2025.10.12

ファミリータイプ物件のホームステージング!全室とメインルームに限るならどっちが正解?

今回は、一戸建て住宅の売却を検討しているなど、ファミリータイプの物件におけるホームステージングについて、売却を有利に進めるためには全室に対してホームステージングを実施すべきか、はたまたリビングなど、メインとなる部屋にだけ絞ってホームステージングを実施する方が良いのかについて考えてみたいと思います。

昨今では、不動産の売買や賃貸を促進するための方法として、ホームステージングと呼ばれる対策に注目が集まるようになっています。ホームステージングは、もともと中古住宅市場が活発なアメリカで誕生した手法で、売却を検討している物件について、部屋の中に家具やインテリア、照明や植物を設置して、内覧した時に受ける印象を良くすることで、高値での売却や早期成約を後押ししてくれるとされています。アメリカでは、1970年代にホームステージングが誕生したとされ、中古住宅の取り引きが盛んな欧米では、家を売りだす際にほとんどの物件に対してホームステージングが実施されるようになっていると言われています。

日本では、2000年代に入ってからホームステージングが取り入れられ始めたとされ、2020年頃より不動産の仲介を担う不動産会社を中心に、一気に利用が拡大していったとされています。現在では、不動産の売買・賃貸ともに、多くの物件でホームステージングが取り入れられるようになっているのですが、対策を施すにはそれなりのコストがかかってしまうことがネックとなります。そのため、ファミリータイプの物件におけるホームステージングは、限られる予算の中で「どこにホームステージングを施せば良いのか?」ということに悩む場合が多いとされているのです。

そこでこの記事では、全室に対策を施す場合とメインの部屋に絞って対策を施す場合、それぞれのメリットについて解説します。

ホームステージングにかかる費用について

まずは、家の売却を検討し、ホームステージングの実施を検討している方が最も気になる費用について解説します。ここでは、ホームステージングの費用は、なにを持って決められているのか、またどれぐらいの費用がかけられているのかについて解説します。

ホームステージングの費用を決めるポイント

戸建て住宅の売却を考え、ホームステージングの実施を検討した時には、対策にかかる費用がどれぐらいなのか気になるはずです。戸建て住宅の場合、部屋数が多いこともあり、多額の費用がかかってしまうのではないかと不安に感じてしまう方も多いはずです。

まず、ホームステージングを専門業者に依頼して実施する場合の一般的な費用相場についてですが、家具を3カ月程レンタルするタイプのもので15~30万円程度が相場と言われています。しかし、専門業者に依頼して、建物全体をフルコーディネートしてもらうパターンになると、建物の大きさによっても変わるものの、100万円以上のコストがかかるケースもあります。

それでは、ホームステージングにかかる費用は、なにがポイントとなって変わるのでしょうか?ここでは、対策にかかる費用を決める主なポイントについて解説します。

  • 依頼する業者の手数料
    専門業者にホームステージングを依頼する場合、業者のスキルや経験によって料金が変わります。同じような内容のプランでも、料金が大きく異なるケースもあるので、予算に応じてさまざまな業者を見比べる必要があります。対策を自分で実施する場合は、この部分にかかる費用が削減できます。
  • 対策を施す部屋数
    ホームステージングにかかる費用は、対策を施す部屋数で大きく変わります。部屋数が多くなれば、用意しなければならないレンタル家具なども多くなりますし、作業に時間がかかるため人件費も上乗せされるためです。
  • 家具や小道具のレンタル費用
    ホームステージングに使用する家具やインテリアはレンタルすることが一般的です。これには、アートやクッション、照明、植物なども含まれていて、その費用はプランや家の広さ、部屋の数などによって変わります。また、レンタルする家具のグレード、運搬や設置作業の費用もホームステージングの費用に影響を与えます。
  • 実施期間
    ホームステージングの実施期間が長くなれば、家具のレンタル期間も長くなるため、費用が高くなります。
  • オプションサービス
    ホームステージングは、空室に家具を配置するといった空室ホームステージング以外にもさまざまなサービスが受けられます。例えば、居住中の物件の場合、既存家具の一時預かり、不用品の回収・リサイクル、ハウスクリーニングなど、物件の印象を良くするための対策全般を請け負ってもらうことが可能です。最近では、築年数が経過した物件のホームステージングとして、リフォームなども請け負ってくれる業者も増えています。ただ、これらはオプションサービスとなるため、対策を依頼すればホームステージングの費用が高くなっていきます。

