ちなみに、ステージングに使用するアイテムについては、素材によって「チープさ」が出てしまうものもあるので、その点も注意しましょう。例えば、収納BOXについては、プラスチック製のものが安価なため、普段使いするアイテムとして主流と言えます。しかし、ステージングに使用するアイテムとして見た時には、どうしてもチープさや生活感が出てしまいやすくなります。
ホームステージングは、見学者が部屋を見た時の第一印象が非常に重要になるので、普段使い慣れているアイテムに関しても、素材によって与える印象が変わるということを意識しながら使用する物を選ぶようにしましょう。
間接照明を活用する
ホームステージングは、間接照明を上手に活用することも大切です。ホームステージングにおける間接照明は、空間の奥行と広がりを与えることで、部屋を広く見せることができるようになるとされています。また、暖かみのある柔らかな光は、上質でリラックスできる雰囲気を作り出す効果もあります。この他、スポットライト的に使用すれば、見学者の視線を物件の魅力的な部分に誘導することができるようになるので、良さをより強調することができるようになります。
間接照明の具体的な効果については、以下のような点です。
- 空間を広く見せる
一つ目は空間を広く見せる効果です。例えば、壁や天井に光を反射させることで、空間に立体感と広がりが生まれ、実際の面積以上の広さを感じさせるとされています。他にも、天井を照らすコープ照明は天井を高く見せる、壁を照らすコーニス照明は壁の広がりを演出するなど、部屋を広く感じさせることができます。 - 雰囲気を演出する
間接照明は、光源が直接見えず、柔らかい光を壁や天井に反射させる方法なので、眩しさを感じさせることなく、落ち着いた心地よい雰囲気を作り出すことができます。さらに、木目やタイルの陰影を際立たせるという効果があるため、空間に奥行と高級感を加えることができるとされています。 - 視覚的な効果が期待できる
上述したように、スポットライトのような使い方もでき、特定の場所に視線を集めるという効果が期待出来ます。例えば、玄関のニッチやアート作品の周りなど、魅力を引き立てたい部分に間接照明を当てることで、物件の長所をより効果的にアピールすることができるようになります。居住中の物件などであれば、間接照明とインテリアの配置を工夫することで、洗練された空間に演出することができるようになります。
モデルルームやモデルハウスは、間接照明を上手に使って魅力的な空間を作り出しています。ホームステージングでも、内覧者へ与える印象が大きく向上し、生活空間のマイナスイメージを軽減させることができるので、間接照明は上手に活用すると良いでしょう。
まとめ
今回は、ホームステージングを実施する際、中古住宅や賃貸住宅でも、モデルルームのような素敵な空間を作るためのコツについて解説しました。
モデルルームは、プロのインテリアコーディネーターがデザインしているため、内覧者の購買意欲を高めることができるような空間に仕上がっています。そして、ホームステージングは、中古住宅の売却や賃貸物件の早期成約を実現するため、モデルルームのような素敵な空間になるようにコーディネートする方法と解説されることが多いのです。
ただ、ホームステージングの場合には、コスト削減などを目的に、インテリアや家具の知識がない一般の方が対策を施すケースも多いです。そして、実際に出来上がった室内を確認してみると、「ゴチャゴチャして見える…」「部屋が狭く感じるようになってしまった…」などと、失敗に感じてしまうケースも少なくないのです。これから、自分たちで物件のホームステージングを進めようと考えているのであれば、記事内でご紹介しているポイントに注意しながら対策を施してみると良いです。見学者に良い印象を与えられるような空間を作るためには、プロならではのコツのような物があるので、闇雲に対策を施すのではなく、計画的に作業を実施してください。
なお、DIYによるホームステージングでは、どうしてもイメージ通りの部屋に仕上がらない…となってしまうケースも少なくないので、その場合は、専門業者に対策を依頼するのがおすすめです。ホームステージングの実施目的は、早期の成約だと思いますし、納得のできない仕上がりのまま内覧を受け付け、なかなか成約に至らないと悩むぐらいなら、プロに対策を依頼して早期の成約を目指すべきだと思います。