ホームステージングに使用する家具の相談先について紹介
近年、不動産の売買や賃貸を促進するための方法としてホームステージングが注目されています。ホームステージングは、「築年数が経過した物件で、なかなか買い手が見つからない」「賃料を下げずに空室を解消したい」と言った悩みを解消するための方法として、仲介を担う不動産会社を中心に、導入する会社が増えています。
特に、少子高齢化による人口減少を要因として、供給過多の状況になっていると言われる賃貸物件市場では、ホームステージングが物件の魅力を引き出し、近隣のライバル物件と差別化を図るために、非常に効果的な対策とみなされるようになっています。
ホームステージングは、物件の魅力を引き出すため、家具などのインテリアアイテムを配置して生活空間を演出するという方法です。ここで気になるのは、ステージングに使用する家具などについては、どのような方法で用意すれば良いのかという問題なのではないでしょうか?
そこでこの記事では、空室ホームステージングに必要になる家具を用意するための方法や、家具選びについては誰に相談すれば良いのかについて解説します。

ホームステージングの方法と家具を用意する方法
ここではまず、ホームステージングを実施する方法や効果的なステージングにするために必要な家具などを用意する方法について解説します。
ホームステージングは、購入検討者に対し、物件をより魅力的に見せることで、売却をスムーズに進めることを目的に、1970年代のアメリカで誕生したとされています。売り出し中の中古住宅やマンションなどについて、部屋の内装を家具や照明、インテリアなどでコーディネートし、室内を魅力的に演出することで、内覧した時の印象を良くするのです。近年の、ホームステージング業界では、家具などを配置する空室ホームステージング以外にも、物件内を綺麗にするハウスクリーニングや軽微なリフォーム、不用品の回収などもホームステージングの領域とされていますが、やはりメインとなる対策は、家具などを配置してお洒落な空間を演出するという方法となります。
それでは、物件を魅力的に演出すると言われるホームステージングは、どのような方法で実現するのでしょうか?またステージングに必要な家具は購入する以外に用意する方法があるのでしょうか?その辺りを以下でご紹介します。
ホームステージングの実施方法について
ホームステージングを実施する方法は、主に以下の3種類の方法があります。
- DIYでステージングを実施する
一つ目は、DIYでホームステージングを実施するという方法です。DIYとは「Do It Yourself」の略語で、要するに自分で対策を施すという方法です。例えば、賃貸物件にホームステージングを実施する場合、賃貸物件オーナーや仲介を担う不動産会社の社員が必要な家具などを選んでコーディネートするという方法になります。DIYの場合、手間や時間をかけなければいけませんが、専門業者にステージングを依頼することと比較すると、対策にかかるコストを抑えることが可能です。ただ、物件内を綺麗に掃除する、リフォームを施すなど、専門技術が必要な作業についてはできない可能性があります。また、ホームステージングに係わる知識やコーディネートのセンスなどによっては、効果的なステージングにならないケースもあるので注意が必要です。 - 専門業者に対策を依頼する
ホームステージングサービスを取り扱っている専門業者に作業を依頼するという方法もあります。この場合、家具の選定や搬入、設置まですべてを任せることができるため、対策にかかる手間を大幅に削減することが可能です。専門業者には、ホームステージングに係わる知識を専門的に学んでいるホームステージャーと呼ばれる有資格者がいるため、物件の魅力を最大限引き出すコーディネートを実施してもらえる点がメリットと言えます。その一方、ホームステージングにかかる費用がどうしても高くなる点に注意が必要です。部屋の広さや採用する家具の種類、ステージングの内容と期間によっては100万円前後の費用がかかるケースもあります。 - バーチャルホームステージングを導入する
3つ目は、上で紹介した方法とは少し異なり、仮想空間上で売り出し中の物件や空室物件に、家具や照明、インテリアなどを配置して、広告画像として利用するという方法です。いわゆるバーチャルホームステージングと呼ばれる方法なのですが、実際の家具などを用意する必要がなく、搬入・配置作業も必要がなくなるため、対策にかかる手間やコストを大幅に削減することができます。居住中の物件売却については、仮想空間上で既存家具を消したりすることも出来るため、インターネット上に広告を出すことを考えると非常に便利な技術となっています。対策にかかる費用についても、画像1枚あたり1万円程度で依頼することができるため、低コストで実施できる空室対策として注目を集めています。ただ、あくまでもVR技術とCG技術を使用した仮想空間上での対策となるので、実際の物件を内見してもらう際には、役に立たないという点に注意が必要です。近年では、バーチャルホームステージングはあくまでも補助的な対策とみなされるようになっていて、家具などを実際に配置するリアルホームステージングと併用するケースが増えています。