ホームステージングの費用は、上記のようなさまざまな要因により上下します。例えば、業者に作業を依頼せずに自分で対策を施せば、ホームステージングにかかる費用を抑えることができます。また、戸建て住宅などの場合、全室にホームステージングを施すのではなく、リビングルームや寝室など、特定の部屋やエリアを選別して対策を実施することで費用を抑えることが可能です。

ただ、ホームステージングは、高値で売却することや早期に成約できるようにすることが目的であることを忘れてはいけません。予算にばかり注目し、中途半端な内容の対策になってしまうと、ホームステージングが持つ本来の効果が得られず、かけたコストが無駄になってしまう可能性があります。したがって、ホームステージングの実施を検討した時には、「いくらかかるのか?」など予算を前提に対策の内容を決めるのではなく、「何をすれば家が売れるのか?」に注目してホームステージングの内容を決めるのがおすすめです。費用については、売却価格に上乗せすることも可能なので、まずは「売れる物件にする」ということを重視しましょう。

実際にホームステージングにかけられている費用

それでは次に、不動産の売却を促進するため、ホームステージングを実施する場合、いくらぐらいの費用が実際にかけられているのかについて解説します。ここでは、日本ホームステージング協会が毎年行っている、ホームステージングの実態調査のデータをもとに、ホームステージングを実施した人がかけた費用について解説します。なお、ここでは、ホームステージングにかける費用の移り変わりについても簡単に分析します。

まずは、最新版のホームステージング白書2024年から「物件あたりのホームステージング費用」のデータをご紹介します。以下のグラフは、2023年度に実施された不動産売買部門でのホームステージングにかけられた費用の割合を示しています。

引用:ホームステージング白書2024年

上のグラフから分かるように、2023年度の不動産売却では「10~20万円未満」の費用をかけて対策を実施したケースが約3割となっています。その次に「5~10万円未満:25.7%」「20~30万円未満:23.9%」となっていて、ホームステージングにかけられた費用は先ほど紹介した相場感とおおよそ同じぐらいおさまっていると言えます。

ただ、ホームステージングにかける費用については、ここ数年で大きな動きを見せています。というのも、2022年度に実施された売買部門におけるホームステージングでは、ホームステージングにかけた金額は「5万円未満」という回答が35.7%と最も多い割合を占めていたのです。それ以前の2021年度も確認してみると、「15万~20万未満:23%」「20万~30万未満:23%」と、15~30万円という部分が最も大きな割合となっています。

この状況については、2022年におけるホームステージングは、不動産会社が自社社員を使ってホームステージングを実施していたということが要因とされています。2021年度までは、ホームステージングに係わるノウハウがなかったため、専門業者に依頼するケースが多かったようですが、対策の内容がつかめてきたことからホームステージングの内製化に動いた不動産会社が増えたのではないでしょうか?

しかし、2023年度の結果を見ると、ホームステージングにかける費用は、上昇に転じています。これは、不動産業界でホームステージングを取り入れる業者が増えてきたことで、対策の『質』が求められるようになったことが要因と考えられています。ホームステージングは、空室に家具を配置すれば良いというだけの単純な対策ではなく、物件ごとのターゲット層に合わせて、購買意欲を高められるようなコーディネートを実施しなければいけません。そのため、いくら内製化したとしても、専門知識を持たない人員が実施したホームステージングでは思うような効果が出せず、その結果、専門業者に対策を依頼するケースが増えているのだと思います。

特に昨今では、都市部を中心に物件価格の高騰が指摘されるようになっています。そのため、物件価格に見合うだけのステージングが求められるようになり、専門業者でなければお客様に好印象を与えるようなステージングが難しくなっているのだと思います。

ファミリータイプのホームステージングは全室とメインルームに絞るならどっち?

それではここから、ファミリータイプの物件に対するホームステージングは、全室に対策を実施するのが良いのか、それともメインの部屋だけに絞るべきかを考えてみたいと思います。

上でも紹介しているように、ホームステージングにかかる費用は、対策を施す部屋数が大きな影響を与えます。当然のことですが、ホームステージングを実施する部屋が増えれば、必要になるレンタル家具の数が多くなりますし、家具の搬入や配置に多くの人員が必要になることで人件費なども高くなってしまうのです。もちろん、部屋ごとのコーディネートを計画してもらわなければならないため、設計部分のコストもかかってしまうことでしょう。

ホームステージングを実施すれば、高値での売却や早期の成約が目指せるかもしれないということが理解できていたとしても、予算が限られる場合、どちらのアプローチが適切なのか迷ってしまう人が多いはずです。そこでここでは、全室にホームステージングを実施する場合と、メインの部屋だけに絞る場合、それぞれのメリットについて解説します。

なおここでは、メインの部屋に絞ってホームステージングを実施する時のポイントについても簡単にご紹介します。

全室にホームステージングを実施する場合のメリット

まずは、全室に対してホームステージングを実施する場合のメリットです。先程紹介したように、ホームステージングは「高値での売却」や「早期の成約」を実現するために実施するものなので、本来は予算を中心に対策を施す場所を決めるのではなく、売却を有利に進められるようにするには何をすべきか、ということを考えなければいけません。そして、費用がかかったとしても、全室に対してホームステージングを実施すれば、以下のようなメリットが得られます。

  • メリット1 物件の印象を総合的に高めることができる
  • メリット2 入居後の生活がより具体的にイメージできる
  • メリット3 どの部屋も写真映えする

全室にホームステージングを施せば、当然、物件全体の印象を高めることができます。プロのホームステージャーが全体をコーディネートするため、物件全体が統一感のある雰囲気になり、内覧者はより魅力的な空間と感じるようになるでしょう。

また、物件全体に家具などが配置されることで、まるでそこで人が暮らしているような空間を作り出すことができます。そのため、購入希望者が内覧した時には、入居後の生活をより具体的にイメージさせることができるようになり、購買意欲を高めることができるのです。内覧は、単に物件の良し悪しを確認する目的で足を運ぶのではなく、入居後の家族の生活をイメージし、自分たちのライフスタイルに合った物件なのかを判断することが目的です。全室に対するホームステージングは、そこでの暮らしを具体的にイメージさせることができるようになるため、購入を後押しすることが期待できるのです。

さらに、全室にホームステージングを施しておけば、インターネット上の不動産検索サイトに、魅力的な物件画像をたくさん掲載することができるようになります。今の時代、不動産の売買でも賃貸でも、まずはインターネットを介して物件探しを行うのが一般的です。そして、ホームステージングは、魅力的な空間にコーディネートされた画像を広告として利用できるようになるため、物件広告の閲覧数や問合せ数が増加するという効果が期待できるのです。当然、内覧数が増えれば、それだけ交渉できる回数が増えるので、高値での売却や早期成約につながる可能性が高くなるでしょう。

全室にホームステージングを施すという場合、費用は高くなるものの、反響率も高くなるという効果が期待できるはずです。

メインルームのみホームステージングを実施する場合のメリット

次は、ホームステージングを実施する部屋やエリアを選別するという方法のメリットです。上述したように、全室にホームステージングを施すという場合、大きな効果が期待できるというメリットがあります。しかしその反面、ホームステージングにかかる費用はどうしても高くなってしまうのです。

予算に限りがある場合は、ホームステージングにかける費用を抑える目的で、対策を実施する部屋を少なくするというケースが多いです。そしてこの場合、以下のような事がメリットになります。

  • メリット1 コスト効率が良くなる
  • メリット2 インパクトのある空間づくりができる
  • メリット3 入居希望者の潜在的な想像力を刺激できる

メインルームに限ってホームステージングを実施するという方法のメリットは、対策にかかる費用を削減できる点でしょう。もちろん、専門業者に依頼すれば、きちんと効果が見込める対策を実施してもらうことが可能ですし、限られた予算を重要度の高い部屋に集中投資するという方法は、コスト効率の面では非常に良い方法と言えます。

また、メインの部屋に予算を集中させ、魅力的な空間を作るという方法は、ホームステージングを施した部屋について、より印象的な空間になるという効果をもたらせます。空室状態の部屋と比較すると、インパクトのある空間に仕上がるため、ホームステージングされた部屋の印象がより残りやすくなり、全室に対策を施した時よりも、記憶として残る可能性まであるでしょう。