このように、一口にホームステージングと言っても、実施方法はいくつかの種類があるのです。そして、実際の物件に家具やインテリアを配置するという「リアルホームステージング」を選ぶ場合には、魅力的な空間を作り出すための家具を調達してこなければならないのです。
それでは次項で、ホームステージングに使用する家具を調達する方法についてご紹介します。
ホームステージングに使用する家具の調達方法について
それでは次に、ホームステージングを施すために必要になる家具やインテリアの調達方法についても解説します。ホームステージングは、入居希望者が内見に足を運んだ時、入居後の生活を具体的にイメージできるようにすることで「ここに住んでみたい!」と思わせる方法です。そのため、部屋をコーディネートするために配置する家具やインテリアについては、傷や汚れが目立つ使い古した物を使用するわけにはいかないのです。ステージングに使用する家具は、新品状態の物もしくは、きちんと維持管理がなされている状態の良いものを用意する必要があります。
したがって、ステージングに使用する家具については、基本的に「購入する」もしくは「レンタルする」という2つの方法に限られるのです。どちらの方法で家具を調達するのかによって、コストや運用方法が変わるので、ここではそれぞれの手法を選んだ時のメリット・デメリットを解説します。
■新品の家具を購入してステージングする
まずは、ホームステージングに使用する家具やインテリアについて、新品を購入することで調達する場合のメリットとデメリットです。購入する場合のメリット面については、以下の通りです。
- 長期使用する場合、コストパフォーマンスが良い
- 購入すれば、所有物となるので、再利用することができる
- 家具やインテリアは、物件の雰囲気に合わせてカスタマイズすることも可能
購入する場合のメリットは、自分の所有物となるため、長期使用や再利用が可能になるなど、中長期的な視点で考えると、コストパフォーマンスが良くなるという点です。下で紹介するレンタルの場合、レンタル期間が決められているため、当初想定していた期間で入居者が決まらなかった場合、レンタル期間を延長しなければいけません。この場合、家具のレンタル費用は、使用期間が長くなるのに比例して積み重なっていきます。購入するという選択をすれば、入居者募集期間が長期化しても、ステージングにかかる費用は変わらないのです。また、集合住宅型の賃貸物件の場合、空室が出るたびに購入した家具を使ってステージングを施すことができるようになるため、長期的な視点で考えると、家具の購入にかけた経費はどんどん安くなっていくと言えます。
この他、自分で購入した家具やインテリアの場合、自由にカスタマイズを施すことができるので、物件の雰囲気に合わせて演出を変えることも可能です。レンタル家具の場合、所有権はレンタル会社にあるわけなので、ステージングの際にカスタマイズすることはできません。
一方、家具を購入するという選択の場合、以下のような点がデメリットになります。
- ステージングの初期費用が高くなる
- 保管場所が必要になる
- 維持管理や処分が課題となる
デメリット面としては、初回のホームステージングのことだけを考えると、初期費用が高くなってしまう点です。1室分の家具やインテリア、照明などを用意するためには、数十万円の費用がかかる場合があるため、1回のステージングのことだけを考えると、業者に依頼するよりもコストがかかってしまう可能性があります。ただ、購入した家具は、再利用することが可能なので、何度もステージングに利用すれば、コストを抑える結果になるかもしれません。
しかし、購入した家具を再利用することを想定する場合、入居者が決まった後に、家具の撤去作業をしなければならない、家具の状態を維持したまま保管できる場所を用意しなければならない点に注意が必要です。購入した家具は、何度も使用できる点がメリットなのですが、1室分の家具となると、それなりの量になるため、保管するためには広いスペースが求められます。さらに、将来空室が生じた時に再使用することを考えた場合、家具を良好な状態で保管し続けなければならないので、保管場所に求められる条件が厳しくなります。そのため、安全に家具を保管するために、専用の倉庫を借りなければならなくなり、そこにコストがかかってしまう恐れがあるのです。
この他にも、家具の状態を良好に保つためには、定期的な維持管理が必要になるなど、意外に手間とコストがかかってしまうという点がデメリットになります。
■レンタル家具を利用してステージングする
二つ目の方法は、レンタル家具を使用するという方法です。ホームステージングは、物件の魅力を最大限引き出すことを目的に実施されるため、部屋のコーディネートに使用する家具は、それなりに高いクオリティを求められます。レンタル家具であれば、最新のデザインやトレンド家具でもコストを抑えて用意できる可能性があるため、ホームステージングでの家具の調達は、こちらが主流かもしれませんね。
レンタル家具を利用する場合のメリットは以下の通りです。
- 初期費用が抑えられ、コスト管理がしやすい
- 必要な期間だけ借りられる
- 最新のデザインやトレンド家具を気軽に利用できる
レンタル家具の場合、1点当たり数千円から利用することができるので、ホームステージングにかかる初期費用を抑えることが可能です。また、1回ごとにレンタルすることになるため、空室対策にかけるコストの管理もしやすくなるという点がメリットです。
他にも、レンタル家具の場合、必要な期間だけ借りれば良いという点もメリットです。ホームステージングによって入居者が決まれば、家具は必要なくなるので、返せば良いだけです。そのため、購入した場合に必要になる、家具の保管場所や維持管理の手間などがなくなるなど、さまざまな面でコストを削減できるようになるのです。ちなみに、家具の配置や撤去作業に関しても、レンタル会社側がやってくれるので、ステージングの作業も楽になるでしょう。
この他、レンタル家具は、最新のデザインやトレンド家具を低コストでステージングに使用できる点が大きなメリットです。トレンド家具などは、かなり高価なので、素敵な空間が作れるとしても、購入することで用意する場合、ステージングにコストがかかりすぎてしまいます。レンタルの場合であれば、高級家具でも安価なレンタル料で使用できるようになるので、低コストで高級感のある空間を作り出すことができるのです。
ただ、レンタル家具を使用するという方法にも、以下のようなデメリットがあるので、その点は注意しましょう。
- 空室が長期化すると、レンタルコストが積みあがる
- 自由にカスタマイズできない
レンタル家具の費用は、期間によって決まります。レンタル期間が長くなれば、レンタル費用がどんどん積みあがっていき、場合によっては「購入したほうが安かった…」などといったことになる恐れもあるでしょう。この他、レンタル家具の所有権は、レンタル会社にあるため、物件の雰囲気に合わせたいと思っても、勝手にカスタマイズすることはできません。万一、レンタル家具に傷や汚れが残り、それがユーザー側の使用方法に問題があったと判断された場合、弁償などの厳しい対応がなされる可能性があります。
このように、ホームステージングに利用する家具の調達方法については、購入にしてもレンタルにしても一長一短があります。したがって、どちらの方法で家具を調達するのかは、利用期間や予算規模、保管場所や家具の維持管理に関する知識の有無などを考慮しながら、慎重に検討しなければならないと考えてください。
ホームステージングの家具選びは誰に相談すれば良い?
ホームステージングは、売買や賃貸を考えている物件の内装を家具や照明などのインテリアでコーディネートし、室内を魅力的に演出することで、高値での売却や早期の成約を目指すという方法と解説されることが多いです。
こう聞くと、ホームステージングは単純な方法で、誰でも簡単に実施できそうと感じるかもしれません。しかし、物件の魅力を最大限引き出すということを考えると、単に家具などを配置すれば良いというほど簡単な方法ではないのです。なぜなら、部屋の良し悪しは好みの問題が関係してきますし、内見者の属性によって物件に求めている条件が大きく異なるからです。例えば、同じ単身用の賃貸物件でも、ターゲットが男性と女性では、好印象を与えられる部屋のコーディネートは大きく異なるということが分かるはずです。
つまり、ホームステージングを実施する際には、物件ごとにどの属性の人がターゲットになるのかを考えたうえで、その人たちに「ここに住んでみたい」と思わせるような家具やインテリアを選ばなければならないのです。それでは、適切な対策を施すため、ステージングに必要になる家具選びをしたいと考えた時には、誰に相談すれば良いのでしょうか?
ここでは、ホームステージングの家具のコーディネートを成功させるため、家具選びを相談できる業者とそれぞれの特徴をご紹介します。
家具ショップ(レンタル家具会社を含む)
一つ目の選択肢は、家具ショップやレンタル家具店に相談するという方法です。家具を取り扱う専門業者なので、家具に関する専門知識が豊富なのがメリットと言えます。
家具ショップやレンタル家具店は、さまざまな種類の家具を取り扱っているため、物件の特徴に合わせて適切な家具の種類を提案してもらうことができるでしょう。また、家具ショップの中には、既製品に加えて、オーダーメイドア家具の相談ができるお店があるため、物件の特徴に合わせて最適な家具を作ってもらうことができる場合もあります。さらに、家具専門店となるので、購入後のアフターフォローに関しても、アドバイスを受けることができますし、保証内容によっては傷の補修などのサービスを受けることができます。レンタル家具店の場合は、使用後の家具のメンテナンスや維持は、お店側が全て行うので、家具の保管による劣化の心配がなくなります。
家具ショップやレンタル家具店にステージング用の家具を選んでもらえば、家具の設置までお願いすることができるので、ホームステージングの手間を省くことができる可能性があります。しかし、家具店は、あくまでも『家具』に関する専門知識しか有していないという点に注意が必要です。