この他、メインの部屋だけ美しく魅力的な空間にしておくことで、他の部屋については、内覧者が勝手に自分の想像を働かせてくれるという効果が期待出来ます。つまり、全室に対してステージングを実施していなくても、他の部屋の可能性をお客様側に想像させることができるようになるのです。この場合、購入希望者が、自分の好みの部屋を勝手に想像してくれるようになるので、全室にステージングを実施した時よりも印象が良くなる可能性もあります。

このように、部分的なステージングの場合でも、きちんと計画的に対策を実施することができれば、高い効果を見込むことができるでしょう。

ステージング対象となる部屋を選定する時のポイント

それでは最後に、メインルームに限ってホームステージングを実施する場合、対策を成功に導くためにおさえておきたいポイントをご紹介します。

全室に対してステージングを行う予算が確保できないという場合、どの部屋にホームステージングを実施すれば良いかで迷ってしまうはずです。この場合、基本的にはリビングルームに集中して対策を施すと良いです。ファミリータイプの物件の場合、家族が集まり、長い時間を過ごすことになるリビングルームが最も重要度が高いため、ここにステージングの予算の大半を使うことをおすすめします。リビングルームのホームステージングでは、以下のようなアイテムが用意されます。

  • 快適なソファーセット
  • センターテーブル
  • カーペットやラグ
  • 観葉植物
  • 照明機器
  • 壁面装飾

専門業者に対策を依頼すれば、上記のようなアイテムを設置してもらえます。

次に、残りの予算を使って、キッチンやバスルーム、トイレなどの水回りのステージングを行います。水回りに関しては、一般の方が掃除したのでは汚れを落としきれないケースも少なくないので、プロによるハウスクリーニングにある程度の予算を利用すると良いです。きちんと掃除をして、空間が綺麗になれば、ちょっとした小物を配置するだけで、印象を大きく変えることができます。

例えば、キッチンやバスルームの装飾時には以下のようなアイテムが用意されることが多いです。

  • きれいなキッチン小物(調理器具、カッティングボードなど)
  • 小さな観葉植物
  • タオルセット
  • バスマット
  • ソープディスペンサー
  • 芳香剤など香りの演出

このように、キッチンやバスルームは、僅かな予算でも、清潔感と居心地の良さを演出することが可能なのです。

この他、寝室や子供部屋など、その他の部屋に関しては、清掃と整理整頓を徹底させるだけでも、十分に好印象を与える空間にすることができます。限られた予算を使って、ファミリータイプの物件をステージングするためには、全室に対策を施すことはなかなか難しいです。ただ、上で紹介しているように、メインとなる部屋(特にリビングルーム)に集中して対策を施すという方法でも、大きな効果を期待することは不可能ではありません。もちろん、全室にステージングを施さない場合でも、隅々まで清掃して清潔な空間を作るということは必要不可欠です。

まとめ

今回は、ファミリータイプの物件に対するホームステージングについて、全室に対策を実施すべきか、それともメインルームに限って対策を施す、どちらの方法が良いのかについて解説しました。

戸建て住宅など、ファミリー向けの物件は、部屋数が多いということから、ホームステージングの実施を考えた時には、どうしてもコストがかかりすぎてしまうのではないかという不安が先立ってしまいます。ホームステージングを実施する場合、各部屋に合わせて家具やインテリア、照明機器などを用意しなければならないため、レンタル費用がかさんでしまいます。また、家具の搬入や配置に多くの人員が必要になることから、人件費もかさんでしまうという問題が生じるのです。

そのため、予算の問題が立ちはだかり、全室に対策を施すことは難しい…という結論に至る場合も少なくないと思います。ただ、ホームステージングは、部屋を絞って対策を施すという方法でも、売却活動に好影響を与えることは可能です。そもそも、ホームステージングは、物件の魅力を最大限引き出し、潜在的な入居者に「ここで暮らしたい」と思わせる魅力的な空間を作り出すための方法です。内覧の準備として、清潔感や明るさ、そして居心地の良さを感じさせることができれば、予算に関わらず、良い結果につなげることができるので安心してください。

なお、昨今の不動産業界では、売買でも賃貸でも、早期の成約を実現するためにホームステージングが実施されるケースが増えています。そのため、近隣のライバル物件と差別化を図るには、ステージングの『質』が求められるようになっているということを頭に入れておきましょう。