家具ショップに部屋のコーディネートを実施してもらう場合、統一感のある空間を作り出すことは可能だと思います。ただ、家具ショップは、不動産の売買や賃貸に関する知識は何も持っていないため、適切なホームステージングを施すためのターゲットの絞り込みや、ターゲット層が好む部屋のコーディネートを考案することは難しいのです。そのため、パッと見では統一感のある素敵な部屋のように見えても、ホームステージングの本来の目的である「早期の成約」 に繋がるような演出にならない可能性が残ってしまうという点に注意が必要です。
家具ショップは、家具に関する疑問には答えてもらえますし、専門店であることから比較的安価に家具を購入することができるでしょう。しかし、ホームステージングや入居者募集のための知識が不足しているため、空室対策を目的としたステージング用の家具選びを相談する先としては不十分な場合があります。ターゲット層の絞り込みや部屋のコーディネートを自分で行えるという場合なら、家具の選定部分だけを依頼しても良いでしょう。
インテリアコーディネーター
インテリアコーディネーターは、その名称から分かるように、インテリアのプロフェッショナルです。部屋の雰囲気やターゲット層に合わせた家具選びが可能で、物件に最適な家具を提案してもらうことができると思います。
こう聞くと、初めてホームステージングを導入しようと思った時には、最適な相談先のように感じるかもしれません。確かに、魅力的な部屋にするための家具選びのことだけを考えると、インテリアコーディネーターは、非常に有力な選択肢になると思います。しかし実は、インテリアコーディネーターは、主に個人の好みに合わせた空間づくりを行うことが仕事となるため、不特定多数の方に好まれる部屋を作らなければならないホームステージングとは業務内容にズレがあるのです。インテリアコーディネーターとホームステージングのプロであるホームステージャー、それぞれの特徴を以下でご紹介します。
- インテリアコーディネーター
クライアントの要望や好みに沿って、家具やインテリアの配置、色の選定、照明などを総合的にコーディネートし、快適な暮らしの空間を作り出す人を指しています。基本的に、個人のライフスタイルや好みを反映した空間づくりを得意としています。 - ホームステージャー
不動産をより早く、高く売る(または貸す)ため、物件を「演出」し、購入希望者が「入居後の素敵な暮らし」をイメージできるようにする対策を検討、実施します。物件の魅力を最大限に引き出すため、モデルルームのような演出をするほか、片付け、掃除、遺品整理などの幅広い知識を学んでいます。
これからも分かるように、インテリアコーディネーターは、クライアントの要望にしたがって家具を選ぶわけです。つまり、「どのような部屋にするのか?」は依頼者側が考えなければならないので、空室対策として有効な部屋作りを一から提案してもらうことは難しいです。
ホームステージング会社
最後は、ホームステージングサービスを専門としているホームステージング会社に相談するという方法です。この場合、家具選びだけでなく、物件の魅力を最大限引き出すための家具の配置、演出や、さらには広告写真の撮影まで、トータルでサポートしてもらうことができるようになります。
ホームステージング会社は、上で紹介したホームステージャーと呼ばれる有資格者が在籍していて、単に家具を選んで配置するだけでなく、成約率の向上を目的とした具体的な提案をしてもらうことができます。また、ほとんどのホームステージング会社は、ステージングに必要な家具をレンタルしてくれるので、家具の手配も同時に完了させることができます。
ホームステージングの目的は、部屋を装飾することではなく、その先の「高値での売却」や「早期の成約」な訳ですし、効果的な対策を望む場合はホームステージング会社に相談するのが最もおすすめです。
まとめ
今回は、ホームステージングに使用する家具の調達方法や、どのような家具を選べば良いのかを相談する先について解説しました。
ホームステージングは、売買や賃貸を検討している物件の魅力を引き出し、成約率アップや空室期間の短縮など、多くのメリットをもたらす方法として注目を集めるようになっています。ただ、ホームステージングについては、部屋の中に家具やインテリアを配置するだけで、内見者の印象を良くすることができるという、少し間違った認識が広がり始めているので注意が必要です。
ホームステージングの中でも、空室ホームステージングと呼ばれる対策については、確かに空室状態の部屋に家具やインテリア、照明などを配置することで、魅力的な空間を作り出す方法となります。家具などが配置されていれば、入居後の生活動線なども具体的にイメージできるようになるため、自分に合った物件なのかが判断しやすくなるため、早期の成約が期待できるとされているのです。しかし、部屋の中に配置する家具などについては、単なる装飾として置かれているわけではないという点に注意しなければいけません。ホームステージングは、物件のターゲットとなる人をきちんと想定し、その人たちの理想の生活が実現するような家具を選んで配置しなければ、良い印象を与えることは難しいのです。
ホームステージングによって物件の魅力を最大限引き出すためには、幅広い知識が必要になります。したがって、本当に効果的な対策にするためにも、プロの力を借りて魅力的な空間づくりを進めるのがおすすめです。